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若い読者のための経済学史|ナイアル・キシテイニー|経済学は多様な視点から、現実を考えるヒントを与えてくれる

最新のiPhoneと時計、今買うべきものはどっち?あなたの街に今建てるべきは病院かそれとも電車の駅か?経済学は多様な視点から現実の選択をするためのヒントをくれる。古代ギリシャの哲学者からピケティなど現代の賢人まで多様な経済思想家に出会いその考え方を学ぶ。

空を舞う白鳥

経済の複雑性が可能になったのは、作物の栽培や家畜の飼育の技術が進歩し、生産者が自分の生存に必要なものより多くを生産できるようになったからである。あまったものは、王や神官の腹に収まった。食物を生産者から〈食べる人〉へとまわすには、 組織 が必要となる。こんにちでは金銭による売買が行われるが、古代社会には古い伝統があり、作物は〈 捧げもの〉として寺院に運ばれた。それが神官たちに分け与えられたのだ。食糧をいかに分配するかを管理するために、 文字 が考案された。現存する古代文明の文字の、もっとも古いもののひとつに、農民からの作物の〈奉納リスト〉がある。文字を使うようになった役人たちは、収穫高の一部(つまり「税金」)を徴収することができるようになり、それを使って農業用の水路を掘ったり、王の栄光をたたえる墓を建てたりした。

紀元前数百年頃にはメソポタミア、エジプト、インド、中国に数千年に及ぶ文明がすでに存在していたが、ギリシャにもまた新たな文明の萌芽がみられた。古代ギリシャ人は、社会で暮らす人間について、より深く考えはじめた。古代ギリシャの詩人 ヘシオドス は、経済学の〈出発点〉を次のように述べている。「神々は、人間の命の 糧 をお隠しになられた」。パンは空から降ってはこない。人間は、食べるために小麦を栽培し、刈り取り、すりつぶして粉にしてパンを焼く。生きるためには働かなければならないのだ。

すべての思想家の〈始祖〉は、古代ギリシャの哲学者 ソクラテス である。ソクラテスが著述を行わなかったため、わたしたちが知っている彼の言葉は、弟子の書物を通して伝えられたものだ。ある夜、ソクラテスは1羽の白鳥が大きく鳴きながら、羽を広げて飛んでいく夢を見たという。翌日、プラトンに会ったソクラテスは、プラトンが自分のもっともすぐれた弟子になることを〈予見〉した。夢で見た白鳥がプラトンだったのだ。プラトンは人間性を説く師となり、彼の思想はその後、何千年も、高く広く空を舞うことになった。

捧げ物、現代で言えば税金は古代からある風習。集めた金で治水や建設に充てるのも今の税金と似ている。何千年も前から続くこの風習、昔の人は理にかなったやり方で政治を進めていたということだ。

養う口が多すぎる

チャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル(A Christmas Carol)』には陰気な守銭奴、エベネーザ・スクルージが登場する。スクルージは、クリスマスの 前夜 に事務所で お金 を数えながら、〈あすは自宅で家族とともに過ごしたい〉と言った事務員への不満をつぶやいている。そこへ、ふたりの紳士がやってきてスクルージに、貧しい人たちへの肉と飲み物を買うための寄付として数ペニーを求める。スクルージはふたりをにらみつけ、シッシッと追い払い、ふたりの背中に向けてこう言い放つ。「やつらが死にたいなら、そうすればいい。 よけいな人口 が減って助かる」。

さきの章〔7章〕で、金融の天才であり、イギリスの偉大な経済学者のひとりである デヴィッド・リカード と、リカードの友人である トマス・マルサス 牧師を紹介した。マルサス(1766~1834)は、リカードほどは金儲けに 長けてはいなかったが、人々に強い関心を抱かせるような経済学の理論を思いつく才能があった。マルサスは、史上初の経済学教授であり、1805年、イギリスの有名な貿易会社である東インド会社(the East India Company)の 幹部 役員 たちを訓練する、東インド・カレッジ(the East India College)でその職に就いた。持論が世に広く知られる前に亡くなってしまう思想家もいるが、マルサスは違った。ディケンズが『クリスマス・キャロル』を執筆する少し前にマルサスは、ある経済理論で有名になったが、人々は彼のことを〈経済学のスクルージ〉すなわち真の意味でつまらないことにこだわり、けちでしみったれた理論をもたらした〈 行商人 のようなもの〉ととらえたのだ。マルサスは、増え続ける人口を不安視し、人が増えれば貧困も拡大する、と主張した。人口増加は悲惨な状況の人々を増やすだけであり、貧しい人の救済は無意味で、むしろ状況を悪くするだけだ、と。

初期の経済学者はマルサスとは異なり、人口増加の影響を悲観してはいなかった。重商主義者は人口が増えるのは良いことだと思っていた。人口が多ければ、他国に勝つチャンスが大きくなる。安い賃金で多くの労働者を働かせれば、海外に安価な製品を輸出することも可能だし、陸軍と海軍を拡大すれば、交易路を守ることもできるからだ。

貧しい人への救済は国を治める上で必要な措置。こと資本主義社会ではそれが忘れられがち。こうした人たちは制度があるのに知識がなくその救済措置を受けることすらなく苦しい生活を強いられることも。弱者に許されたさまざまな権利は行使していきましょう。

古代から現代までの経済学通史。とりわけ若い世代に読んでもらえるように編纂された書籍。

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