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経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる|蔭山克秀|「不朽の古典」から「現代の傑作」まで

古典から現代の傑作まで、著者セレクトの50冊を取り上げそれぞれの内容を解説。名著を著した人物の人となりや、その著作が誕生した時代背景なども併せて書いてあります。

『21 世紀の資本』(2013) トマ・ピケティ 『21 世紀の資本』山形浩生 他訳(みすず書房)

これからの世界は格差が広がっていくのか? 新進気鋭の若きフランス人経済学者が分析する 「格差」と、目指すべき国際的な分配の枠組み トマ・ピケティ(1971~)フランスの経済学者。パリ経済学校教授。2013年、『 21 世紀の資本』が世界的ベストセラーになる。 貧富の格差は広がっているのか? 「終わった……」──本書を読み終え、僕は放心状態でぽそりと 呟いた。

こんな書き方をすると、「ピケティの『 21 世紀の資本』は、終末思想なのか!? そこには来るべき暗黒の未来が予言されていて、蔭山はそれに絶望したのか!?」と思われそうだがそうではない。長いのだ。若き気鋭のフランス人経済学者が書いたこの本は、600ページ以上もある。しかも読みにくい。なぜならそこには、 過去300年分にもわたる世界各国の様々な統計データがところ狭しと並べられている からなのだ。  確かに『 21 世紀の資本』は、すごい本だ。内容は斬新、切り口は鮮やか、そしてピケティは、適度に口が悪くてひねくれている。すべてが僕好みで、核心部分はメチャメチャ面白い。でもその「核心部分」にたどり着くには、その前におびただしい「統計データの沼」を越えなければならない。それがおそろしく長いのだ。

統計データが延々と続く本は、地獄だ。いかに内容が斬新でも、どうしても展開が地味になる。特に本書は500ページ付近が一番面白いのだが、その辺に差しかかった頃には、誰もが意識がもうろうとしているはずだ。

僕は沼に足を取られ、何度も意識を失った。こんなの高校の授業以来だ。あの頃僕は睡魔と戦い、男らしく手にコンパスをぶっ刺した。しかしそんな努力もむなしく、僕は手から血を流しながら寝た。残念ながら僕の男気では、睡魔には勝てなかったのだ。そこで今回は同じ轍を踏まぬよう、今度はコンパスではなく目の周りにメンソレータムを塗ってみた。しかしやはり結果は同じで、今度は目から涙を流しながら寝た。やはり僕の男気では、データの沼には勝てなかったのだ。

そんな僕を救ってくれたのは、うちの3匹の猫どもだ。デスク前で凍死寸前の僕を見つけた彼らは、「ご主人様の一大事!」とばかりに僕の膝や頭上に飛び乗り、一心不乱に僕の顔をもんだり、安定できる場所を探して丸まった。これら一連の蘇生術(?)のおかげで、目ヤニまみれの僕の骸は、何度も蘇ることができたのだ。

確かにこの本のボリューム感は半端なかった。統計データを何度も参照しながら読み進めるのはなかなかハードだ。しかし後半になるにつれその統計データを具に紐解いていった結果が実を結ぶ。経済学関連の最近の書籍では群を抜いて難解だが、読み終わった時の達成感はすごいものがある。

格差拡大の原因を表すたった1つの式

本書は「 富の分配の格差の原因と対策」について書かれた本だ。

とは言っても、スティグリッツの焼き直しではない。スティグリッツは「新自由主義的なグローバル経済のパッケージを途上国に押しつけたことが、今日の南北格差の原因だ」と怒っていたが、あれとは全然違う切り口だ。

ピケティは 格差拡大の原因を、1つの式で表している。その式がこれだ。 「r>g」

ピケティの思想は、すべてこの「r>g」に集約させることができるのだ。

rとは「資本収益率」。資本とは「富」あるいは「財産」のことで、その中心は金融資本(預金や株式、国債など)と工業資本(工場や機械など)になる。そしてそこから得られる収益(=資本所得)の率が資本収益率だから、つまり資本収益率とは「資本全体の価値に対する利潤・配当・利子・株の値上がり益・賃料などの割合」ということになる。つまり資本所得は「財産持ちの不労所得」と言い換えてもいいだろう。

これに対して gは「経済の成長率」、つまり「1国が1年間に生み出した国民所得の、前年比での増加率」だ。ちなみに国民所得は、今見た資本所得に労働所得(国民が働いて得た収入)を加えたものだ。

ということは「r>g」は、大ざっぱに説明すれば「 財産持ちの不労所得の方が、国民が働いて得た収入よりもかなり大きい」ということだ。もしこれが事実なら、 経済成長率が下がれば下がるほど、資産家と労働者の間の格差は拡大する。そして 21 世紀は、世界的に経済成長が鈍化しつつある時代だ。

ピケティはこの「r>g」を「 根本的な不等式」と呼ぶ。つまり、不労所得が賃金を大きく上回ることは大前提、変えようのない事実なのだ。

これまで、多くの経済学者は、格差を「直観的」にとらえ、その「規模・水準」だけを問題にしてきた。つまりろくに統計データも調べず、「細かいことは知らないけど、こんな大きな格差があるなんてひどいぞ!」と声高に叫ぶだけだった。

しかしピケティは、格差をデータに基づき細かく分析し、その規模よりも「構造」、つまりその格差が「何から生まれた格差なのか」を、より重視する。そこで彼が注目したのが「資本所得、あるいは相続財産からくる格差」だ。

彼の考えを理解するために、まず「資本/所得比率」という言葉を説明しよう。

資本/所得比率とは、「その国にある資本が、国民所得何年分にあたるか」を示すものだ。この率が高いほど資本が多く、資本所得(財産持ちの不労所得)も多くなる。つまり格差が拡大するわけだ。

そして資本/所得比率は、貯蓄率が高いほど、または成長率が低いほど、高くなる。これはまずい。なぜなら先ほども言ったように、経済成長は21世紀の今日、世界的に鈍化傾向にあるからだ。そしてこの成長率の鈍化傾向は止まらない。なぜなら経済成長率というのは、そもそも「低いのが基本」だからだ。

労働所得をはるかに上回る不労所得。この事実を知ればますます貯蓄から投資へシフトせねばと実感する。日本では株というとギャンブルの要素が強いものとしていまだに敬遠されがちだが、正しい知識さえあればそこまで不安がることはない。格差が拡大する世の中で必死にもがくモチベーションを加速する統計データの山頂目指して登ってみては?

経済学の名著を読む機会は学生でなくなってから遠のいていたが、久々に読んでみた『21 世紀の資本』も50冊の中に!数字は語るの真骨頂は圧巻。そのほかにも読んでおいた方が良い名著がずらり、これを機に読んでみては?

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