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ケーキの切れない非行少年たち|宮口幸治|人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点

少年院にはケーキを等分に切ることすらできない非行少年がたくさんいる。これは普通の学校でも起こっている事実で、人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々だ。彼らに焦点を当て、学校や社会生活で困らないように導くメソッドを紹介。

1日5分で日本が変わる

世間では、少年院に行くような少年は、手がつけられないワルで、社会に出てもどうしようもないと思われているかもしれません。確かに少年院経験者の再入院率は低くなく、成人になると刑務所にもかなりの割合で入所します。何度も入所を繰り返す累犯者もいます。そのような彼らを変えることはできないのでしょうか?

本当に彼らは勉強嫌いなのでしょうか?

決してそうではありません。私はこれまで、少年院で見る力や聞く力を養うための、頭を使うグループトレーニングを何年も行ってきました。トレーニングは1回2時間ほどかかりますが、予想に反して彼らのほぼ全員が、2時間飽きることなく集中して取り組めたのです。彼らの中には落ち着きがなく、社会でADHD(注意欠陥多動症)と診断された少年たちもいました。私が気を遣って彼らをリラックスさせようと雑談などすると、「先生、時間がなくなるから早くしましょう」と逆に叱られたりすることもありました。外部から見学に来られた先生方に、「まさか2時間もじっと座っていられるなんて信じられない」と言われることもしばしばありました。

少年院でのトレーニングの噂を聞いた他の非行少年たちが、「僕は馬鹿には自信があるんです。僕もぜひ仲間に入れてください」と頼んできたこともあります。実は、非行少年たちは学ぶことに飢えていたのです。認められることに飢えていたのです。やり方次第で、非行少年たちでもいくらでも変わる可能性があるのです。学校にいる通常の子どもならなおさらです。それには1回2時間も必要ありません。第7章で紹介しますが、朝の会の1日5分を使ってさまざまなトレーニングをすれば、子どもたちは十分に変わっていく可能性があるのです。

学ぶこと、学んだ上で評価される喜びを知らずに育った子供たち。彼らは本当に勉強が嫌いなわけではありません。僕もかつて勉強嫌いだったにも関わらず、現在1日1冊本を読むという習慣をかれこれ5年以上続ける読書家になっています。何かを吸収したいと思うことは落ちこぼれにもあって、ただその方法がわからないだけということも多々ある。羅針盤を示してあげるだけで彼らも学ぶことを覚えます。

気づかれない子どもたち

教育現場で先生方が頭を抱える子どもの行動はさまざまです。私は現在、幼稚園、小学校、中学校で学校コンサルテーションや教育相談・発達相談などを行っておりますが、そこでケースとして挙がってくる子どもたちの状態は、一筋縄ではいきません。発達や学習の遅れ、発達障害、自傷行為、粗暴行為、イジメ、不登校、非行、親の不適切養育などの課題が入り混じっており、複雑な様相を呈しています。

例えば、次のような子どもの振る舞いや特徴は、相談ケースとしてよく挙がってきます。

・感情コントロールが苦手ですぐにカッとなる

・人とのコミュニケーションがうまくいかない

・集団行動ができない

・忘れ物が多い

・集中できない

・勉強のやる気がない

・やりたくないことをしない

・噓をつく

・人のせいにする

・じっと座っていられない

・身体の使い方が不器用

・自信がない

・先生の注意を聞けない

・その場に応じた対応ができない

・嫌なことから逃げる

・漢字がなかなか覚えられない

・計算が苦手 などです。

これらを見て、私はある共通点に気づきました。

少年院などの矯正施設に送られる少年達は、少年鑑別所、家庭裁判所で詳細な調査がなされます。そしてかなり分厚い調書が作成され、少年院送致とともにそれらの調書も少年院に送られてきます。調書には事件の詳細、家族背景、これまでの生活歴、小学校、中学校などでの様子、これまでの非行歴、児童養護施設など関係機関での様子、医学的身体所見、医師の意見書、心理検査結果、鑑別所で書いた作文などが含まれています。医療少年院に勤めていた時は、私も新しく入ってきた少年の調書をまとめながら丹念に読んでいました。

そこで彼らの生活歴を見てみますと、小学校での様子などが書かれているのですが、そこに書かれていた彼らの特徴に、前記のものが多く含まれていたのです。つまり、前記の項目は、普通の学校で困っている子どもたちだけの特徴ではなく、少年院にいる非行少年の小学校時代の特徴とほぼ同じものだったのです。

これまで私は、少年院に入るような少年達の生活歴は特別にひどいものだと思ってきました。確かに、被虐待歴、家庭内暴力、親の刑務所入所、離婚なども見られるのですが、全員に共通した項目ではなく、むしろ前記の特徴の方が共通していたのです。そして、医療少年院で働く中でさらに気付いたのは、少年院に入る少年たちが特別にひどいのではなく、彼らはこういったサインを小学校・中学校にいる時から出し続けていた、ということでした。

学校生活で子供たちの出しているサインに気づかずにいると悪い方向にどんどんベクトルが向いていってしまい非行につながる。どこかできちんと大人が道筋を示してやらないとそのまま社不の道へということになりかねない。僕も優等生タイプではなかったので、そうした同級生を多く見てきた。僕自身落ちこぼれ(成績はそんなに悪くなかったが)の一員として学校生活を送った。生きづらさのサインとして非行に走る少年たちの気持ちもわかる。そんなサインに気づく大人がいないと悪い方向に流されてしまう。

子供が間違った道へと踏み込みそうだと感じたり、道を踏み外す原因となる出来事は様々。日常生活の中にある落とし穴に気づく大人が如何程いるかでその子の将来は決まる。非行に走る子供を通常のレールに戻してあげるのも大人の使命かと。その上でレールからはみ出るならそれは少年自身の問題ということで。

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