医師であり心理学者であるアルフレッド・アドラー(1870~1937年)によって1933年に発表された名著『生きる意味』。2つの意味があるこの言葉を使って、アドラーはその主観的な面と客観的な面を描き出した。甘やかされた子どもたちはどう成長するのか。二つのコンプレックスとはなにか。母親と父親が子どもの成長に影響を与えることとは。なにが精神疾患を引き起こすのか。いちばん大切な「人生の意味」とはなにか。アドラーは、細かく明確な分析を行って「人生の意味」に迫った。
条件反射
道路で飼い主に従って歩くようしつけられた子犬がいました。しつけはかなり身についていたのですが、ある日、子犬は走行中の車に向かって飛びだします。跳ね飛ばされましたが、けがはせずに助かりました。何度もあるような経験ではありませんから、この経験に対する生来の反応はほぼ用意されていないわけです。けれど、その後きちんとしつけられた子犬が事故の場所にだけいくのを嫌がったと聞くと、「条件反射」(訳注:くりかえしによって身につく反射。「学習」の一要素として、行動主義心理学で扱う)とも言えないのです。
子犬は道路でも自動車でもなく事故現場を怖がるようになるというパターンを示しました。「自分の注意や経験が足りなかったのではなく、あの場所が悪いのだ」と刷り込まれ、「あそこに行くと必ず怖い目にあう」というパターンを示すように。似たパターンは人間の神経症にもよくみられます。身に迫る敗北や現実感の喪失を恐れます。問題を解決できないと思い込んで動揺し、身体や精神の症状が生じるのです。そしてそれらは、自分を守るために症状を我慢し、利用して内にこもるのです。人は何かに失敗したり挫折したりすると条件反射的に行動を鈍らせるよう精神が働きます。経験の少ない子供などではそれが顕著に。しかし、それらは経験を積むことによって違う結果を招くこと(良い結果)が分かれば解消されていきます。
役に立っていることが認められることの重要性
たとえばだれかが靴を作れば、その人は他者の役に立っているのですから、十分な生活をして、あらゆる衛生面で便宜を受け、子どもによい教育を受けさせる権利があります。そのためにお金を得るのは、市場の発達した時代にそのひとが役に立つことが認められているということです。働くことで、世間にとって自分は価値があると感じられます。これは、人間が必ず持つ劣等感をやわらげる唯一の方法です。
僕は病気(統合失調症)を発症してから10年以上経ちますが、病気を発症した直後は過度な劣等感に苛まれていて辛い日々が続きました。現在では、ブログやSNSで書籍情報を発信して一定数の方に支持を頂いているわけですが、費やしている時間の割にはお金にならないというデメリットも。それでも、僕はデイケアに通ったりするのは気が進まないので、外出は週に2度、カロリー制限無視を無視して甘いものを食べにカフェに通うのをデイケアがわりにしています。
劣等コンプレックス
自分が不十分であることを感じるのは前向きな苦しみです。少なくとも、課題や欲求や緊張を解消するまでずっと続く苦しみです。これは生まれつき与えられた感情で、解消の必要なつらい緊張に似ています。緊張の解消は、フロイトの考えのように快楽に満ちている必要はありませんが、ニーチェの見解のように快楽が含まれることはあります(訳注:フロイトの「快楽原則」。人間は不快を避けて、快を求めるという考え。ニーチェは、克服を目指す努力のなかには苦悩も快楽もあると考えた)。
緊張の解消には一時的、継続的に苦痛が伴うものです。赤ん坊が満たされない思いを泣いたりして親に伝えたりするのと同じように、人類の歴史的な行動も劣等感とそれを満たすための朝鮮の歴史であると言えるでしょう。
調和のとれた子ども
甘やかされた子どもは家庭のなかで、いえ、むしろ甘やかしてくれる相手との関係のなかだけで成長しようとします。進化し的にも社会的にも、母親の課題は、子供が進んでひとを助けて、力が足りないときだけ助けてもらう協力者・仲間にできるだけ早くなるように育てることです。「調和のとれた子ども」については何冊もの本が書けるでしょう。
この本では子どもが自分は家庭内において親兄弟と台頭のパートナーであると感じることができ、周囲への関心を育てて行けることが良いとしています。
個人心理学のチェックリスト
- どのような不調か?
- 症状に気づいたとき、どんな状況だったか?
- 今の生活状況は?
- 職業は?
- 両親の性格、健康状態、もしあれば重病の既往症は?患者はそれにどう関係してきたか?
- きょうだいは何人いるか?何番目か?きょうだいは患者に対してどのような態度だったか?きょうだいの生活は?きょうだいの生活は?きょうだいも病気の状態にあるか?
- 父親や母親のお気に入りはだれだったか?家庭での教育はどうだったか?
- 子ども時代に甘やかしの兆候はあったか(気弱、引っ込み思案、友人とのつきあいが難しい、だらしないなど)?
- 子ども時代に病気になったか?病気への態度は?
- もっとも古い子ども時代の記憶は?
- もっとも怖いもの、怖かったものは?
- 異性に対してどういう態度か?それは子ども時代からか、大きくなってからか?
- 一番なりたかった職業は?もしその仕事についていないなら、なぜか?
- 野心的、過敏、怒りが爆発する傾向がある、几帳面、支配欲が強い、引っ込み思案、短気か?
- いま周囲にいるのはどんなひとたちか?短気、いつも怒っている、愛情深い?
- どうやって寝ているか?
- 夢を見るか(落ちる夢、飛ぶ夢、くりかえし見る夢、正夢、試験を受ける夢、電車に遅れる夢など)?
- 親族の病歴は?
以上のような質問で個人の心理状態がわかるのだという。カウンセラー向けだが、患者の方からすると、これらの質問に答えていく過程で自分を開示することに慣れるというメリットもあるように思う。
アルフレッド・アドラーの名著の邦訳。岸見一郎先生の『嫌われる勇気』以来、何冊かアドラー関連の本は読んできたが、原著の邦訳に触れてみて、人生にとって一番大切なこととは何かを感じ取ることができた。
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