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格差は心を壊す 比較という呪縛

格差社会における「他人の目」。この呪縛から逃れるために下流も上流も躍起になっていて息苦しい世の中に。イギリスの格差研究の第一人者によるレポート。

不平等は、万人に影響する大問題

多くの社会問題は、社会階層の上層部よりも下層部で悪化する傾向がある。それは各階層の特性を反映しているという説が、広く信じられている。有能で体力のある人は社会階層の階段を早く上れるが、反対に病弱な人は貧困と飢えへの転落が早まるという考え方だ。しかし不平等の現実は、こうした通説に根底から疑問を投げかけている。適者が社会の階段を上昇し不適者が下降するという具合に、社会が人間を振り分けているのだとすれば、社会の底辺で生じる不健康問題の責任はその社会の振り分け方にある。人々が社会階層の階段を上下に移動したとしても、社会全体では特定の属性を持つ人々の総数が変わることはない。たとえば毛髪の色が金髪か黒髪かによって、社会階層間の移動が生じるとしよう。その場合、もちろん髪の毛の色による社会の階層化が進むが、金髪の人や黒髪の人の割合が変化することはない。もし体が病弱か、性格が凶暴かという基準で人々の振り分けが進んだとしても、結果は同じである。ところが不平等の度合いが変化すれば、各階層の社会問題の深刻さも変わってくる。所得格差の拡大はすべての階層で問題をこじらせるだけでなく、その影響は富裕層よりも貧困層で強く現れる。そのために階層ごとの深刻度を示す傾斜カーブは険しくなる。つまり、階層間で病気や暴力犯罪、とりわけ児童の算数・読み書き能力に格差が出てくるのは、社会の振り分けによる結果だけではない。何か別の要因が働いているに違いない。

僕らの生きている時代は特に格差が見受けられなかった一億総中流時代からの格差拡大時代への変換期と言えるだろう。高度な教育を受ける子供がいる一方、そうした教育を受けられないと社会から爪弾きにされる可能性もあるそんな時代。セーフティネットが機能せずに、自然災害やコロナウイルスのような病原体の猛威などにより分断される事も。誰もが平等にとはいかない世の中で皆生きるのに必死だ。

アドラー教授の教え──人間は劣等感の動物

世の中には汚染物質や発ガン性物質が存在し、病気の発生を抑えるためにはそれらを除去しなければならないという考え方がある。私たち全員がそれを受け入れているわけではないが、感情や心理に影響する環境でその有害な部分の改善を図るという考えに違和感を覚える人も多いだろう。しかし、引きこもりを悪化させる原因が私たちの社会生活や社会福祉に重大な損害をもたらすのであれば、私たちが呼吸する大気と同じくらいに、政治的、社会的な注目をもっと集めてもよいはずだ。私たちは社会的な動物である。他人への配慮や、他人を傷つける恐れのある行為を避けようとする能力は、私たちの生きる術である。しかし周囲へのごく当たり前の思いやりであっても、それが日常生活で当たり前となり、その程度も度が過ぎると、思わぬ副作用をもたらす。そうした事態が重なれば、ささいなやり取りであっても過剰に反応してしまう。つまり外見的に見れば、人間関係に過敏になって自分の殻に閉じこもるようになる。私たちはまた、社会的な地位という虚飾によって自分自身の不安感をできるだけ覆い隠そうとする。そうした願望に似た事例を数限りなく見てきた。先進国の多くでは、自信喪失や不安感が蔓延し臨界点を超えてしまった結果、人々の幸福感や生活の満足感に重大な支障が生じている。これから議論するように、解決策は私たち全員が精神的にもっと強くなることではなく、そうした深刻な事態をもたらしている社会的な要因を突き止めて取り除くことである。

僕は長いこと半引きこもりの生活をおくっているが、それで不便を感じたことはない。コロナウイルスで外出自粛が続く中、趣味の読書に興じる言い訳ができてかえって元気に(笑)

自分の身分や地位をわきまえる能力

人前で立派なことをやり遂げたとき、尊敬と注目を集めたときに、私たちは誇りを感じる。他人からバカにされたときに、劣等感を感じたときに、自信を傷つけられたときに、恥ずかしいと感じる。面目を失い、辱めを受ければ、暴力に訴える。そうすることで屈辱から自分を守ろうとしている。 DBS のさまざまな側面──支配動機、支配的行動、権力、誇り、恥など──に関しては、計測が可能だ。計測によって、 DBS が心の病や不平等にどのようにかかわっているかを分析することができる。就学前の幼児は、他の子供とどのように接しているか、もめ事において攻撃的か服従的かなどで点数を付けることにより計測が可能になる。さらに唾液や血液に含まれるテストステロン(男性ホルモンの一種)の計測値は、支配動機や支配行動に関するその他の計測値と相関性が高い。たとえば、刑務所に収監されている約 700 人の男性を調べた研究によれば、暴力犯罪の前歴がある囚人は経済犯罪の囚人に比べてテストステロンの数値が高い。テストステロンの数値と支配の関係は、次の研究でも裏付けられている。心理学実験では、テストステロン値の低い人ほど一時的にせよ高い地位の役職に就いた場合、ストレスの兆候が現れる。ドーパミン、セロトニン、コルチゾールなどのホルモンは、感情的な報奨システムやストレス反応と密接に関連しているが、同時に権力や恥辱を喚起する社会的な挫折──あらゆる対立場面での敗北──とも関係が深い。

他人からどのような評価を受けるかによって、その人の後の行動に影響する。格差によってそれが変わるとしたらそれは社会悪となる事も。

人からの評価が気になるのは皆同じ、劣等感も優越感も人と比べなければ生まれない感情だ。不平等な世の中ではそれがさらに加速。格差は心を壊す本当にその通りだと思います。ちょっとした劣等感から病気になるほどのそれは社会に影を落とす。

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