主人公の星野(36歳)は住宅メーカー営業部の万年係長。人柄もよくそれなりに人望もあるのだが、肝心の販売成績がなかなかふるわない。ある日、期待を寄せていたお客に逃げられた星野は、むしゃくしゃした気持ちを静めるために、いつもの公園に出かけた。そこに偶然現れたのは、どこか見覚えのある一人の老紳士だった……。夢は持っているだけでは、いつまでも夢のまま。夢を夢で追わさせないためには、夢に向かって一歩踏み出し、歩き続けること。そのために必要な人生の技が、「目標の達人」になること。老紳士とのやり取りの中で成長していく主人公に自分を重ねてみよう。
目標の達人への道
「私が、まずお伝えしたいのは、目標について本当の知識と活用法についてです。次に、実際に成功するために、行動を継続して行く習慣です。それらを身につけて初めて、目標を活用する達人になることができるのです。どうですか、興味ありますか?」「はい。確かに、目標について、自分はあまりにあやふやなことしか知らないと思いました。僕は、目標の達人になりたいです。ぜひ、教えてください」僕は覚悟を決めた。実践してきた人の言葉を信じることにした。大蔵さんは、そんな僕の決意を感じ取ったのか、大きくうなずくと、持っていたスケッチブックを一枚めくった。そして、その真っ白な紙に、大きな輪を三つ重なるように描き、それぞれの中に【知識】【道具】【能力】と書き込んだ。
世の中で何らかの達人になるには日々知識を増やし、道具を整え、能力を強化するこどが大事。目標についても同じで、達人になるためには目標についての知識を増やして行くこと。
大蔵さんは嬉しそうに笑うと、三つの輪が描かれたスケッチブックをまた一枚めくり、今度は、【目標】【目的】【夢】【ゴール】【ビジョン】と書いた。「では、星野さん。宿題です。次の火曜日までに、この五つの言葉について周りの人たちに、どんな意味か、どのようにこの言葉をとらえているかを訊いてきてください。五人以上の人に訊いたら、最後は辞書で調べてみてください。きっと何かがわかると思いますよ」
【目標】【目的】【夢】【ゴール】【ビジョン】混同しがちな五つの言葉。【目標】とは目的を達成するために設けた目当て【目的】とは成し遂げようと目指す事柄。【目的】のための最終的な目印が【ゴール】で、そのゴールまでの途中の目安や、通過点として置くのが【目標】。現実とかけ離れた考え、実現の可能性がない空想が、【夢】。将来あるべき姿を描いたもの、将来の構想、未来像、その光景が【ビジョン】となる。ここでちょっとブレイクタイム。クイズに挑戦してみよう。
A〜Gを【目標】【目的】【ゴール】の三つに振り分けよ
- A 次のオリンピックで金メダルを取る
- B 10キロのタイムを三ヶ月であと三分短縮する
- C 自分が可能性に挑戦することで、子どもたちに夢を持つことの素晴らしさを伝えたい
- D 今月、合計五百キロ走り込む
- E 今年の選考レースで優勝する
- F 脚力を10パーセント強化する
- G 誰よりも早く走って〝風〟になる
CとGは【目的】。AとEが【ゴール】。BとD、Fが【目標】となる。そして【目標】【目的】【夢】【ゴール】【ビジョン】を明確に設定して行動することで、自分が得られる【ベネフィット(恩恵)】にはどんなものがあるか考えてみる。共感者や協力者が現れたり、同じ価値観を持った仲間が増えたりするのもベネフィット。目標に向かって努力することで成長したり精神的に強くなったり達成感を得られるのもそれに当たる。目標の達人になるには、ゴールや目標と自分のモチベーションの源になる感情を、セットにするのもポインドだ。
夢やゴール、目標を描くときの障壁となるものとは何か?
- 他者との比較による批判や、避難から受ける負の感情
- 結果だけで自分の価値を決められる評価
- 夢やゴールそのものに対して、他者の価値観によって向けられる批判
- 結果による人格否定
- 弱みを克服することばかり強いられる経験
- 学習性無力感
- 夢やゴールや目標に対する無知
- 変化に対する恐れ
- 選択と決断に対する恐れ
このようなブレーキをやわらげるにはどういった方法があるのか。例えば「目標は、あくまで目的のための通過点なので、いつでも再設定して良い」「目的には最後までこだわる方がいいが、目標はいくつもの選択肢がある」「目標は最後までやり遂げるに越したことはない」「結果はコントロールできないが、プロセスはコントロールできるので、それに全力を尽くし、結果は神に委ねる」といった考え方をするようにすると良いだろう。目標に向けて行動を継続するコツは、行動計画に定点観測も盛り込むこと。どれくらいの頻度で現在地を知ればいいかは人それぞれだが、スタート直後はなるべく短いスパンで見た方が良い(例えば一週間ぐらい)。これは計画と現実のギャップを早めに修正できるからです。行動しながら行動計画をブラッシュアップしていき、ペースが安定してきたら、一ヶ月ごとにするのも良いでしょう。
コーチと生徒というわかりやすい設定で目標の達人となるべく知識を蓄積して行く。自己啓発書なのですが小難しいことはなく、小説仕立てになったいて読みやすいと思います。続編も出ているようなので興味のある方はそちらもどうぞ。
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