正社員の「レアもの化」は、正社員の次なる変質を招き寄せつつある。「とにかく正社員」との思いに付け込むように、非正規社員並みの低賃金労働にもかかわらず無期雇用というだけで「正社員」を標榜する会社が出現するようになった。こうした世の中の変化に「NO!」と言うため様々な事例を交え正社員を取り巻く環境について見ていこう。
非正規社員が9割を超す会社も
身近なサービス産業に非正規が多いのは、当たり前と思う人もいるだろう。一九九〇年代後半以来、日本の勤労者の賃金は低下傾向をたどってきた。当然、可処分所得も減る彼らに低価格なサービスを提供するため、人力で成り立っているこれらのサービス産業は、人件費をぎりぎりまで下げるビジネスモデルを取ることになった。その結果、働く人たとの賃金はさらに低下し、それを受けてさらに商品価格を下げーーといった「底辺への競争」「下方へのスパイラル」が続いてきた。だが非正規率が高いのはサービス業ばかりではないことも見えてくる。精密機器のタムロン(五九・七%)、卸売業の神戸物産(六三・三%)、食品製造のプリマハム(七六・一%)水産業の日本水産(五六・〇%)などは製造業だが非正規が過半数を占めている。
ちなみに「週刊東洋経済」(2015年10月17日号)が掲載した「上場企業 非正規の増加・減少ランキング」によると非正規の割合が多い会社ベスト3は、①サンマルクホールディングス(喫茶店チェーン)91.1%、②ゼンショーホールディングス(牛丼チェーン)87.4%、③わらべや日洋(弁当、惣菜、サンドイッチなどの食品製造販売会社)85.2%となっている。小型の店舗食品や飲料を販売するサービス業では非正規率がい事がわかる。僕の勤めていたゲームセンターも小型の店舗は店長も非正規社員でそれを何店舗かまとめて面倒を見るマネージャーになってやっと正社員が登場する。コンビニ業界では店長のみ正社員でアルバイトがシフトに穴を開けるとすべて店長がカバーしなければならないところが多くブラック化するオーナー店舗も多いと聞く。これは僕の勤めていたところと同じ、僕は契約社員だったが大手だったので1日通し(営業時間10:00〜24:00)で働いても残業手当がしっかり出たので喜んで働いていたが、正社員だとそうもいかない。
メンバーシップ型契約とは?
日本型雇用契約の特徴は、①職務の定めのない雇用契約、②新卒一括採用という入口と定年退職という出口の間、仕事の有無にかかわらず解雇せずに温存するという雇用管理、③職務に関係なく賃金が上昇するメンバーシップに基づく報酬管理、とされている。「正社員」の待遇は、このような「メンバー」としての資格を認められたことに対して与えられるという見方だ。ここでは、会社に入れるか入れないかが問われ、入ってからの職務については契約もなく、働き方も会社への白紙委任という形になる。その結果、長時間労働や頻繁な転勤など、会社の指示を受け入れる事がメンバーとしての正社員の責務となる。一方、メンバーシップを持たない非正規社員は、必要な時だけ職務に基づいて契約し、メンバーに保障されるボーナス支給や、企業別労組への加入はできない、という説明だ。
「正社員」というのが、高拘束を受ける社員とも取れる内容だ。それによって得られるのが定年までの雇用だが、企業は、様々な手を使ってリストラを推進してくるので油断ならない。求人を見ていても40歳以上はいらないのが見て取れる。これは現役の正社員においても同じだ。一部の優秀な人材や世渡りの上手い人間が残りそれにより社内風土が形成される。既得権益化していた正社員もうかうかしていられない世の中になりつつある。企業の利益を考えると、そのうち終身雇用制は崩壊し、業務ごとに必要な人材を確保しプロジェクトが終わったら解散というのを繰り返すスタイルに変わっていくかもしれない。
雇用維持より雇用流動化を後押しする政府
田村憲久・厚労相(当時)は「産業構造の変化に対して、成熟産業から人材を必要とする成長産業へ、労働者のスキルアップやスキルチェンジにより、失業を経ない円滑な労働移動により対応できる労働市場を目指す。このため、これまでの雇用維持型の政策から、労働移動支援型の政策にシフトする」と述べた。雇用の柔軟化によって労働者が食べていける仕組みを目指す交際的な労働移動政策を踏襲しているようにも見える。「失業なき労働移動」の提唱である。
従来の成熟産業から新たな成長産業への労働移動、僕のように歳をとってくると非常に難しいと実感している。ハローワークに行けば仕事は紹介してくれるが、それがどれも的外れ、当然面接に行っても仕事とのマッチングがうまくいかず、結局自分で探すことに。最終的にはサービス業ぐらいしかなくて、それすらダメで敗走してきた人間にとってはもはや良い条件で働く場所などない。
同一労働同一賃金の推進が叫ばれる中、非正規の待遇改善が進みつつあるのかなぁと感じるが、多様性についてはまだまだ日本は遅れているようにも思える。今いる職場が理不尽だと感じたら後半部分を読んで見てほしい辞める辞めないにかかわらず有用な情報が載っています。
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