同じ病気に罹患してもそれぞれの心がけ次第で治る、治らないという違いは出てくるか?と聞かれればイエスと答えます。多くの患者に奇跡をもたらしてきた脳リハビリ医が語る医療の真髄と回復への近道とは?
病後の人生はリハビリで決まる
無論、どの病気でもある一線を越えたら、それぞれの専門医に任せなければなりません。
しかし、リハビリ医自身にも強みとなる専門領域があるかどうかは重要です。まったく専門がない場合には、「頼りない先生」になってしまいます。
私は脳が専門なので、脳のことはひと通り全部できますが、がんや婦人科疾患が進行しているとか、呼吸や皮膚症状が良くならないとか、骨折治療後の骨形成が不安定といった症状が現れれば、重症度により専門の先生を紹介することになるでしょう。
自分だけでは治療できないと判断したとき、専門医を紹介する先生は悪い先生ではないと私は思います。ただし、そのリハビリ医に「これは任せられる」という得意な分野が何もない場合には注意が必要です。
最近は、雑誌などで「良い病院ランキング」といったリストが掲載されていることがあります。しかし、こうしたリストは一概に当たっているとは言えません。なぜなら、病院の宣伝として1ページいくらで掲載しますという掲載募集が来たことがあるからです。
また、リストに載っている先生は人気だから「どうせ診てもらえない」と思い込んでいる患者さんもいますが、診てもらえるかどうかは、そのときの受け入れ体制次第なので、電話で問い合わせてみれば良いのです。もちろん、「いまは患者さんがたくさんいるから」と断られることもありますが、中にはすぐに応じてくれる先生もいます。
そして、一度良い先生に出会うことができれば、そこから優れた医師の連携の中に入っていけるわけです。信頼の置ける医師仲間がいる先生は、もちろん患者さんにとっても望ましい医師ということになります。
リハビリにおいて重要な専門医の存在。自分の手に負えないなと思ったら即、専門医を紹介してくれる先生の方が信用できる。丸投げだとか言わずに先生の意向に沿ってリハビリを続けるべき。信頼のおける医師仲間がいる先生がチョイスする治療方針やリハビリ過程は患者さんにとっても望ましいと言えるだろう。
リハビリで人生を取り戻した患者さんたち
私たちの医療の考え方では、「医療の質」が勝負どころになります。しかし、医療の質だけでは、もう成り立たない時代に突入しています。 医療の質がなければ病院とは言えません。そのうえで大事なのは、これまでにご説明してきたチーム医療と、もうひとつが「ホスピタリティ」です。
ホスピタリティというキーワードが加わったのは、さまざまな患者さんと出会うことによって、考え方が変わってきたためです。患者さんと家族が、医療スタッフを信頼してチーム医療に参加してもらえるようにするには、医療スタッフのホスピタリティが大事なのです。
医療スタッフは、患者さんが回復するための方法を探ろうと、ホスピタリティを持ってコミュニケーションをとっていきますので、患者さんと家族は、良くなるためには積極的に医療スタッフと会話をすることが大切です。
ある患者さんを治療するときに、私たちはその患者さんがどのくらい良くなる可能性があるか、ということを評価します。評価したうえで、その最大能力が引き出せるように治療を進めていきます。しかし、ある程度限界に達したときには、限られた力でいかに幸せに暮らしていくかという方向にシフトチェンジをしなければなりません。
患者さんの力を伸ばせるところまでは伸ばしますが、それ以上伸びないときに無理して伸ばそうとすると、患者さんの人生がリハビリ一色になり、人生そのものが不幸になってしまいます。患者さんは、自分の限られた能力を使ってどうやって社会貢献をしつつ良い人生を送っていくか、という方向に考えを変えなくてはいけません。ですから、そこには分岐点があります。
患者さんの力を維持するためには、もちろん努力も必要です。しかし、限られた能力の中でどうやって楽しく生きていくか、という方向に考え方を変えるのも大切なことなのです。
リハビリ過程において患者のやる気はかなり重要。治すことに前向きな人とそうでない人では差が生じます。その中でできることを着実にやっていく。限られた時間と能力の中でどう楽しく生きていくかを前向きに考えられる人は回復も早い。
あなたもいつリハビリが必要な大病にかかるかわかりません。もしそうなった時頼れる医者を知っているか否かでその後の人生が大きく変わります。リハビリが成功すれば日常生活を取り戻すことができるのでもしもの時に備えておくのも一つの手だ。
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