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「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち」音楽業界回顧録!

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mp3を開発したオタク技術者、田舎のCD工場で働き、発売前のCDをリークさせた労働者、音楽業界を牛耳る大手レコード会社のCEO。CD全盛の時代からCDが売れない時代を作った張本人たちの強欲と悪知恵、才能と友情の物語がいま明らかになる。ネットのmp3海賊版コミュニティーの拡大期に無料を欲しがる大衆とともにビジネスの衰退を招いた真犯人は誰なのかに迫る傑作。

デジタルダウンロードというトレンドの最先端で

僕はデジタルダウンロードというトレンドの最先端にいたことになる。もし何歳か年上だったら、そこまで入り込んだかどうかわからない。年上の友達は違法コピーをいかがわしく思っていたし、敵意をむき出しにすることもあった。音楽好きの人でさえそうだった。というか、音楽好きの人は特にそうだった。レコードの収集もサブカルチャーだったけど、そんな絶滅危惧種の人たちにとって、アルバム探しはウキウキするような挑戦だった。ガレージセールを回ったり、安売りコーナーを漁ってみたり、バンドのメーリングリストに入ったり、毎週レコード屋巡りをしたり。でも、僕やもっと若い人たちにとって、曲集めに努力はいらなかった。音楽がそこにあったからからだ。困ったことといえば、どれを聞いたらいいか決められないことくらいだった。

僕はカセットテープからCDへ、そしてデジタルダウンロードから、サブスクリプションサービスへという音楽業界の変遷を見ながら生きてきた。高校時代は学校帰りにレンタルショップでCDを借りカセットテープにダビング。より高音質で録音可能なカセットテープを買うことがちょっとしたステータスだった。大学に入るとビジュアル系バンドが全盛の中、そういった音楽は友人から借り自分ではtechnoやhouseを聞きまくった。アナログレコードがサブカルチャー的に人気を博した時もそれに飛び乗りレコードを漁ったものだ。現在はそういったものにお金をかけ続ける情熱も薄れ、AppleMusic(サブスクリプションサービス)一択で節約している。

mp3の開発時点からストリーミングが計画されていたことを知り驚愕

1987年から、彼らはブランデンブルクの特許をもとにした、商業製品の開発にすべての時間をつぎ込んだ。開発の方向性は2通りあった。ひとつはブランデンブルクの圧縮アルゴリズムを使って音楽を「ストリーミング」すること。つまり、ザイツァーが夢見たように、中央サーバーから直接ユーザーに音楽を送ることだ。もうひとつは、この圧縮アルゴリズムを使って音楽を「保存」すること。つまりユーザーがパソコンにファイルを保存して、再生できるようにすることだ。

当時の圧縮技術はまだ未熟で、12分の1に圧縮することが鍵だった。ストリーミングについてはまだ光回線のような速い回線はなく、モデム付きのPCで掲示板などを利用する程度のネット環境。それが12年後デジタル電話線を通した音楽ストリーミンングは、ほぼ可能になっていた。しかも、個人のPC市場も拡大していて、ローカルに保存されたmp3メディアのアプリケーションにも将来性が見えてきた。それに輪をかけるかのようにiPodやその他のmp3プレイヤーの普及とが重なり爆発的に音楽市場の海賊達が勢力を増していった。mp3の普及とともに海賊行為は加速度的に大衆化し、ちょっとした知識があれば誰でも音楽を無尽蔵にダウンロードできた。音楽の海賊行為が90年代版の違法ドラックのようなものだとすれば、アップルの発明はマリファナパイプのようなものだった。iPodにあれだけお金を払うのに音楽業界には一銭も落とさない。ほとんどの人は、ファイルシェアを違法とは認識しておらずCDの売れない厳しい時代へと突入する。それが今ではコンピューターの処理速度のアップと回線の光化などにより、Spotify(スポティファイ)などのストリーミングサービスが台頭し海賊行為は減ってきているという。

音楽業界もラップトップ一台に集約

ProToolsがあればスタジオはいらないし、mp3エンコーダーがあればCD工場入らず、トレントトラッカーがあれば流通網いらない。業界全体がラップトップ1台に収まったのだ。

音楽を聴くスタイルが変化したのと同時に、音楽業界も変革を求められた。DJはUSBメモリーひとつでプレイし大量のレコードの呪縛から解き放たれ、音楽制作の方法もラップトップ1台のみというアーティストが増え大量生産大量消費の時代へ。MVをYouTubeにアップしタダで提供し、ライブやフェスへの出演、関連グッズの販売などの物販で儲けるビジネススタイルに変わってきていて、モノ(CDなど大量のコレクション)から体験(ライブなど)へと移行してきている。

アーティストの発掘の際も初めに大きな契約金を支払う代わりに低いロイヤリティーだった時代から、前払いの契約金を支払わず、リスクを取らず高いロイヤリティーを支払う方式へと変遷していった。アラフォーの音楽好きには懐かしくもあり、若い人にとってはそんな時代があったのかと時代を感じることができる傑作だと思います。

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