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母性社会日本の病理|河合 隼雄|日本人に起こりがちな心の問題を説きながら、生き方を探る

大人なのに精神が成熟できていないそんな日本人の精神病理が反映された世の中。最近、心理療法をしていて「心理的な少年」「心理的な老人」がふえてきたと著者はいう。中年クライシスに直面した時どうすればいいのか日本人に起こりがちな心の問題を解き明かす。

日本人の精神病理

現在の日本は「長」と名のつくものの受難の時代であるとさえいうことができる。つまり、長たるものが自信をもって準拠すべき 枠組みをもたぬために、「下からのツキアゲ」に対して対処する方法が分からず、困惑してしまうのである。

母性原理に基づく倫理観は、母の膝という場の中に存在する子どもたちの絶対的平等に価値をおくものである。それは換言すれば、与えられた「場」の 平衡 状態の維持にもっとも高い倫理性を与えるものである。

これを「場の倫理」とでも名づけるならば、父性原理に基づくものは「個の倫理」と呼ぶべきであろう。それは、個人の欲求の充足、個人の成長に高い価値を与えるものである。

たとえば交通事故の場合を例として考えてみたい。ここで、加害者が自分の非を認め、見舞に行くと、二人の間に「場」が形成され、被害者としてはその場の平衡状態をあまりにも 危うくするような補償金など要求できなくなる。ここで金を要求すると、加害者のほうが「あれほど非を認めてあやまっているのに、金まで要求しやがる」と怒るときさえある。

この感情はわれわれ日本人としては納得できるが、西洋人には絶対了解できない。非を認めたかぎり、それに相応する罰金を払う責任を加害者は負わねばならないし、被害者は正当な権利を主張できる。ところが、「場の倫理」では、責任が全体にかかってくるので、被害者もその責任の一端を 担うことが必要となるのである。

日本人の無責任性がよく問題とされるが、それは個人の責任と場の責任が混同されたり、すりかえられたりするところから生じるものと思われる。

現在の日本は「長」と名がつくポジションの人間には受難の時代だという。確かに職場では派遣労働者と違い長と名のつくポジションの人は下からの突き上げも半端ない。あえてそのポジションを嫌って昇進を拒んで文句だけ言う輩も見受けられる世の中、リーダーには生きにくい世の中です。下位のものは上位のもののいうことを聞かなかくてはならないはずなのに、言うことを聞かない。そんな職場はさっさと辞めてリタイアするなんて考え方の若者たちも出始めている。新しい潮流ですね。

母性原理に基づく平等性

わが国の母性原理に基づく平等性は、戦後の民主主義を推しすすめてゆく上で大きな役割をもったことを認めねばならない。教育の機会均等をすすめ、戦前とは比較にならぬ多数の人間が高等教育を受けるようになったのも、このためである。しかしながら、このようにしてすすめられてきたわが国の民主教育は、欧米のそれと非常に異なるものになっていることを、われわれは自覚しなければならない。

日本人の平等性の主張は背後に母性原理をもつために、能力差の問題にはできるだけ目を閉じてゆこうとする傾向をもつ。あるいは、時にそれはタブーにさえ近い。それが完全にタブーとなった状態を、筆者は「平等信仰」と呼びたい。

ここに、わざわざ信仰などという言葉を用いたのは、能力差という事実は、真に残念なことではあるが、現実に存在するからである。このような断言に対して攻撃を加えたい人もあろうが、その点については後に述べる。能力差の存在の事実を、欧米の教育ははっきりと認めている。それを端的に示しているのは、小学校で落第や飛び級の制度があることである。

欧米の小学校に落第制度があることは、最近よく紹介されるのでご存じの人も多いと思う。たとえば、一九七四年フランス全体で小学一年生の留年率が三三パーセントというのだから驚かされる。三分の一が落第しているのである。フランスで五年間一度も落第せず、ストレートで卒業した子は二七パーセントのみである(「いま学校で ソ連・西欧」「朝日新聞」連載六四四回)。これは日本ではとうてい考えられない数字である。

教育格差ができないように日本もどんどん落第制度を導入すればいい。強化によって習熟度は変わっていくので全学年でそれに応じたクラスで学ぶようにすれば理解しないまま進級することがなくなる。母性原理の平等性からいうとこれは許し難いことなのかもしれないが。

日本における母性原理が引き起こす様々な事象を読み解いていきます。教育に始まり社会人になってからの社会生活まで日本に長らく根付いてきた病理を一刀両断。

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