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さよならの力、別離を経験した人にしか見えないものが見えて来る

二十歳代と三十歳代に別離を経験した著者。一人は弟で、もう一人は前妻だ。なぜ彼、彼女がこんな目にと‥‥。その動揺は、なぜ自分だけが?という感情になった。ところがそういうものと向き合っていると、やがて別離を経験した人にしか見えないものが見えて来る。それは彼等が生きていた時間へのいつくしみであり、生き抜くしかないという自分への叱咤かもしれない。去りゆくものに微笑みを。切ない思いも悲しみも、やがては消える。季節は移ろい、そして新しい人とまた出逢う。

サヨナラも力を与えてくれるものだ

サヨナラニモ、チカラガアルンダヨ。私は、これまでの短い半生の中で、多くの人と別離を経験してきた。彼等、彼女たちは、私にサヨナラとは一言も言わなかった。それでも歳月は、私に彼等、彼女たちの笑ったり、歌ったりしている眩しい姿を、ふとした時に見せてくれる。その姿を見たとき、私は思う。〝サヨナラも力を与えてくれるものだ〟

出会いは必ず別れを伴う。生きている限り避けられない別離だが、それも時間が経てば、楽しかった日々のみ記憶に残ろうとするように感じる。不思議と別れた時の悲しみより輝いていた日々の方が思い出となりやすい。そう考えると「サヨナラ」も悪くないのではないかと思う。

あの時、あなたは

「わしは春になったら大阪へ行く。そこで働いとるから大阪に来て何かあったら会いに来いよ」その言葉にトミちゃんは中学を出たら働きに行くのがわかった。その頃、クラスの中の数人(一割近く)が高校へ行かず社会に出ていた。「うん、逢いに行くよ、トミちゃん」「ああ待っとるよ。お前は上の学校へ上がるのか?」「いや、僕も働きに出ると思う」とっさに私は嘘をついた。「そうか、ならおまえも頑張れよ」それがトミちゃんと交わした最後の言葉だった。

僕にも中学を卒業してすぐに働きに出た友人がいた。今はもう付き合いもなくなっているが、小学6年生で転校して来た僕と同じ転校生組ということで仲良くなった友達だ。僕は高校に進学し、二浪して大学行きその過程でだんだんと疎遠になり今に至る。彼が職場で地位を築いて行く中、大学で遊んでばかりいたのだから疎遠になるのも当然だ。彼の放った言葉が今でも記憶に残っている「珍しいやつから電話がかかって来た」

親の教育、躾

親は、その生涯で、子供にさまざまなものを与える。それを親の教育、躾と呼ぶ人もいる。そうだとしたら、親が子供に、最後に教えるものがあるとしたら、それは彼、彼女が死を以って子供に与えるものではないだろうか。死によって何を教えられたかは、残された子供(もう大人であっても)はすぐに、その教えの本質には気付かない。私もそうだった。

母がたの祖母が亡くなった。子供はうちの母を含め四人。父がたの祖父母と母がたの祖父はすでに亡くなっていたので、最後の祖父母である。祖母の死が母に与えた影響は大きく、昔話がとめどなく溢れる。親の死というものはそれだけ大きなものなのだろう。残された猫2匹の世話を兼ねて定期的に誰もいなくなった空き家に帰る母たち。親への依存度が高い僕に自分の番が来たらそれに耐えられるだろうか?不安になることもある。

近しい人がなくなって一年が経つと、大半の人は、もう一年が経ったの、早いわね、と口にするのに対し。親、子供、兄弟だったりするとまだ一年しか経っていないと当事者は思う。三回忌が丸二年。七回忌が六年。この歳月はまことによく設定されている。三回忌ぐらいだと「もう三回忌が来たの?」と思うが、七回忌だとその〝もう〟が取れたりする。

伊集院静というペンネーム

占いの女性が、この名前を見て「すぐやめなさい。この名前、残りの人生が悲惨なことになります」と言った。ーー悲惨な人生?‥‥面白いじゃないか。どれだけ悲惨か見てやろうじゃないか。その頃、私はもうヤケクソだった。親には悪かったが、来るなら来てみろ、やれるもんならやってみろ、こっちが終わるなら、そっちもかたちがなくなるまで刻んでやる、となんとも困った若者だった。この名前で文章の仕事をはじめ、文学賞などを頂くようになり、同じ占いの女性に見せると「これはもう前途洋々素晴らしい未来が待ってます」世の中そんなものなのだろう。

僕は基本占いは信じないが、朝の占いコーナーなどで順位が低いとテンションが下がる(←これは信じているからなのでは?)。世の中に獅子座の人間は数知れずいるのにそのすべての人々に当てはまる運勢なんてありえない。なんとなくあたりそうな最大公約数的な未来を提示してお金を取るなんて職業が成り立つのは、人々がこの先どうなるのかという関心が強いせいだろう。

アメリカ大統領

トランプという男がアメリカ大統領に選ばれた。あれほど批判していた日本のマスコミが彼には良いところがあると言い出した。誰が考えても、あれがまともなわけはない。私は、今日、大統領選のテレビコマーシャルで、俳優のロバート・デニーロが民主党の応援メッセージに出演しているのを見た。「あいつは何を言っているのか、まるっきりわからないし、逢ったら、あいつの顔をブン殴ってやりたい」と語っていた。

トランプ米大統領の経済政策への期待を背景にした株価上昇や円安による外貨建て資産の価格上昇などが影響で、公的年金の運用収益額が2016年10~12月期に10兆4973億円になった。などメリットを語るマスコミ。手のひら返しとはこのことか。

別離とは忘れられるものではないけれど、残されたものたちがいつまでもその死を受け入れないと、不幸だ。故人を忘れるのではなく楽しかった思い出を美しいまま記憶にとどめるのが供養になるのではないかと思う書籍でした。

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