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ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?|高橋 祥子|進歩するテクノロジーの理解を深める

ゲノム編集によって病気を治す技術が注目されるが、それは倫理観を持って研究しなければならない分野。受精卵のゲノム編集すれば思い通りの人間を作り出すことだって理論上可能となってしまうためだ。進歩するテクノロジーの理解を深める書籍。

大学を飛び出して民間に行ったからこそできる新しいゲノム解析

今までのゲノム研究は、病気の原因に注目したものがほとんどでした。もちろん、病気の原因を解明し、治療に役立てることが重要であるのは間違いありません。社会的インパクトが大きく、公共の利益のみならず、事業として直接の利益につながる可能性は高いです。 でも私は、病気とは直接関係なくても、ゲノムのどこが何に関係しているのか、それを明らかにすることに興味をもっています。 例えば、ゲノム解析サービスの先駆けともいえるアメリカの23andMeという会社は、朝型か夜型かに影響するゲノムの箇所を見つけたと、『ネイチャー・コミュニケーションズ』誌(2016年2月2日付)で発表しました。これは、約9万人のユーザーによる朝型か夜型かの自己申告と、ゲノムの個人差を比較して明らかにしたものです。

今までなら、「朝型か夜型か、それと関係する遺伝子を調べたい」と言っても、それだけのためにアンケートへの回答をお願いし、どの遺伝子を候補に挙げるかを考えるというのは困難でした。研究にかかる労力や費用に比べて、研究成果から得られる社会的インパクトが小さい、いわばコストパフォーマンスが低いとして研究対象となっていなかったのです。 ところが、ゲノム解析サービスでは、大勢のユーザーが「サービスを利用する」という名目で研究に参加してくれます。もちろん、ゲノム全体を解析する費用が劇的に下がっているという技術的な進歩もあります。 膨大なデータが集まることで、今まで知りようがなかった関係を探ることができるようになったのです。

皆さんの中には「朝型か夜型かどうかなんて自分が一番よく知っている。そんなことを知ってどうするんだ」と思う方がいるかもしれません。 でも、このような発見は、何か他の研究に役立つかもしれないのです。 この報告によると、朝型に影響するゲノム上の個人差の箇所を15箇所発見し、そのうち7箇所は体内時計に関係する遺伝子の近くにあったといいます。これらは、体内時計に何らかの影響を与えているだろうと簡単に予想できます。 ところが、残り8箇所については、なぜ朝型に関係するのか、これまでの体内時計や睡眠の研究と照らし合わせても、説明できるものではありませんでした。 体内時計や睡眠の機能のうち、まだ知られていない秘密がここに隠されているのかもしれないのです。そうと考えると、私はわくわくします。

こうやって一つひとつの遺伝子的な特徴が解析されていけば遺伝による病気の発症を抑えることが可能だ。ゲノム編集の是非は意見が分かれるだろうが、こうした医療の観点から必要な分野にのみ限って言えば画期的で有効な手段だと言える。デザイナーベイビーとかはその範囲から外れるものとなる。

未来に向かって

テクノロジーの発展にともなって私たちの考えも変わるのなら、その時間差を見越して議論することが、未来においてテクノロジーを活用するために必要なことです。

現在がどうかというのではなく、これからテクノロジーと一人ひとりの「私」の考えがどう変わるかという流れ、つまり「時間軸」も含めて議論することが大切です。

未来を知るためには、過去の変遷も理解しなければいけません。

現在を知るだけでは、時間軸を考慮して議論することはできません。過去から現在までにテクノロジーがどれほど発展してきて、これからどのように発展するのか。同時に、社会の考えもどのように変化してきて、今後どのように変化するのか。その中で、テクノロジーの有用性を活用するにはどうすればいいのか。こうした全体の流れをとらえたうえで、建設的な猜疑心をもって議論すべきです。

多くの人は時間軸を考慮せず、急激に発展したテクノロジーが突然現れた未来を想定して考えてしまいがちです。

例えば、人工知能によって多くの仕事が奪われるという危惧が現れてしまうのは、こうした時間軸を考慮せずに議論しているからです。

人工知能が突然登場して、一度に何十種類という仕事がなくなるかのような風潮で議論されることがよくあります。人工知能が人間の仕事をどこまで奪うのかについては議論する余地がありますが、仮に何十種類という仕事を奪うとしても、それまでにはかなりの時間がかかるはずです。それまでの間に、人々の考えは変化し、何か新しい雇用が創出されるかもしれません。それが具体的に何かまではわかりませんが、人工知能が浸透した、今とは違う社会が成立する可能性は大いにあります。

かつて、コンピュータやITが普及し始めたころ、同じように多くの仕事がなくなるのではないかと危惧されました。確かに電話交換手や、改札で切符を切る駅員など、いくつかの仕事はなくなりましたが、同時に新たな仕事が生まれました。ITを活用した、新たなエンターテインメントも誕生しました。

この章の最初に述べたように、人々はテクノロジーがあってもなくても、自分たちの幸せを考えます。同じように、どのようなテクノロジーのもとでも、人々は自分の幸せを探し、見出すものです。

しかし、幸せを見出すためには、やはりテクノロジーを有効に活用することが求められます。人工知能についても、過去の流れ、現在の状況、そして未来の予測という全体を俯瞰したうえでの議論が期待されます。

人工知能やゲノム編集など次世代の研究にはやはり人間が侵してはならない領域があるように思います。そこまでしなくても他の道で人類が幸せになる方法を模索した方がよっぽど良い。

あなたはゲノム編集で病気の原因を取り除けるようになったらいくらまでお金を払えますか?僕はそんなものにお金を払わずとも幸せな生活は可能だと思います。国民全員が生まれたときに重篤な障害の遺伝子を取り除く権利みたいなのがあって国家レベルで導入するのなら賛成ですが。

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