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イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす|クレイグ・ライト

天才とは何か?必須の資質や能力、思考や行動パターンは?誰でも天才になることは可能か?幅広く天才を分析し、特徴的な思考や行動パターンを解明。

その才能は、生まれつき?

天才たちは、自分の隠れた才能には気づかず、それに気づくのは他人のみ、ということが往々にしてある。ルネサンスの偉大な芸術家の伝記作家として評価されているジョルジョ・ヴァザーリ(1511~1574)は、レオナルド・ダ・ヴィンチの天賦の才能に驚嘆し、次のような言葉で評した。

「しかし時として、自然の理を超えて、一つの肉体に美と優雅さと才能が溢れんばかりに集まることがあり、結果として、その人物がどんな姿勢をとろうとも、その動作はどれも余人の及ばぬほど神々しく見え、人はそれが神から惜しみなく与えられたもので(実際そのとおりなのだが)、人為によって得られたのではないことをはっきりと悟ることになるのである」。

レオナルドの才能の一つは、鋭敏な観察力であった。レオナルドには、動いているもの――飛翔している鳥の広げた翼や大地を駆ける馬の脚、さざ波を立てて流れる川の渦を「静止画で捉える」能力があった。「トンボは四枚の羽で飛ぶ。前の二枚が上がるとき、後ろの二枚は下がる」と、レオナルドは1490年頃のメモに書き記している(5)。これにはびっくりだ。

レオナルドの最大のライバル、ミケランジェロには映像記憶の才能があり、視覚で捉えたものを正確に再現して形にできる能力があったので、正確な比で描画することができた。電気技師のテスラは、たいそう覚えが早かった。というのも、彼も直観像による記憶能力があり、たとえば、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの『ファウスト』なども一字一句違わず暗誦できたからだ。

ワシリー・カンディンスキー、フィンセント・ファン・ゴッホ、ウラジーミル・ナボコフ、デューク・エリントンは皆、共感覚 [ある感覚の刺激によって、別の感覚も引き起こされること。この感覚を持つ人は、たとえば文字や数字に色がついて見えたり、音や匂いに色や形を感じたりする]を持って生まれた。

彼らは音楽を聴いたり、文字や数字を見たりすると、そこに色が見える。レディ・ガガもそうだ。「曲を書いているとき、音が聞こえてきて、歌詞が聞こえてくるんだけど、色も見えるの。音が色の壁のように見えるのよね」と、彼女は2009年の『ガーディアン』紙のインタビューで話している。

1806年、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、彼の代名詞にもなっている癇癪を起こして、上級貴族であるカール・リヒノフスキーに向かって噛みついたことがある。「侯爵、あなたは偶然生まれ合わせてあなたであるわけですが、私なるものは私自身を通じて私であるのです。侯爵などというものは、これまでもこれからも何千といます。しかし、この世にベートーヴェンは一人だけです」。

これに対して、私たちなら丁重にこう答えることもできるかもしれない。「確かに。ルートヴィヒ、でも君も、たまたまそのように生まれたんだよ。君のお父さんとお祖父さんは職業音楽家だった。おそらくは、そのお二人から君は、とりわけその絶対音感と音楽的記憶力を受け継いだんだよ」と。

いわゆるギフテッドたちの特殊能力のようなものはなかなか普通の人には理解し難く真似できるものでもない。中には絶対音感のように後天的に獲得できるものもあるがそれも早いうちからの鍛錬が必要。生まれた時から持っているものとは違い習得する間の時間分優位となる。しかし、そんな才能を狙って搾取しようとする輩に出会ったり天才ならではの苦悩もあったりする。才能に恵まれたから幸せに暮らせるかと言ったらそれはまた別問題だったりするから難しい。

読んで学ぶタイプの天才

たいていの人は、レオナルドがやったように、自分の好奇心を満たすために動物を解剖したり、小川を迂回させたりはしない。

たいていの人は読むことで追体験するが、そうするのには少なくとも3つの理由がある。

(1)知識、見識、権力、活力に結びつきそうな情報を得るため。

(2)人生経験を豊かにし、それによって、自分でその感情を経験しなくても、人の行動に対する洞察を得るため。

(3)自分の道徳的指標を設定するのに役立つ見本を見つけるため。

何百万という人の人生を変えた一人の天才がいる。オプラ・ウィンフリーだ。TVのレポーター、トークショーのホストとして、ウィンフリーの好奇心や知的欲求は、彼女が行った3万7000回ものインタビューにはっきりと表れていた。それと同じくらい視聴者に影響を与えたのが、彼女のTV番組『Oprah's Book Club(オプラの読書クラブ)』 だ。

この番組は、高校時代から本を手に取ったことがない人に、本を手に取らせた。 子どもの頃、ウィンフリーは学ぶために戦わなければならなかった。「あんたはただただ本の虫以外の何者でもないね」。彼女の母親はそう言って娘の手から本を取り上げようとした、と彼女は語っている。「外に行って遊んできなさい! あんたは自分がほかの子より賢いと思ってるんだろうけど、あたしはあんたを図書館になんか連れていかないからね!」。

奴隷の子孫のウィンフリーは、若いシングルマザーのもとに生まれ、あちこちたらい回しにされて、幼少期から 10 代の前半にかけて性的虐待を受けており、 14 歳で未婚の母となった。「赤ん坊が死んでから学校に戻りました」と彼女は振り返っている。「人生をやり直すチャンスをもらったと思って。本に没頭しました。困難な目に遭った女性、ヘレン・ケラーやアンネ・フランクの本にのめり込みました。エレノア・ルーズベルトの本も読みました」。

貧困から立ち上がってウィンフリーはメディアの大物になり、アフリカ系アメリカ人初のビリオネアになった。いったいどうやって成し遂げたのだろう? 自分自身を向上させ、他者も向上させるために、とにかく読むことを通して彼女は頑張り続けた。

ノーベル賞作家のトニ・モリスンはウィンフリーについて、次のように語っている。「あれほどたくさんの本がある家は、私はほとんど見たことがない――ありとあらゆる本があって、手に取られて読まれている。彼女は本物の読書家ですよ。お飾りじゃなくてね。彼女は肉食ならぬ書食動物ね」。

2017年、ウィンフリーは読書と教育の重要性について語っていたが、学校とかカレッジ、大学という文脈での学習については、一度たりとも触れなかった。「(それが)重要なのは、現実の暮らしへの扉を開いてくれるからです。それなしでは、この世の中をくぐり抜けて行くことも、成功することもできません。発見と驚きと魅惑への開いた扉で、自分が何者で、どうしてここにいて、自分がどんなことをするようになったかを見つけ出す扉なんです。それは人生への招待状。私たちに永遠に栄養を与えてくれます」。

読書は著者の経験を追体験できる貴重なツール。実際に経験したことがなくともそこに本があれば追体験できる。もちろん生の体験には及ばないがそれでも貴重な経験が。読んだ後に実際に自分の経験として物事を体験することも可能で、知識の泉から得られるものは多い。自身を向上させるためのツールとして身近に本があると言うのはアドバンテージだ。

色んなジャンルの天才について語られた書籍は多いが、天才そのものを分析して語る書籍は意外と少ない。天才とは何か?どんなタイプの天才がいるか?さまざまなジャンルの天才たちを引き合いに出し分析します。

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