日本の明日を左右する重大問題を「経済・金融のこれから」「産業・企業はこれからどうなる」「政治・国債情勢・世界経済はこれからどうなる」という3つのチャプター21の論点で各分野の日経編集委員が大胆予測。伸び悩む日本経済が成長するための秘策はあるか?次世代を牽引する企業・産業はどこから生まれるのか?不透明さを増す国際情勢に対し何を備えるべきか?この本を読めば日本の未来が見えてくる。
60年で最大の試練、「英国なきEU」は再起できるか
16年6月23日、英国の有権者は国民投票で1973年以来43年加わったEUを離脱するという審判を下した。投票結果が伝わった24日は「暗黒の金曜日」とも言われる。EU残留派が優位という直前の大方の予想を裏切る驚きの衝撃波は、震源地の英国だけでなく、欧州そして世界中に瞬時に広がった。英国の通貨ポンドは「EU離脱確実」の一報だけで対ドルで一気に10%下落し、この日ポンド相場は実に31年ぶりの安値に沈んだ。
EUのもと欧州統合が進んでも一般市民の生活向上や雇用の増加といった実感を得られず、グローバル化に反感を抱く人々が増えた。結果、フランスでは極右の「国民戦線」が女性のマリーヌ・ルペン党首の元強い支持を集め、17年4、5月の大統領選では彼女が与党・社会党と野党・共和党の候補のうち弱いほうを破って決選投票に残るのではないかという観測まである。同じくオランダの移民排斥を訴える極右政党、自由党のウィルダース党首も17年3月の総選挙で与党への返り咲きを狙っている。イタリアでも反EUの政治団体「五つ星運動」は16年にローマとトリノという代表的な都市で市長のポストを得て、国政へも影響力を強めている。ポピュリズム(大衆迎合主義)が広がる危険が非常に大きくなったと危機感をあらわのするオランド仏大統領。主要国で続く重要選挙でEUはどこへ向かうのか。EUの中にいることがどんな恩恵をもたらすのかを丁寧に説明し、市民の厳しい状況に向き合って改善策を打ち出せるか。地味だが粘り強い作業が、EUの信頼回復には不可欠だ。
世界的な企業は新興国で生まれる
社会に役立つことで成長するのが新しい資本主義の本流だとすれば、世界的な企業はこれから新興国で生まれる可能性がある。社会的な問題を抱えているからこそ、これまでにないビジネスモデルや技術が生まれるからだ。
ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)が今、入学した学生にまず教えている企業のケース・スタディーが、インドのナラヤナ・ヘルス病院グループだ。特徴はその医療費の安さ。心臓移植の費用は約28万円相当とアメリカの数パーセントに抑え、貧しい人にも健康に暮らす機会を提供。富裕層にはサービスを手厚くすることでたくさん料金を徴収し、企業全体の収益性を確保する仕組み。こういった「ベネフィット・コーポレーション(営利と社会貢献とを両立する株式会社)」が急増している。
南シナ海をめぐる攻防
南シナ海には中国とフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが、それぞれ重複して領有権を主張する島々と海域がある。長年にわたり係争が続いてきたが、中国が岩礁を埋め立てて人工島と軍事拠点の建設を強行し、自体はもはや穏便な話し合いでは解決できない状況に至った。
フィリピンは国際法による解決を求め、13年1月に中国をオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴し16年7月12日にフィリピンの主張を全面的に認める形で判決が下された。しかし中国はASEAN外相会議での声明に「ハーグ判決」評価の盛り込みを阻止するため、王毅外相がASEANメンバー国と次々と2国間会合を設けて、外交工作を繰り広げた。外交戦の結果は中国の勝利と言ってよい。共同声明の文面に「仲裁裁判」の文字はなかった。ASEANには国力や経済力の異なる加盟国を平等に扱うため、全会一致のコンセンサス方式で意思決定する仕組みを取っているため。中国からの投資や援助が頼みの綱のカンボジアが中国のいいなりになったのだ。
これから4年でどれだけ子育て支援策を充実できるかがカギ
日本の人口は30年には今より1000万人減って、1億1662万人になる。48年にはついに1億人を割り込み、60年には8674万人まで減るとしている。人口を年少(0〜14歳)、生産年齢(15〜64歳)、老年(65歳以上)に分けると、現時点(16年7月)ではそれぞれ、13%、60%、27%となっている。これが60年には9%、51%、40%になると見込まれる。人口そのものが減るうえに、特に若い人たちが減り、高齢者が増える。
日本の未来を語るうえで必ず出てくるのが少子化問題。2020年をめどに人口急減、超高齢化のトレンドを変えていくため「子供が欲しいなら躊躇することはない」と思える社会ができていなければ、人口減少は免れないだろう。そうなってくると人口の維持の観点から移民の受け入れなども視野に入れていかなければならない。具体的にはIT技術者や高度専門技能を持った外国人や人出不足が深刻な介護従事者などに限る考えだ。まずは痛みは伴うが財源を確保し、子育て支援を大幅に拡充し、男女共に働きやすい環境を整備。これまでの高齢者の概念を捨て、超高齢化社会に沿った社会保障制度の整備を進める。そうすれば人口1億人に固執せずとも意外に暮らしやすい世の中が待っているかも。
Chapter.2では「産業・企業はこれからどうなる」Chapter.3では「政治・国際情勢・世界経済はこれからどうなる」と題して複数の論考が展開される。近い将来日本は世界はどうなっていくのかが分かりやすく解説されていますので是非読んでみて欲しい。
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