個人化が進みそれが孤立を生む、そんな傷つきやすい現代社会において家庭、学校、職場などにおける最適なコミュニケーションの取り方を精神科医が解説します。
関心を共有するだけで人は元気になる
不登校の子どもであれ、うつになっているサラリーマンであれ、アルコールや過食に走っているOLであれ、悪さばかりしてきた非行少年であれ、一向に就職活動をしようとしない、ひきこもりの若者であれ、関心を共有することは、単に対話が成立しやすくなるだけでなく、現状を改善し元気にしていく作用をもつ。
不登校や出社拒否、ひきこもりや非行といった問題をどうにかしようと、問題の部分にばかり働きかけるよりも、その人の関心にこちらも興味をもって、一緒に語り合ったり取り組んだりしていくうちに、明るく元気になって、ある日突然、学校に通い出したり、就職活動を始めて実際に就職したりするケースは珍しくない。
逆に、うつや過食、不登校や非行といった問題を何とかしようと、そこにばかりターゲットを絞って働きかけを行うと、ますます症状がひどくなったり、行動が 萎縮 したり、反発して家庭内暴力がひどくなったり、どんどん事態が悪化するということになりがちだ。
問題行動は結果であって、原因ではないのだ。結果だけを改めさせようとしても無理である。原因は他にある。原因で一番多いのは、その人の安全感が脅かされているということである。問題行動を何とかしようと、ぐいぐい締め上げたりすれば、ますます安全感が脅かされて、問題行動は改善されるどころか、ひどくなっていくことになる。
実際、治療能力の優れた精神療法家は、この点をよく心得ていて、こうしたアプローチを当然のごとく用いることが多いようだ。
かなり前のことになるが、ある難しいケースの治療に関係して、精神医学の大家として知られる笠原 嘉 先生のスーパーバイズをいただいたことがあるが、そのときのアドバイスとして非常に印象に残っていることがある。治療を担当している若者がファンタジー小説が好きだという話をすると、「きみもそれに打ち込まないと」と言われたことである。そのとき使われた「打ち込む」という表現が、ずっと耳に残っている。興味を共有するというのは、口先で合わせるような上っ面なことではなく、心を入れて関心を向けるというくらいの姿勢が求められるのである。
相手の興味に寄り添い深く接するためには自分もその興味に没頭するぐらいの勢いが必要ということ。もし仲良くなりたい相手がいたらそのくらいのことはできないと。SNSの普及により相手の興味関心が日々ポストされるので理解しやすい便利な世の中に。意中の人がいるならばSNSをチェックすれば大抵のことはわかる(それが嫌で鍵垢にしたり趣味アカウントを別にする人も多いが)。しかし、生半可な知識で挑むと逆に撃沈する場合も!なので知識がない場合、まずは教えてもらうぐらいの姿勢が良いだろう。ハマるのはそれからでも十分間に合うし相手の欲求も満たされる。
共感を表現する
温かく誠実に、「心を汲む」という心構えで、相手に向かい合うことがとても重要なのである。ただ、それが相手に効果的に伝わらなければ、相手は心を汲んでもらっていることを実感することができない。共感という現象は、心と心が響き合う状態が生まれることであり、相互的で応答的な現象である。こちらの応答がわかりやすい形で示され、そのことによって、さらに相手の側の応答が生まれるという連鎖が必要なのである。
つまり、共感を表現するということが、互いの共感を高めるためには重要になる。たとえ心のなかで共感していても、それがまったく表現されなければ、相手は共感されていないと受け取ってしまい、打ち解けるのを止め、むしろ心を閉ざし始めるかもしれない。
はっきりと見まがいようのない仕方で共感を伝えることが、意外に重要なのだ。その方法の一つは、 相槌 を返したり、表情や雰囲気で相手と同じ気持ちを感じているのを表現することである。
優れた心理療法家や精神療法の大家とされる先生方すべてに言えることは、聴く際の心の入れ方や、反応の仕方がものすごく深く、気持ちがこもっているということである。共感的な応答が豊かに示され、話をしている人は、こんなにも熱心に聴いてもらえるということに、感動に近い思いを味わうことも多い。それだけで心を動かされるのだ。
これは最初に述べた聴く姿勢と深く関係している。傾聴とは、単に耳を傾ければよいというものではない。相手の心を汲みながら、こちらの共感を伝えながら聴くという受動的かつ能動的な、つまり応答的な行為なのである。
共感的な応答は、人を支えていくうえでも、問題解決を行う方向に変化することを助けるうえでも、もっとも強力な武器になる。共感は相手に安心と勇気を与える。共感的な応答は、人を支えていくうえでも、問題解決を行う方向に変化することを助けるうえでも、もっとも強力な武器になる。共感は相手に安心と勇気を与える。共感的な応答の方法としては、相槌をうつといった非言語的な方法とともに、言語的に共感を表すことも重要になる。先ほど述べたように、情動的な共感だけでなく、認知的な共感が示されることも大事なのである。相手の心のなかの葛藤や対立を整理するのを助け、視点を切り替えることで、問題解決を促すからである。
情動的共感は、こちらの表情や声の調子といった非言語的な表現に強く表れるが、それとともに、「本当に大変な思いをしてきたんですね」「よくここまでやってきましたね」といった言葉を添えることも重要である。
共感を表現することは簡単なようでいて難しかったりする。心の入れ方が浅いと一刀両断されがち。特に趣味の領域や人間関係に対する共感は難しく一見わかっていそうでそうでない場合が多々ある。薄っぺらい社交辞令的な「私もです〜」みたいなのには下心が見え隠れして辟易する。僕がひねくれているからかもしれないが(笑)
人を動かすレベルの対話術に必要な心構えや技術が学べる良書。精神科医による著書なため、心の方からのアプローチ方法も書かれており納得の連続。
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