仕事の場は趣味のサークルでも、お茶飲み話の場でもない。それぞれの人間が結果を出し組織の利益の一部を分かち合う場に過ぎない。組織の利益が最優先される場だ。非情と言われようが、である。「支え合う」「ひとりじゃない」「絆」など他人との結びつきが重要視される風潮があるが、徒党を組む人は幼稚に見えるとし、喝を入れる書籍。
ビジネス世界のドライぶりは当然のこと
仕事経験がまだ浅い人間は、ビジネス世界のドライぶりを「厳しすぎる」「ついていけない」と思うかもしれない。だが、社会全体の仕組みもまたドライなのである。人間、どこへ行ってもそこから逃れられない。覚悟を決めて向き合うしかないのだ。ユニクロの柳井正社長は「非常な経営者」といわれている。彼の経営方針をインタビューしたジャーナリストは「新規事業を立ち上げる時に撤退する基準を明確化しているのがすごい」とほめ称えていた。「こうなったらやめる」としっかり頭に描いてスタートするのはさすがだと思うが、こんなことは麻雀が少しできる人間なら、みんなが自ずとやっっていることではないか。麻雀というゲームは「どこで勝負を降りるか」が結果の勝敗を左右するからだ。
ビジネスも麻雀のようなひとつのゲームと捉えると、ずいぶん分かり易い。新規出店の目測を誤ったら、早い段階での撤退もありうる。特に海外などということになると、文化の違いやなんかで思うようにオペレーションができないなんてことはよく起こるだろう。「せっかく出店したんだからもう少し様子を見よう」とか「ここまで苦労したんがから、そう簡単に諦められない」などという人間は相手の満貫に振り込むこととなる。成功者ほど競争をゲームのように楽しんでいるというわけだ。
仲良しごっこは学生時代まで
日本の職場は外資系の職場に比べると、和気藹々としている。確かに悪いことではないが、必要以上に仲良くするのはいかがなものか。なぜなら、敵味方の感覚がなくなってしまうからだ。職場は仲良しクラブではないということを、絶対に忘れないことだ。ある創業経営者が「職場であまり仲良くするな。そんなに友達が欲しければ大学へ戻ればいい」と言っていた。至言である。世の中で友情を求めすぎることは、時に致命的な結果を招く。「男は一歩外に出れば七人の敵がいる」そう心得ていたい。
僕はバイト上がりで契約社員になったので、学生気分が抜けてなかった。年上の契約社員が店長就任を断ったことで、僕が店長になったのだが、アルバイト時代と同じような接し方をしてしまったせいかどうかわからないが、従業員とのコミュニケーションがうまくいかなくなった。今考えると、店長になった時点で立場が逆転しているのだから、一線を引くべきだった。
寡黙さが落ち着きを演出する
人間関係でしゃべりすぎると、ろくなことはない。なぜなら、口数が多いと、つい余計なことを口走ってしまうからだ。犯罪者に黙秘権が認めたれていることの意味を考えてみればいい。口を開くと不利になるからだ。しゃべるのは危険な綱渡りのようなもの。「沈黙は金」というのは貴重な忠告である。
口数が多いことの欠点をいくつか挙げてみると①人から「軽く見られる」②「積極ミスをする」③「情報を提供してしまう」。サラリーマンは自己主張が大事だから、寡黙でいることは不利に働くこともあるが、多弁は避けた方が良い。「寡黙の人は最善の人である」とシェークスピアも言っている。逆に人の話はよく聞くべきだ。天才棋士の羽生善治はこう言っている。「三流は人のはなしを聞かない。二流は人の話を聞く。一流は人の話を聞いて実行する。超一流は人の話を聞いて工夫する」。徹底的に人の話を聞くことだ。
強者は、弱みをついて金儲けしている
某サイトに「人の弱みに付け込むタイプをどう思いますか?」という質問があり、何人かが否定的、肯定的に答えていた。ただ、いわゆる「ベストアンサー」は以下のごとくだった。「知恵を悪い方に使うタイプだと思います。個人的にはそういう人を『悪人』だと思っています。賢く、知恵を生かせる方法を知っているのに、それを悪いほうに使う。性質としていちばんタチが悪いです」これが世間の最大公約数の意見だろう。だが、肯定的な意見には次のようなものがあった。「それが世の中だと思います。正々堂々のスポーツさえ、バッターの不得手なボールを投げ、バッターは野手のいないところへ打ちます。剣道もいかに隙を突くかが最大の心得です。付け込むのは卑怯とか言って、自分の弱点を放置していれば、何度でも、損をする人生になると思います」
テレビのCMを見ていると、髪質が変わるシャンプー、薄毛対策、健康食品、美容整形などほとんどと言っていいほど、消費者の弱みにつけこんだ商品やサービスばかり。それだけ自分のコンプレックスを改善したいという欲求は購買意欲となるから仕方ない面もあるが、あまり踊らされないように注意しなきゃと思うこともある。
人生における常とも言える事柄を著者なりの正義で分析。教訓となる言葉も多く載っていて、「世の中うまくいかないよな」と嘆く人にとっては脳天を刺す劇薬にもなる書籍。
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