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『社会はヒトの感情で進化する』小松 正

ヒトは認知バイアスから“進化"したと言われています。これは進化生物学を基盤として行動経済学へと発展していきました。たとえば、ヒトの意思決定において生じる規則性のある判断の偏りは「行動バイアス」と呼ばれています。行動バイアスによりヒトは、「今すぐ1万円をもらえる」と「1年後に1万1000円もらえる」という選択肢において、多くが後者を選択します。また、A、B両氏がいて1万円がもらえるとします。しかし、その分配法はA氏が決めることができ、その分配率にB氏がNOと言うならば、両氏とも1円ももらえないという条件が付きます。このときA氏が自分に9999円、B氏に1円と提案した場合、B氏はNOと言う場合がほとんどだと、研究結果から明らかになっています。(B氏はいくらだと納得するのでしょうか?)つまり、行動経済学が「超合理的な行動」を経済人としているのに対し、ヒトの感情はその通りに働かないのです。こうした感情の偏りは、生物学の知見から明らかにされたのです。

なぜヒトがこれほどまでに高度な知性を持つに至ったのか

なぜヒトがこれほどまでに高度な知性をも持つに至ったのかという問いは、私たちにとって非常に興味深いものです。ヒトの脳の重さは体重の約2%にすぎません。しかし、脳のエネルギー消費量は非常に大きく、体全体で消費するエネルギーの約20%にも達します。脳がこれほどまでに高コストの器官であることは、それだけコストをかけるだけのメリットが存在することを示唆しています。他個体との社会交渉において発揮される知性のことを「社会的知性」と言いますが、そのため、社会脳仮説は「社会的知性仮説」とも呼ばれています。

霊長類の多くは集団で生活しており、そこでは食物や配偶者を巡って他の個体を欺いたり協力したりという社会交渉が生じます。社会脳仮説では、こうした交渉の場で生じる社会的問題に対処するべく進化したことでヒトの高度な知性が生まれたと考えられます。その過程で他の霊長類にはない言語というものを手に入れたと考えると合点がいく。ヒトの知性は集団の中で他の個体と上手く付き合いながら生きていくための進化とも言えるわけです。

現代生物学は遺伝的決定論ではない

現代生物学は、ヒトのあらゆる性質には遺伝と環境の双方が影響することを明らかにしてきました。この事実は他の生物でも同じです。ヒトの場合、環境には文化的なものも含まれます。さらに、個人間に遺伝的な差があったとしても、どのダイプの遺伝子型が優れているかを絶対的に決定することは不可能です。

一般に遺伝子の適応度は環境により変化する。それはヒトにも当てはまる。ある遺伝子が高い適応度を持つことが確認されたとしても、それはあくまでその個体の生存率や繁殖率が高いということを意味するだけです。遺伝子の適応度の高い低いとその遺伝子の価値とは全くの別問題。古くは人種や疾患によって人を差別するような向きがあった。そんな間違いが二度と起こらぬように遺伝子への理解が必要だ。遺伝子の研究が進んで医療やなんかが発展するのは良いことだが、デザイナーベイビーのようなものがまかり通るようになるのはどうかと思う。最近では生まれてくる子が障害を持って生まれてくる可能性までわかるようになり、出産するかしないか事前に決めるなんてこともまかり通っている。人道的に許されているのが疑問だが、育てる自信がないのだからしょうがないと割り切るべきなのか。

行動経済学の基盤は進化生物学

行動経済学が成功を収めた理由の1つは、伝統的な経済学の想定する人間像を適切に修正したところにあると言えるでしょう。伝統的な経済学の想定する人間像とは経済人(ホモ・エコノミカス)と呼ばれるものです。経済人とは、「超合理的に行動し、他人を顧みず自らの利益だけを追求し、そのためには自分を完全にコントロールして、短期的だけでなく長期的にも自分の不利益になるようなことは決してしない人々」です。

伝統的な経済学の想定する「超合理的な人間像」は、現実の人間に当てはまっているのかという問題も出てくる。多くの人は罪悪感や人の目が気になり、自分の利益最優先の行動が取れないなんてことがあるのではなかろうか。行動経済学では、このような超合理的な人間像に対して修正を重ね、ヒトは意思決定において非合理的であることを明らかにしてきました。行動経済学の研究により、ヒトの非合理的な行動には一定の規則性があることがわかってきました。この判断の偏りのことを「行動バイアス」と呼ぶ。無意識に出てしまうような偏った好みや傾向がそれだ。

行動経済学の基盤となった進化生物学とはいかなるものか?社会に活用される行動デザインとは?神を信じるようになったり、差別が生まれたりする理由とは?人間の行動をつぶさに見ていくと社会の中で進化するヒトの感情が見えてくる。

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