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自傷行為の理解と援助|松本 俊彦

若者たちはなぜ自傷行為をするのか―自傷行為とは、「身体の痛み」で「心の痛み」にフタをすること。彼らが切っているのは皮膚だけではない。生き延びるために、つらい感情を意識から切り離しているのだ…。自傷行為の正しい理解と対応について具体的な提案をする実践書。

リストカット経験の告白

最近では、アイドルタレントによるリストカット経験の告白といったニュースもときどき耳にします。かつてであれば、こうした告白自体は芸能人として致命的なものであり、何としてでも隠さなければならない過去であったように思いますが、どうやら今はそうではないようです。海外では、摂食障害にも罹患していたことでも知られるダイアナ妃にはじまり、アンジェリーナ・ジョリーやジョニー・デップといった、多くの羨望のまなざしを集める輝かしいセレブリティが、自らの自傷経験を告白しています。こうした告白は、好奇心から自傷行為を試みる若者を増加させる可能性がある一方で、隠れて自傷行為を繰り返している若者に対しては、「自分一人だけではないんだ」という安堵感と、「自分にもいろいろなチャンスがある」という希望を与える可能性もあるでしょう。

自傷行為を行なった経験がある人の割合は1割程度だという。だとしたら結構多いと思うか少ないととるか?僕も中学生の時、熱したナイフで腕に火傷跡をつけたことがある。リストカットではないのだがこれも自傷行為の一つだという。仲間への通過儀礼としての根性焼きに似たものか。セレブの自傷経験の告白がその認知度をあげているようだ。

薬物乱用者の言い分

若い薬物乱用者からよく、例の言葉で反論されたものでした。「自分の身体が傷つくだけで人に迷惑をかけるわけじゃないから、別にクスリ使ったっていいじゃないですか。俺はいつ死んでもいいと思っているし、どうなってもいいと思っている」。私は言葉を失い、ただ唖然としたことを、いまでも覚えています。もちろん、シンナーや覚せい剤の乱用による後遺症を抱えた人が、深刻な精神病状態において通り魔殺人を起こす、といった事件が現実に起こっている以上、「誰にも迷惑をかけない」ということはできません。しかし、彼らがいいたいのは、そういうことではなかったのだと思います。そうではなくて、「薬物乱用は、自分を傷つける方法の1つ」であり、自分は今まさにその方法を使って「ゆっくりと自殺」を試みている、ということではないでしょうか?実際、若い薬物乱用者の多くが、幼少時から養育者からの暴力や養育放棄、あるいは学校でのいじめにさらされながら、社会への敵意を募らせながら生き延びています。なかには、悪い仲間に入ることでようやくこれ以上の被害を受けないですむ居場所を得た者もいます。そのような生活のなかで、薬物がつらい感情を麻痺させてくれ、「決して自分を裏切らない」ものとして乱用されている場合もあるのです。ですから、「自分の身体が傷つくだけで人に迷惑をかけるわけじゃない」という彼らの居直りも、共感できないにしても、「そういう気持ちにもなるだろうな」と理解することはできます。

薬物乱用者の言い分はこうだ。誰にも迷惑かけてないと。しかし、その薬物の売り上げが反社会勢力の資金源になっていたり、その家族には迷惑がかかっている場合が多い。薬物乱用は自分を傷つける自傷行為の方法の一つであるとすると、やはりいろんなところで迷惑がかかっている。僕は精神科で処方された薬を大量に服薬して救急搬送されたことがある。いわゆるオーバードーズだ。家族には心配かけるし、救急搬送されて胃洗浄すればお金もしこたま取られる。自分中心に物事を考えると周りが見えなくなるいい例だ。

自傷行為の常習性

自傷行為の「鎮痛」効果には、麻薬と同様、「耐性」を生じやすいという性質があります。当初は週に1回自傷すれば不快感情に対処できていたものが、次第にその効果が薄れ、3日に1回、毎日、日に数回という具合に、徐々にその頻度を増やさなければならなくなるのです。しかも「鎮痛」効果を維持するためには、より多くの場所に、様々な方法で自分を傷つける必要があります。そのため、手首や腕だけでは足りなくなり、他の身体部位を切ったり、さらには切るだけではなく頭を壁に打ちつけたり、火のついたタバコを皮膚に押しつけるようになります。なかには、より深く切らなければならなくなり、稀ではありますが「意図せず」致死性の高い身体損傷におよんでしまう場合もあり得ます。

精神科に入院すると自傷行為を繰り返す患者が入院してくることがある。病院にとっては自傷癖のある患者は受け入れを断って強制退院させるところもあるようです。僕が入院中も発作的にCDを割ったことがあるのですが、ゴミ箱からその破片が発見されるや否や回収(鋭い刃物のような形状だったため)されて僕は独房と呼ばれている保護室に入れられれしまった。

全体の1割もいる自傷行為の経験者。身近なものに感じてもらえれば良いと思います。リストカットする人は死なないとか言われることもありますが、エスカレートすれば自殺に至ることもあるので注視してあげる必要があります。自傷行為のあれやこれやがわかる本。

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