インターネットをはじめとした急激な社会の変化に、動物として適応しきれずに、生活の中で疲弊し、うつっぽくなってしまう人が増えている。本書では、疲れをとるには、何か特別なことをするのではなく、休む、つまり何もしないことが重要と提言。当たり前のことだが現代人には盲点であり、実行するにも忙しすぎる人もいるだろうが、まずそれに気づくことからということだ。
アドラー心理学が日本と韓国だけで流行した理由
端的にいうと、私はアドラーの時代より現代日本人のほうが、より精神的に疲弊していると感じている。だから、「自己責任」といわれると、正論だけに苦しくなる。また、西洋人と日本人の差もある。西洋人は、合理的思考になれている。しかし日本人の文化は「和」、つまり他人のことを思いやる思想が根底に流れている。現代の情報化社会を生きることに疲れた人が、さらに他人に気を遣わなければならない。だから対人関係での疲れが現代的なテーマになっている。実際、アドラーがもてはやされているのは日本と韓国だけだという。人に気を遣う文化だ。
僕も流行に乗ってアドラー心理学の書籍を何冊も読んでいるが、「他人の評価は気にしない」ように努力するのは意外と難しい。「行動の背後にある欲求を分析し、問題を解決するのに努力した」が、長続きせずまた落ち込んでしまった人も多いはず。本書では、対人関係に疲れたら、その対人関係を改善しようと試みるのではなくまずは自分自身の疲労を回復することを優先させることを提案している。
会社の「飲み会」は出席か欠席か選べる時代
例えば会社の「飲み会」。以前は職場の飲み会に誘われたら、「参加」が前提だった。今は参加者を募る。出席か欠席か、選べるのだ。「出席が当たり前」と考える上の世代にとって、飲み会は、普段話せないことを気楽に表現し、わかり合うための大切な機会だ。しかし、若い世代は、勤務時間外はプライベート優先で、他の用事があれば欠席を選ぶ。
どちらが正解でもない。価値観の相違があるだけだ。お互い「なぜ若い人たちは平気で断るのか?」「なぜ上の世代は飲み会を重視するのか?」と批判し合う。これでは変な方向にエネルギーを使い疲れてしまう。ワークライフバランスが叫ばれ、年配者が偉いという年功序列から、実績のある人が偉いという成果主義へと移行する中、様々な価値観が存在する。
期待と比較
例えば、毎日頑張っている自分に対しては、これぐらいの報酬で、この程度の生活を送りたいという「期待」がある。ところが、SNSで友人が「おしゃれなレストランで食事中」といった写真をアップしているのを見ただけで、友人と自分の生活を「比較」して、気持ちが暗くなってしまう。
自分の理想の生活を他人との比較の中に見てしまい、そのギャップで落ち込んでしまうのだ。僕の場合SNSでは情報収集のためと割り切って使っている。少数の同じ趣味を持つ人だけフォローしあまり自分自身の生活に影響を与えないよう、1日に2〜3回しか見ないようにしている。それでもSNSの利便性は十分に引き出せると思うからだ。疲労が溜まっているなというときは、このSNSから意識的に離れることをお勧めする。
「とりあえずビール」はもう古い
さて、資料もそろい、会議が始まる。出席者は、緑茶かコーヒーかを選べることになった。あなたは緑茶が飲みたかったが、あなた以外の全員がコーヒーを選ぶ。そこで準備してくれる人の手間を考え、緑茶は我慢してコーヒーにした。なのに遅れてきた後輩は、空気も読まず緑茶を注文。「え!」と思ったが、周囲の人も大してそのことを気にしてはいないようだ。後輩はおいしそうに緑茶を飲んでいる。
同じような場面が居酒屋でも。僕らの時代は店に入って「とりあえずビール」というのがなんとなくスタンダードだった。しかし、現在では、皆思い思いに好きな飲み物を注文する傾向にある。同調圧力が強くなった社会と言われて久しいが、それと同じぐらい多様性も認められる世の中になったということだろう。
良質な睡眠、食事をとる
社会が24時間化し、現代人は極端に体を動かさず、頭脳だけを駆使している。眠りにくい環境にあるが、これでは精神的な疲労は回復できない。とにかく眠る時間を確保しよう。また、おいしく栄養のある食事は、体はもちろん、心も満たしてくれる。もし、ほんとうに睡眠が取りにくいようなら、精神科や心療内科を受診して、睡眠薬などを賢く利用しよう。
よく眠れないからと、アルコールを飲んで眠りにつこうとする人がいるが、それでは睡眠の質を下げてしまう。アルコールは控えるのが、体力回復には有効だ。
本書では、我慢のデメリットを強調しているが、我慢自体は衝動的な行動を避けられるなどのメリットもある。ただそればかりだと疲れるので、我慢はそれが有効な時のみ使っていきたい。追加の刺激を与えず、体を緩め、安心できることが疲れをとるには大事だ。メンタルが弱いなと感じている人にオススメの、心の疲労回復本です。
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