広告のクリエイティブ・ディレクターとして数々の賞を総なめにし、スティーブ・ジョブズとはNeXT時代から計12年間共に働いてきた著者。伝説のマーケティングキャンペーンThink Differentの制作に参画し「iMac」を命名したことでその後のアップルの「i」シリーズを生み出すなど、アップルの復活において重要な役割を果たした。その歴史を振り返りながら初めて明かす、ビジネスとクリエイティブにおける「シンプル」という哲学。
第二案を作るな!
ひとつの製品にふたつのパッケージ案を作らせていた。スティーブはそれを無能な人間がすることだと考えた。「くっつけてしまえ」と彼は言った。「ひとつの製品に箱はひとつだろう」。箱の第二案は作ってはいけなかった。
選択肢を与えられた時、人はシンプルな方を選ぶ。それが当たり前と思えるならあなたはきっとシンプルさの一番の特徴も理解できるだろう。それは見た目も振る舞いも聞いた感じも全く自然で、知らず知らずに人をうなずかせるようなことなのだ。ちょっと前に人気振付師がクライアントに何十種類ものパターンの振り付けを提示するというのが放映されていた。これと真逆を行くのがスティーブ・ジョブズだ。チームは少数で組織し信頼できるメンバーの仕事に敬意を払う。Appleはハードウェア、ソフトウェア、製造、戦略、製品の販売方法など多くの面でうまくやっているが、その全てを貫き、まとめあげているのがこの〝シンプルさ〟なのだ。
このことは彼が関わる会議での様子に集約されている。席にいる誰もが重要な参加者でなければならず、見物人には退席願う。出席者は最小限、30分以上続くときは退席する。会議で使った時間はその埋め合わせをするべく何か生産的なことをする。シンプルさのルールを重視することで、コストは下がり、仕事は早くなる上に、質も上がる。そして最も重要なことに、効率も良くなる。
スペックよりもユーザーにとって便利な点を重視
Appleの競合相手はAppleよりも良い製品を作るため、しばしばスペック偏重な製品をリリースすることがあるが、Appleはスペックよりもユーザーにとって便利な点を重視し、感情に訴えかけるマーケティングを行なっている。それによりスペックを比較しあい分かりづらい製品ラインナップになることを回避している。僕が最近買ったMacBookPro15(Late2016)も16GBメモリではなく32GBメモリ搭載じゃないとというスペック偏重のユーザーもいる一方、Touch BarとTouch IDなどユーザーの利便性を考えた新機能で心を掴んでいる。Touch Barはまだその有用性がわからないが(対応アプリが増えてくれば恩恵を受けることもあるだろうが)Touch IDはパスワードから解放され超絶便利!
iPhoneをはじめ、iPadなどが音楽プレーヤーやタブレット端末のシェアを独占すればするほど、時間がAppleの味方をする。アプリやアクセサリを提供するエコシステムの中にユーザーを囲い込むことができるからだ。今日のAppleのように強いブランドを持っていれば、競合他社より価格の上で割増料金を払うことになっても人々は行列を作るのである。ブランディングがうまくいっていないと、顧客を引き付けるための戦略は、価格を下げることしかなく、利益率は低くなる。
半透明でボンダイブルーのiMacの登場
iMacは半透明のボンダイブルー〔シドニーのボンダイビーチに由来するAppleの造語〕で、内部に見える電気回路もデザインの一部になっていた。正直な話、私たちがするべきことはただ、「Think different」の見出しの下に、iMacの写真を置くだけで、それがすべてを語ってくれた。電子機器の歴史において、Think differentキャンペーンと iMacほど、ブランド確立と製品発売が効果的に組み合わさったものはないだろう。
18年前の出来事だがMac取扱店舗まで見にいったのを覚えている。結局、僕は翌年発売されたPower Macintosh G3 (Blue & White)を買うことにしたのだが、当時が思い出されて感慨深い。色々物議をよんだ丸いマウスも今となっては懐かしい。
現在ではAppleはコンピュータの分野でも同じ単一性を追求している。iMac , MacPro , MacBookAir , MacBookProとすべての製品ラインはどれだけデザインが変わっても、なじみのある名前を維持している。
こういったブランディングが、今日のAppleの「人気のあるブランド」「愛されるブランド」といったリストに名を連ねる要因となっている。興味を掻き立てる広告、アップルストアでの購買体験、製品の使用からサポートまであらゆる段階で顧客との関係にすぐ見てとれる。
シンプルであることは、複雑であることよりむずかしい。物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければならないからだ。だがそれだけの価値はある。なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山も動かせるからだ。
ーースティーブ・ジョブズ
ジョブズがアップルに復帰してからの歴史を振り返りながら物事をシンプルにする意味を語っている。
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