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考える力を養うための、書物との付き合い方とは?

書籍、雑誌、新聞、ネット……。現代社会はまさに情報が氾濫している。ショウペンハウエルが憂いた、良書を見つけるのが極めて難しい時代である。「読書する人は、自分で考える能力をしだいに失ってゆく」「非読書術」まで説いた、ショウペンハウエルの真意はどこにあるのか。稀代の読書家であり、現代の碩学が、ショウペンハウエルの人生と考え方からその真意を解説し、自らが身につけてきた「知的読書法」を紹介する。本書は、考える力を養うための、書物との付き合い方である。若人よ、恐れるな。本は頭脳となり、生きる指針となる。

習慣的な離脱方法

習慣的な離脱方法ということをショウペンハウエルは考えた。それは芸術に触れることだ。芸術に触れたときだけは、「生に対する盲目的意思」のくびきから離れたような感じになる。プラトン的なイデアを見るような感じになるともいう。芸術的な直観はあらゆる制約から脱して──因果律からも脱して──事物を直観的に感ずる。ただし、これは一時的なものであるとショウペンハウエルはいっている。芸術体験に重きを置く。このことが後世の学者に影響を及ぼした。芸術体験とはどういうことかというと、黙想と沈潜体験である。これが芸術が与えてくれるものであり、そのときは「生に対する盲目的意思」から離れたような感じになる。そして、芸術的に得たビジョンを、人間の認識形式の最高の形式──プラトンのイデアの概念に相当するもの──と考えた。

芸術体験はあらゆる制約から脱するのに値する影響力がある。僕は絵画や彫刻には興味がないが、音楽は好きでよく聴いている。外出する際は必ずヘッドホンをつけて、世の中の雑踏の音から逃げるのに役に立つ。

読書について

読書とは、自分で考える代わりに他のだれかにものを考えてもらうことである。

大量に、またほとんど一日じゅう読書する人は、自分で考える能力をしだいに失ってゆく。 わたしたちが自分の思考への従事から離れて読書に移るとき、安堵感を得られるのはそのためである。 読書中のわたしたちの頭の中は他人の思考の遊び場であるに過ぎない。

本を読んでいるとき、考えるという作業の大部分が免除される、というのは確かにそうだと思う。そして、本を読むときは考えるという作業の大部分が免除されるから「わたしたちが自分の思考への従事から離れて読書に移るとき、安堵感を得られるのはそのためである」というのは、ショウペンハウエル自身の体験を語っているのだろう。この場合の仕事は書くことだと思うが、私もそれは実感としてある。つまらない原稿でも書こうとすれば、自分で考えながら書かなければならない。それは相当、気が重い作業である。それだけに、一般の教養人や学生には論文を書けない人がおおぜいいるし、大学教授にもいる。ただし、ドイツの大学教授に論文を書けない人はあまりいない。そこがドイツの特徴だ。

本を読んでいると必然的に著者の見解に同意する形となっていくことが多い。名のある人が書いた本ならなおさらだ。なので僕は、同じテーマで違う著者の本を何冊か読むよう心がけている。どちらの言い分が正しいのか、あるいはどちらも自分の考えとは合致しないのか考える下地となる。本を読んでいると安堵感を得られるのはこの考えるという行為から解放されるから。なので、あえてどう感じたかアウトプットする必要を感じている。

暇さえあれば本を読む生活

ひまさえあればすぐに本を手に取って読むという生活は、つねに手先を使って仕事をしているよりよっぽど精神をマヒさせてしまう。手仕事をしているときは、あれこれと思いに 耽ることができるからである」と。それを同じことを『知的生活』の著者ハマトンがいっている。ハマトンは絵が好きで、画家になろうとしたこともあった。彼が画家と話してみると、実に内容がおもしろい。その理由を「画家が絵を描いている間、いろいろなことを考えるからだ」と彼は書いている。ハマトンの時代は、画家はだいたい学問のない人々で、職人というクラスだったから、普通は見下されていたけれども、非常にインテレクチュアルだとハマトンはいうのである。ショウペンハウエルやハマトンの指摘と少し違うが、大学院を経て学究の道に進む人がアルバイトをするなら、身体を使う労働のほうがいいと私は考えている。大学の非常勤講師ぐらいだと給料が安いので、家庭教師や塾の講師などのアルバイトをする人がいる。しかし、そういう学問に関係のある仕事をするより肉体労働をしたほうが勉強したくなると思う。

反芻することによって、人は読んだものを身につけることが可能になる。なので、気に入った本は手元に置いておき、いつでも自分の目に入るようにしている。机に20冊程度並べておき折を見て読み返すのが僕のやり方。

読書について考えるのに昔も今もないことがわかる。そんな書籍です。本に囲まれて暮らすうちについつい忘れてしまいがちなことを思い出させてくれるのがこの本。読書をともすれば否定的に捉えたショウペンハウエルは読書の持つ二面性をつまびらかにしていく。

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