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グーグルマップの社会学~ググられる地図の正体~|松岡 慧祐|新進気鋭の社会学者による、新しい地図論!

Googleマップの登場により地図検索はとても便利になりました。以前は地図を広げて目的地を現在地を探す手間があり、その周辺の情報に目を向ける機会がありました。しかし今は見たい情報だけ地図から拾い上げる時代。それにより得たもの失ったものとは?

Googleマップ前史

地図の歴史は、絵画はおろか文字の歴史よりも古く、先史時代の無文字社会においても、人びとは身のまわりの環境を地図に描きおこしていたことが明らかになっている。しかし、地図が市場に出まわり、個人として購入することができるようになったのは、印刷技術が発達した近世以降のことである。

日本では江戸時代に「地図の多様化と量産の時代」をむかえ、そのころから世界地図や日本地図のほか、都市地図や観光地図、絵地図など多様な地図が民間レベルで出版されるようになった。しかし、明治時代以降、地図は近代的な国民国家の建設をめざす政府のもとで管理されるようになり、地図製作事業は、第二次世界大戦の終結まで陸軍の陸地測量部にほぼ独占されることになった。そのなかで、江戸時代に盛んになった民間レベルでの多様な地図出版は停滞し、その結果、国民による地図利用は国家によって統制されることになった。

とくに、戦時下の地図に対する統制は厳しいものであった。軍に関わる施設や土地を国土防衛のために消去・偽装した地形図がつくられたり、地形図が全面的に販売停止になったりしたこともあった。つまり、地図は敵国に知られてはならない国内の現況を示してしまうものでもあったため、このような統制が必要だったわけである。

他方で、日本政府は、大東亜共栄圏の構想図など日本による占領地域を示す地図を、戦意高揚や国威発揚のためのイデオロギー装置として呈示していた。

このように戦時下では、地図の権力はもっぱら国家に掌握され、それによって地図に対する人びとのまなざしはコントロールされていた。

しかし、戦後になると、それまで陸軍が独占してきた地図製作が自由化され、再び民間での地図出版が活性化していった。とりわけ高度経済成長期に入り、本格的な消費社会が到来すると、地図の市場も急速に拡大し、後述のような実用的な地図が商品化されていったことで、真の意味での「地図の大衆化」が実現することになる。

地図の大衆化は今ではかなり進んでいて、世界中のどこでも迷うことなく目的地に到達できる域まで正確になっている。それでもナビなどでは誤差できちんと目的地に到着する前にナビが到着をお知らせして終了してしまったりする。格段に使いやすくなった地図だが目的の情報だけにしかアクセスしないので、無駄な周辺地域への気づきが減った気がします。大判の地図を抱えた助手席の人の指示のもとドライブした日々が懐かしい。

Googleマップが閉ざす、開く世界

グーグルマップでは、文化単位としての「エリア」は不可視化されているが、こうしてユーザーがみずから「エリア」をしぼりこみ、何らかの「テーマ」とむすびつけて検索することで、さまざまな物語を紡ぐレイヤーを可視化することができる。つまり、それは〈地図〉的なグーグルマップに、多様な〈マップ〉のレイヤーを重ねるということだ。そうすることで、それ自体はのっぺりしたグーグルマップも、そのつどイメージを変化させ、多様な現実を表象するようになるのである。

そして、スマホの登場とともにモバイル化したグーグルマップによって、わたしたちは現地で地図をググることができるようになった。メディア論者の松本健太郎が、「現代人はインターネット上の地図と現実の風景とを絶えず照合しながら、その複合的なリアリティのなかを生きる、ということを普段から実践している」と述べるように、それは自分がいる「いま・ここ」を、つねにグーグルマップをとおして俯瞰的にとらえなおすことができるようになったということでもある。

このとき、通常の〈地図〉的なグーグルマップを見るだけではなく、先に示したような何らかの〈マップ〉のレイヤーをそこに重ねることで、「いま・ここ」は、〈地図〉的な一層構造ではなく、多様な〈マップ〉が何層にも折り重なる分厚い重層構造をもつようになるのである。

こうしてグーグルマップが多重なレイヤーに細かく分かれることを、やはり「断片化」という文脈で語ることもできるだろう。しかし、このように、「いま・ここ」を単層的な空間としてではなく、状況に合わせて再構成できる多層的な空間としてとらえることは、グーグルマップがもたらした新しい空間認識といえよう。現状では、かぎられたレイヤーしか用意されていないが、さらに多様なレイヤーが生みだされるようになれば、こうした空間認識はいっそう豊かなものになるはずである。

地図の機能を超えてサービスがますます充実していくGoogleマップ。行き先の細かな情報収集に便利だし、近くにカフェはないかとか検索できるので、待ち合わせ場所の共有が必須だった時代が懐かしい。

地図に検索を掛け合わせた最強ツールであるGoogleマップ。今の子供たちは生まれた時からこの便利なツールに慣れ親しんでいるので、地図を広げてという機会はめっきり減ってしまったように思う。時代に合わせた教育といった点ではこれらのツールを使いこなす方法を教える方が良いのだが、ちょっと寂しい気はする。

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