会社を託され継いで経営者になるということはどういうことか?次世代リーダーが身につけるべき「覚悟」と「心得」、全ての次世代経営者に読んで欲しい一冊。
「上から目線」の傲慢な後継者に社員はついてこない
後継者だからといって偉ぶり、人を動かすなどというのは論外だ。そんな態度で接していては摩擦が起きるからだ。後継者だからこそ、誰にでも「です・ます」で会話し、呼び捨てにするようなこともなく、丁寧な言葉のやり取りを心がける。「言葉は立場を表す重要な役割を持つ」と認識して、細心の注意を払い使ってほしい。
ではこういった、人がついてこない後継者にはいったい何が足りないのだろうか。それは「社員を見る目」である。「部下は三日で上司を知る。上司は三年で部下を知る」という言葉があるが、上の立場の人はそれほど社員のことを見ていない。いや、見ようとしていないのだ。
わかりやすく説明しよう。「頑張って頑張って、上位を目指すほど、上が見えなくなる」といった経験したことはないだろうか。特にスポーツといったものは、記録で順位が見えるのでわかりやすいだろう。ある程度頑張れば、自分の順位がはっきりしてくる。そのときに、さらに上があることがわかると、愕然とするのである。学生時代から何かに真剣に打ち込んだことがある方なら、理解できる感覚だろう。
自分の実力がわかり、自分より上の人がどのくらいいるのかを知ると、少しでもそこに近づこうと努力する。そのため、順位が下の人のほうが、上の人をよく見るようになる。相手のすごい点、優れている点を探して、それが自分にもできるようにと、必死に学ぼうとするわけだ。
逆に「○○さんに、これおすすめです」と言っても、「私はもう完璧です。それは必要ないです」と返事をしてくる人ほど、そういったことができていないものだ。自分のほうが相手より上なのだから、自分より下の人から学ぶようなことはないと最初から高をくくっている。どんな立場の人であっても、いろいろな話を聞いたりすればするほど、本来は新たな発見や学ぶべきものが見えてくるものなのだ。
継承によって部下となった人たちに接する態度は大事。もちろん経験から何から仕事力が上の人ばかりだろうから、きちんとそこは理解して、学ぶ姿勢、低姿勢を維持するべき。本来のルートとは違う継承によって得た地位だということを理解することが大事。
社長になった時、最低三年は前社長の考えを踏襲する
「社長になったら会社をドラスティックに変えてやろう」と考えている後継者の方がけっこう多い。戦後すぐに創業した会社にとっては、会社を取り巻く社会環境は激しく変わってきた。女性の社会進出にともない、産休や育休なども拡充してきたし、最近では男性社員も育休をとるようになってきた。
働き方自体も、昔は朝早くから遅くまで働くことが美徳とされる傾向があったが、それも変わりつつある。会社としても法令順守や、社会的責任ということが問いただされるようになってきた。
そういった時代の変革のなかで、それが「あたりまえ」として育った後継者のなかには、創業者がつくった理念などがときに古臭く感じることがあるのだろう。わからないでもない。私も本書のなかで「自分が社長になるまで我慢しなさい」と何度も書いてきた。「自分が社長になったら、ここと、ここを変えて……」などと、虎視眈々とそのときのことを考えている方もいるだろう。
しかし、社長になったとたんに理念などを変えることは完全にアウトだ。
最低三年は前社長の考えや、やり方というのを踏襲すべきだと私は考えている。
三年という数字に深い意味はないが、後継者が社長に就任して「なじむ」のにそのくらいの期間がかかるだろうということだ。これは人によって差もあるので、三年から五年くらいとみてほしい。急に変えようとすると社員から拒否反応が出ることがある。その間、焦らずどっしりとかまえていてもらいたい。
創業者が採用した社員というのは、創業者の社員だ。しかし、三年から五年経つことによって社員も当然、役職が変わったり後輩が入ったりして立場が変わってくるだろう。給料も当然変わってくる。辞令を出したり、給料や賞与の査定をしたりすることによって、自然と後継者の社長としての立場が確立してくるものなのだ。
自分流、自分のカラーを出したくなる気持ちはわかるが、少しの間は我慢すること。あなたの部下になった社員たちは前社長の元働いてきた社員。あなたが急に出てきてどうこうして良いというものではありません。前社長の方針をしばらくは維持してその後少しずつ自身のカラーを出していくこと。あまりに急激に変えてしまうと離反者が出ないとも限りません。
会社の継いで社長になる際に注意しておいた方が良い事象を理由も含めて解説。引き継ぎで失敗しないためにもぜひ覚えておきたいことばかり。
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