脳に対する最新の研究結果等がたっぷり解説された書籍。普段、生活する上であまり必要のないこういった研究の解説だが、興味のあるところだけ拾い読み。
長時間の読書がキツイのは脳の衰えではない
「歳をとって集中力が散漫になるのは、体力衰弱のせいである」と考えています。たとえば、歳をとると長時間の読書ができなくなる人がいます。多くの方はこれを「脳の老化」と考えているようです。脳が疲れやすくなるから、集中力が持続しないのだと。
しかし、日頃から脳機能を専門に観察している私には、脳自体それほど老化しないように見えます。先に衰えるのは、むしろ「体」ではないでしょうか。
僕は、若い頃は本なんて読まずに遊びまわっていたので、読書習慣がついたのは最近になってからだ。だから、若い頃と比べることはできないが、長時間の読書が脳より「体」つまり体力を使うものだというのは頷ける。家にいるときは好きな姿勢(正座やあぐら、椅子に座ったり、寝そべったり)で読めるのでいいが、外だとそうもいかないので、なるべくくつろげるソファー席などに座るようにしている。
「ざまを見ろ」に至るプロセス
信頼を裏切った相手に脳はどう反応するか。人が罰せられるのを見るときの脳の活動はこうだ。公正な人が冤罪によって罰せられる場合は「感情回路」と呼ばれる脳の部位が強く反応し「気の毒に」という感情移入の度合と一致。逆に、フェアでない行動をとった悪人が罰せられる場合、同情反応は弱くなる。そして、驚くのは男女で反応が違うこと。男性の脳では悪人の行った不正に対して強い制裁の気持ち「ざまを見ろ」が現れるのに対し、女性の脳では、相手の善悪にかかわらず、罰を受けてつらい思いをしている人に感情移入傾向が強いのだ。
動揺するとどうなるか
自己制御が困難になると、ヒトは意味や因果関係を倒錯的に知覚してしまいます。友人の背信、恋人の浮気、取引先の陰謀。そんなものを感じるときは、もしかしたら、それは自分自身が精神的に追い詰められている証拠かもしれません。
動揺すると、何も描かれていないイラストなのに様々なものを見出してしまったり、自制心を失った状況で株価変動のグラフを見せるとありもしない経済動向を見出してしまう傾向がある。ランダムに描かれた模様が生き物にみえたりするのは僕も病気の症状が悪かったとき(入院中)壁の木目が鬼にみえたりトイレの汚れが字に見えたりした経験がある。因果関係は分からないが統合失調症の症状で常に動揺している状態だったのかもしれない。
ブランドにこだわってしまう脳
有機栽培、オーガニック食品ついこういったブランド的なものには目がいってしまうが、農薬を使わない自然は野菜が優れていると感じるのは妄想にすぎない。実際には使用するべきところで、しかるべき農薬を使わないと病んだ農作物ができてしまいかえって健康に悪い食品になることもあるという農学部の先生もいる。
リパッティという音楽家の演奏録音とされて音楽評論家たちもこぞって「最高のショパン演奏」と絶賛し、LPはクラシック音楽のロングセラーとなった。しかし、その後、その録音はチェルニー=ステファンスカという女流ピアニストの演奏だとわかる。最も困惑したのは偽りの録音を絶賛したプロの音楽評論家たちだ。のちに本物のリパッティの録音が発見されたが、女流ピアニストを推しつづけるプライドと、やはりリパッティの方が良いとするブランドとの見えざる圧力に対処する人の微妙な心理が浮き彫りとなった事件があった。お粗末なもんである。
コーヒー豆の香りを嗅ぐと、どうなるか
コーヒー豆の香りを嗅ぐと、なんと、他人に優しくなるのです。コーヒー豆のような心地よい香りを嗅ぐと、相手に対して良い印象を抱くようになるという実験結果がある。コーヒーといえば、そこに含まれるカフェインの作用に注目が集まるが、飲まなくても、その芳香にも作用がある。コーヒーは人類との付き合い一千年以上。昔から人々は経験則的にコーヒーの芳香の秘密を知っていたのかもしれません。
この他にも、年齢とともにネガティブバイアスが減っていき感情的に健全になるとか、睡眠時間が短いことは何の自慢にもならないし、ましてや免罪符にもならないなど興味深いトピックが満載。暇つぶしには丁度いい書籍です。
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