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ポスト抗生物質時代の逆説。腸内細菌が危ない!

      2017/11/15

一九三一(昭和六)年から五年間の間に東京府立清瀬病院(定員二〇〇名)に入院した全結核患者は七三九名であった。そのうち、最終的に死亡したものの数は、五二九名。死亡率は、七一パーセントに上った。なかでも一年以内の死亡は四二〇名と多く、当時の結核は、発症すれば三分の二以上が死亡し、死亡のうちの大半が発症からほぼ一年以内に起こっていたことがわかる。群馬県の統計に東京府立の病院のデータが用いられた経緯は不明だが、結核が「国民病」として恐れられた理由である。そんな状況を劇的に変えたのが、抗生物質の発見と治療への応用だった。

肥満と過剰体重

世界全体で言えば、現在、約一五億人が過剰体重であり、二億人の男性と三億人の女性が肥満と推定されている。が、一九七〇年以前に、肥満した人はほとんど見られなかった。それが一九八〇年には、肥満に過剰体重者を加えた人数は約八億人となり、現在では二〇億人を超える。過去四〇年にわたって、毎日、八万人を上回るスピードで肥満は増えた。その増加は、一九八二年に世界で初めて後天性免疫不全症候群と名付けられ、以降、累計で約六〇〇〇万人が感染したエイズ流行の勢いさえ大きく上回る。

こうした肥満の拡大のスピードは、肥満が遺伝的変異によって起きたということだろうか?それとも単にカロリーの過剰摂取だろうか?ここ数十年の間に起きた何らかの変化が世界的な体重増加として表出したと考えるのが妥当だろう。僕も体重増加に悩まされる一人である。基本運動はしない、甘いものはやめられないこれでは、あっという間にベルトの穴が少ない方へとシフトしていき、履けていたジーンズも太ももやウエストがパンパンに。あわや80kgというところでこれはやばいと思い、ダイエットに目覚め『糖質制限』『高温反復入浴法』『軽い運動』などを取り入れて55kgまで落とすことに成功。しかし、痩せたことをいいことに、運動をやめて2年徐々に体重が増加し、気がついたら8kgリバウンド!また運動を再開したところです。

微生物の惑星

四〇億年前、その地球に原始生命が誕生した。原始生命は低分子有機物が重合しただけのものだった。続いて、原始生命から真正細菌と古細菌が誕生する。三八億年ほど前のことである。そして一〇億年ほど前に初めて地球に多細胞生物が誕生する、というのが多くの研究者の共通認識である。そうでないという研究者もいる。彼らによれば、最初の生命は宇宙からやってきたという。パンスペルミア仮説と呼ばれる。いずれが正しいか、厳密な意味では証明されていない。しかし、その後の生命進化や協調と競争の過程を辿れば、おそらくは原始生命は地球で誕生したというのが正しい。

現在の状況から見ると、私たちの周囲にある生物のうち微生物でないのは、逆に、大型の多細胞生物だけだ。大型の多細胞生物は動物界や植物界そしてストラメノパイル(鞭毛に中空の小毛を有する真核細胞の一群)にしか見つかっていない。微生物の世界の扉を開けたのは350年前のレーウェンフック。350年たってやっと私たちの生活は微生物とともにあることを認識し始めたのである。微生物は私たちとともに暮らし、死んだものをミネラルやガスに変化させるという重要な役割を果たしている。微生物なしではたちまち世界は死んだ有機物でいっぱいになり私たちは生きていけなくなるだろう。

ポスト抗生物質時代の疫病をとりまく謎

「現代の疫病」とも呼ばれるヒトの肥満、アレルギー、糖尿病が今日、凄まじい勢いで増加していることも先述した。こうしたことはなぜ起こるのだろうか。こうしたことの間には、何か共通する生物学的事象が横たわっているのだろうか。鍵は「炎症」という言葉かもしれない。感染症は炎症を引き起こす。以前と比較して、感染症が減少した現代に、なぜ、炎症性疾患や自己免疫疾患、アレルギー性疾患が増加してきたのか。炎症性疾患の中には肥満も含まれる。肥満の本態は、脂肪組織が引き起こす慢性の炎症である。そのため正常な代謝が阻害される。炎症は脂肪細胞の新生を妨げ、既存の脂肪細胞への過剰な脂肪の蓄積をもたらす。その結果、脂肪組織が果たすべき機能が不全に陥るのである。それが様々な合併症を引き起こす。

肥満は遺伝的変化とは関係ない。なぜなら遺伝形質の拡散はそれが淘汰にとって有利に働く時のみに起こるというのが、ダーウィンの自然選択説であるからだ。肥満や糖尿病、アレルギーの発症が、生存にとって有利に働くという証拠がどこにもないからだ。それなら何が原因か?研究者の多くは、ヒト常在細菌、中でも腸内細菌の撹乱が原因かもしれないと考え始めている。腸内細菌の撹乱は、抗生物質の過剰使用、高糖分、高脂質の食事が原因で引き起こされる。抗生物質の使用は、感染症の抑制を目的とするのと同時に、私たちの体にある共生細菌までも排除してしまう。常在細菌の撹乱は、免疫機能の異常な高ぶりをもたらす可能性も。

抗生物質が体内の生態系を破壊すること、腸内細菌の伝達を妨げてしまう帝王切開による出産などについて書かれた書籍。抗生物質の過剰使用は、耐性菌を生み出すだけでなく使用者を他の感染症や免疫性疾患に罹患させやすくなるといった弊害を訴える内容でした。

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