４０代からのライフシフト実践ハンドブック―８０歳まで現役時代の人生戦略｜徳岡晃一郎

４０代からのライフシフト　実践ハンドブック―８０歳まで現役時代の人生戦略｜徳岡晃一郎

2022年4月8日

人生の後半、リタイア後を充実させるための準備を始めるには時期は早いほうがいい。最低でも50代のうちにやりたいことを見つけておきたいものです。そのための40代からの準備。もしあなたが30代なら尚更良い。老後の心配というよりも、８０歳までの長い現役人生をいろいろな経験を積んでどのように楽しく過ごすかを考えるきっかけ。

マルチステージ型人生への転換

リンダ・グラットンの『ライフ・シフト』での大きなメッセージは、人生が従来型の３ステージ型から、マルチステージ型に変わっていくということです。

３ステージとは、 20 代までの勉強のステージ、 20 ～ 60 歳までの労働のステージ、そして 60 歳以降 80 歳までの余生のステージです。人生 80 年の時代は、おおむねこのパターンで、学校で習った知識をもとに、主に一社に終身雇用され、 60 歳で定年退職し、悠々自適という理想形がありました。

しかし、人生１００年になると、最後の 20 年間は悠々自適としても、 20 代で学校を出たあと、 60 年間もあるのです。企業の寿命が 20 年前後といわれる中で、 60 年といえば３社を渡り歩くのは当たり前になるでしょう。その時にどれだけチャンスを広げられるかで、人生の豊かさも左右されてきます。

そう考えると、 60 年という時間は、ひたすら雇用を求めて緊張するのではなく、もっとゆったり構えて、仕事→学び直し（「知の再武装」と私はいっています）→仕事→世界を回る旅（見識を広める）→ＮＰＯ・ＮＧＯ（社会貢献）→資格取得→起業……などの多様なステージを設定して人生をエンジョイできるわけです。それだけの長い時間があるのです。その 60 年間をいろいろ試して、自分らしく生きていく。まさに「人生いろいろ」というのが、マルチステージ型の生き方なのです。

人生を年齢で分けると言う行為はあまり好きではないが、目安として考えられる３つのステージから現代ではマルチステージ型へ変化が求められる。学業を納め社会人となりそしてリタイアするまでに高度成長期なら3つのステージで成り立っていたが、現代は就労途中に変更（転職や再学習）を伴うことも多く選択肢は多岐にわたる。中には独立してフリーランスで働く人もいるだろう。そうした人たちにも役立つ情報が必要。

これまでの資産を棚卸しし、知を再構築する

学び直しとは、社会人になってからのきちんとした学習です。企業内研修やカルチャーセンターで学ぶのではなく、プロの力を蓄え、整理し、自分なりの知の体系化、自分自身の独自の提供価値をつくっていくための「トレーニング」です。リカレント教育、生涯学習などという言葉もありますが、「ライフシフトをするんだ」という明確な目的を持った目的志向の自己強化プログラムです。

大学院での「知の再武装」

２０１５年度、大学院の修士課程・専門職課程に入学した社会人は約１万１０００人で、 10 年前の２００５年度とほぼ変わらないという残念な結果があります。国際的な比較でも日本の社会人の進学率の低さは際立ち、 25 歳以上の大学進学率は北欧諸国で 10％近くに達する一方で、日本は１％台にとどまっているのが実態です（ＯＥＣＤ調査）。

このように日本ではまだまだ大学院やＭＢＡにはなじみがありません。しかしライフシフトの時代、自分が 80 歳まで現役で、しかもそれなりに満足のいく形で社会に自分らしい価値を提供しようと思えば、「知」のブラッシュアップや再構築は欠かせません。自分にしかできない価値を提供できなければ、対価は得られないからです。

筆者が勤務している多摩大学大学院でも、 30 ～ 50 歳代を中心とするビジネスパーソンに夜間と土日に社会人向けＭＢＡコースを提供しています。近年は、ライフシフトの認識が広まってきているようで、着実に入学者が増えており、学び直しの機運が急速に高まっていることを実感しています。

特に多摩大学大学院では、志やイノベーションなどのテーマを重視して、ビジネスの世界で現役で活躍している教授陣による実践知ベースのカリキュラム体系を組み約１００講座を用意しています。そのため、企業に勤務する中堅層が、将来の自分像（会社内での昇進ではありません）を求めて入学するケースが最も多く、次いで中小企業のオーナーが自社の持続的成長の基盤づくりのために多く勉強されています。

そういう方々は、「知の再武装」の必要性を明確に認識しています。自分が自立した時に必要になる独自の提供価値は、今の仕事からだけでは決して創ることができない、という危機感を持っているのです。「仕事だけしかしていないと仕事さえできなくなる」。そんな時代が迫ってきているのです。

学生の頃はあんなに勉強したのに社会人になってからはあまり説教的に勉強しないと言う人が大多数の中、学び直しは武器になる。時間を見つけて難関資格を取るもよし教養を深めるもよし。独学で新たな分野を切り拓くなんてのもありだ。社会人こそ勉強しなければ、あなたのスキルは直ぐに陳腐化して賃金の低い若い人に置き換えられてしまいます。

80歳まで現役でいるために必要な心構えが記された書籍。人生100年時代、できるだけ長く働きたいと思う人には必見の書。早くリタイヤして悠々自適な生活を送りたい人にもヒントになるかと思います。

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