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「脳はなぜ都合よく記憶するのか」記憶ハッカーがおくる人が忘れ、覚える記憶の原理

記憶の原理を説明し、人が忘れ、覚える、生物的理由をを考えていく。ニセの記憶を植えつける――そんな物騒な実験を行うことで有名な著者。なぜ、あり得ない出来事を記憶するのか?不正確な記憶で世界を解釈するのか?脳は間違って記憶したがるのか?サブリミナルにハマるのか?「記憶ハッカー」と話題の研究者による記憶のメカニズムの解明本。

記憶を思い出しやすくする方法

研究者たちが発見したのは、被験者たちに覚える時間と思い出す時間に同じ状態を体験させると、成績が著しく向上することだ。つまり、単語リストを覚える直前に苦痛を味わった人は、その情報を思い出す直前にふたたび苦痛を味わわせると成績が向上したのだ。同じように、覚える前に気持ちの良い温水に手を入れた人は、ふたたび温水に手を入れるだけで、記憶テストの成績が向上した。

苦痛や温水といった方法が現実的ではない?ならば勉強前にいつもコーヒーを飲み、試験の直前にコーヒーを飲むなんていうのはいかがだろう。僕が働いていた頃、たちの悪い常連でガラムというタバコを吸っている客がいた。通称〝ガラム〟。先日、そのタバコの匂いと似た香水(TOM FORD の BLACK ORCHID)を買った。香水の匂いとその〝ガラム〟とが紐付けられ汚されたトイレ掃除や鏡の裏に大量のトイレットペーパーを詰め込まれた経験。対戦ゲームのバグを利用した戦術に対するクレームなどを思い出した。

古い私はのろまでも新しい私は超有能!

行事を準備したり、1日の予定を立てたりするときに、ひどく間違った時間評価をする友人(あるいは家族や同僚)は誰にでもいる。「五分でそっちへ行く!」という人もことだ。そういう人たちは「楽観的」に時間評価しているといっていいだろう。(中略)過去の経験を当てはめる能力と「展望的」記憶ーー過去の経験に基づき未来を計画する能力ーーのどちらも劣っているからなのかもしれない。

特定の課題を被験者に与え、自分ならどれくらいかかるか、他人ならどれくらいかかるか評価する。人は大抵楽観的に評価し時間に間に合わなかったという過去の失敗は軽視しがちで、課題に必要な時間を短く見積もる。言い換えれば未来の自分は課題を素早く片付けるスーパーヒーローになると信じている。

あの仕事は昼までに片付け、有意義なランチミーティングをする。メールは全て処理し、歯医者へ行き、ヨガのクラスへ行き、五品のディナーを作り、家中を掃除し、友人と飲みに出かけ、帰宅後にはすばらしいセックスをしたあと、ぐっすり眠る。これを一日のうち残らずやり終える。

完璧な一日、これを毎日行うには相当な時間管理が必要だ。課題にかかる時間は正しく評価できていたとしても、一つのタスクを終えた後のスイッチングの時間(休憩など)が考えられていない。それがこの種の予定がうまく機能しない理由の一つだ。

洗脳の仕組み

私はいまだに「洗脳」と呼ぶことを躊躇し、より一般的な「感化」という言葉を使いたい。日常生活には、本人が気づかないうちに、その考えや行動を変えてしまう例はたくさんあるらしい。プロパガンダ、つまり人の考え方や行動に影響を及ぼすことを目的とした情報の選択的掲示は、どこにでも見られる。このソフトドリンクを買おう。そうすれば良い気分になれ、友達も集まってくる。この政治家に投票しよう。そうすれば何もかもよくなる。軍に入隊しよう。スリルがあって楽しいぞ。

このようなメディアはどこにでもあり日々の決断に影響を及ぼす可能性がある。しかしこういった状況下でプロパガンダが自分の意見を変えていることには気づかないものの、自分が目にしていることはわかっている。これはスプラリミナル広告と呼ばれる人が積極的に知覚する広告だ。テレビCMや店内のディスプレイーー人は馬鹿ではない。こういったものに洗脳と同じ効果があるかもしれないが、人目につかないように隠されることはない。また人に影響を及ぼすとされる睡眠学習、催眠術、サブリミナルメッセージはどれも非常によく考えられた、創造性溢れるフィクションであると伝えている。

異人種の顔はなぜ見分けられないのか

人種もまた、人を特定する能力に影響を及ぼす。あなたがアフリカ系で、東アジア系の人の犯罪現場を目撃したなら、あなたの目撃証言が正しいことを祈ろう。どんな人種の組み合わせでも同じことが言えるーーヨーロッパ系。アフリカ系、東アジア系、インド系、プエルトリコ系どれも同じだ。自分とは違う人種の人を特定するのは、たいていのひちは苦手で、この現象をORB(own-race bias)、つまり「人種バイアス」と呼ぶ。

顔を見るとき、特定の特徴ばかりに注意を向けてしまうことがORBを生じさせる主たる原因だ。髪の色や背の高さにばらつきの少ない人種ではこれを符号化しても役に立たない。

後半ではトラウマについてその原因や、記憶がすり替わる代理トラウマなど興味深い記憶にまつわるエビデンスを紹介。さらにソーシャルメディア時代の「トランザクティブ・メモリ(集合的に形成され、更新され、おそらく何よりもまず保存される記憶)」などにも言及している。

私たちの過去は作り話であり、私たちがなんとか確信を持てるのは、現在起きていることだけだ。これを知っていれば、過去を重視しすぎないですむ。そして、人生最高の時は今、記憶が意味するものも今であることを受け入れられるようになる。

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