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多様性の科学|マシュー・サイド|画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織

グッチの成功、プラダの失敗、その要因となるのは?オックスフォードを主席で卒業した異才のジャーナリストが、あらゆる業界を横断し、多様性の必要性を解く。自分とは異なる人々と接し、馴染みのない考え方や行動に触れる価値とは?

イノベーションには2つの種類がある

さて、ここまで我々は、日常のちょっとした問題の解決から政策決定や暗号解読にいたるまで、多様性が集合知を高めるという事実を見てきた。そこで本章ではさらに一歩進んで、我々自身や社会が成長を遂げる上でもっとも大きな要因となる「イノベーション」と多様性との関係について掘り下げていきたい。特に本章の後半では、より幅広い視点でイノベーションをとらえ、「なぜ一部の組織や社会はほかに比べて革新的なのか?」「経済をさらに大きく繁栄させるには、多様性をどう活かせばいいのか?」といった疑問を解き明かしていく予定だ。しかし「森」を見る前にまずは「木」、つまり個人に焦点を当てよう。なぜ一部の人は、ほかの人が恐れる変化をすんなりと受け入れられるのだろう? なぜ現状にとどまり続ける人がいる一方で、大きな改革を成し遂げる人がいるのだろうか?

専門家によれば、イノベーションには主に2つの種類があるという。1つは、特定の方向に向かって一歩ずつ前進していくタイプのイノベーション。たとえばサイクロン式掃除機を開発したダイソンの創業者ジェームズ・ダイソンは、試作機の改良を根気強く続けた。サイクロン円筒部の直径やその他さまざまな要素を少しずつ地道に調整しながら、ゴミと排気とを効率良く分離する方法を探求した。試作するたびに知識が増え、より効率のいいサイクロン式掃除機ができ上がっていった。このようにある程度方向性が決まった中で、段階的にアイデアを深めていくタイプのイノベーションは「漸進的イノベーション」と呼ばれる。

もう1つのタイプは、本書ですでに紹介した事例に見られるもので、「融合のイノベーション」と呼ばれる。これはそれまで関連のなかった異分野のアイデアを融合する方法だ。たとえばスーツケースと車輪。電動機と製造機械。こうした2つの異なるアイデアを融合したイノベーションは劇的な変化をもたらすことが多い。互いの垣根が取り払われ、新たな可能性の扉が大きく開かれる。

この2種類のイノベーションはどちらも生物の進化の過程に似ている。漸進的イノベーションは、自然淘汰(自然選択)のようなもので、世代ごとに起こる小さな変化だ。融合のイノベーションは、いわば有性生殖だろう。2つの個体の遺伝子が1つに組み合わさって、新たな個体が生まれる。どちらのイノベーションも重要だが、科学ジャーナリストのマット・リドレーは、我々が融合のイノベーションを長い間過小評価してきたと指摘する。

コツコツ改良を加えて新たな価値を生む一般的なやり方から、アイデアを融合して新たな価値を生むイノベーションまで世の中にはこの二つの一般的な方法がある。突発的に何もないところからアイデアが降ってくる神がかり的なこともあるにはあるが数字で言ったら少ない事例だろう。ダイソンの掃除機やスマホなどがこの二つに該当する。

平均値の落とし穴

ダイエットや食事療法に関わる問題については、誰が混乱しても不思議ではありません。たとえば2012年には、米国心臓協会と米国糖尿病学会が、減量や健康のためにダイエット炭酸飲料を勧めました。するとダイエット炭酸飲料の消費量が劇的に増えました。しかしその後の調査では、学会の発表とは真逆のデータが出ています。また1977年には、アメリカ政府が「脂肪は体に悪くて、食物繊維は体にいい」と発表しました。すると国民は脂肪の摂取を減らし、食物繊維を多くとるようになりました。しかしそれとほぼ同時に肥満が、男性ではそれまでの3倍、女性では2倍に増えたのです。

これを聞くと、エランがたんにダイエット理論の根拠だけに注目していたのではないことがわかる。ダイエットは今や公衆衛生に関わる大きな問題だ。たとえばもしあなたがアメリカに住んでいたら、やや肥満である可能性はほぼ 70%、肥満である確率は約 40%に達するという。イギリスでも同様の統計が出ている。世界全体の肥満率は1980年と比較して2倍以上に高まり、2014年には、成人で 19 億人(世界人口の 39%)を超える人々がやや肥満、6億人が肥満となっている。エランは言う。「さまざまな情報が錯綜している状態で、こうした肥満傾向を食い止めることはできません。ダイエットをする人の多くはリバウンドを繰り返しています。実際ダイエットの影響については、体重の減少より増加との関連を示すデータが数々出ています」

アメリカで大人気の減量リアリティ番組『 The Biggest Loser(ザ・ビゲスト・ルーザー)』では、参加者がエクササイズやカロリー制限で劇的な減量に成功する。しかしこの参加者を対象にしたある調査では、次のような事実が判明した。大幅な減量によって、参加者の基礎代謝が急激に低下した結果、6年後には、ダイエットを経験していない同体重の人が通常摂取する量(カロリー)を食べることができなくなっていた。この現象は「代謝適応」(カロリー不足の状態が続いた体に適応して基礎代謝が落ちる現象)という。そしてこうしたダイエットの影響についても、見解が分かれている。「もちろん、一致している見解もあります。たとえば食事には脂肪、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルのバランスが大切といったことは事実とされています。しかしそのほかのことは、ほぼ言ったもの勝ちの状態です」

エランは30代に入ってマラソンを始めた。しかし少しでもタイムを縮めるために食事の見直しをしようとして、また困惑する。マラソン走者への食事のアドバイスも矛盾だらけだったのだ。彼はこう振り返る。

私がマラソンを始めた頃に流行っていたのは、レース前日の「カーボ・ローディング」〔高糖質(高炭水化物)食で体内にエネルギーを蓄える手法〕で、当時はそうするのが当たり前でした。前の晩にパスタを3皿食べて、レースが始まる30分前になるとデーツ〔ナツメヤシの果実〕かエナジーバー〔栄養補助食品〕を数個食べていました。最初は疑いもせずやっていましたが、そのうち詳しく調べてみようという気になったんです。

ダイエットに関してはどこに根拠があるのか謎なダイエット方法が世に出回っていていつもその偏ったダイエット法で一瞬痩せてはリバウンドするというのを繰り返す人も。結局、適度な運動と食事制限に立ち戻るのが最良だったりする。

多様性を考え、受け入れる下地を作るため複数の視点で問題を見ていく方法を例を辿って考察。

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