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「続・下流老人 一億総疲弊社会の到来」一億総活躍社会とは一億総疲弊社会ではないのか?

高齢者中心の社会を目前に控えた今、高齢者のイメージや役割は大きな変革期を迎えている。かつて高齢者は豊かだった。退職後は、家族に囲まれ、孫の面倒を見ながら、ある程度の退職金や貯蓄、十分ではないにせよ年金が支給され、生活に心配することもなく、穏やかでよとりある時間を謳歌していた。これからは老後も死ぬまで働くことが求められる社会へ、高校生や大学生がメインだったコンビニのアルバイトを見ても年配者が目につく時代。一億総活躍社会とは一億総疲弊社会ではないのか?これから老後を迎える人たちへ注意喚起する書籍。

高齢期の収入は下がる一方

生活困窮者を支援するために私が運営しているNPO法人「ほっとプラス」にも、消費者金融から借金をしなければ食べていけず、いよいよ首が回らなくなってしまったという人が相談にくる。彼らの特徴は、本当にギリギリになるまで「自分の力だけでなんとかしよう」と思いつめてしまうことだ。

せっかく生活保護という制度があるのに申請せず消費者金融などから借金を続ける高齢者が増えている。これは高齢者特有の価値観「働かざる者食うべからず」とか生活保護など「施しを受けるくらいなら死んだ方がマシだ」などという「恥の意識(スティグマ感)」を強く持っている。生活保護を生存のための権利としてもっと定着させるべきだと思う。

内閣府の「平成28年度高齢社会白書」によると、65歳以上の世帯の平均貯蓄額は2499万円で、全世帯平均(いずれも2人世帯)の約1.4倍の額を保有しているという。しかしこれはあくまで平均値。多額の貯蓄を持つ一部の富裕層が平均をグッとあげているのだ。中央値はこれよりも大幅に低いと考えられる。2人以上の高齢者世帯に占める低貯蓄(600万円未満)世帯の割合の推移を見てみる。すると2003年には19.8%でそれ以降、年々増加傾向にある。2015年には25.3%までに増加している。実に4人に1人が貧困(ここでは貯蓄保有世帯の中央値の半分未満)という結果に。

まさかの出来事で一気に下流老人へ

貧困とみなされる所得ラインは「相対的貧困(全人口の所得の中央値の半分未満)」という基準で明確に求められるが、「どれだけ収入や貯蓄があれば生活の心配がないか」は、個人の生活水準によっても差が大きく、かなりあいまいである。実際、私のとことに相談に来られる方も、「まさか自分が生活に困るとは思わなかった」とおっしゃる方が非常に多い。

多くの人にとって、貧困とは、「想定外」の事態であり、まさか自分が「下流老人」になるとは思っていない。病気や怪我、事故といったアクシデントがトリガーとなって容易に、そして突然に現実のものとなる貧困。「お金がなくともなんとかなる」というのは単なる希望的観測でしかないことを自覚しておかなければならない。例を挙げると、娘が精神疾患を患い会社を退職し実家に戻ってきた。一方、80代の母親は認知症を発症しており、介護費用を賄うため70代の父親が新聞配達をして生活費を稼いでいたがその父も病気を患い歩くことも困難に娘は精神科で治療を受けながら両親の介護を続けたが次第に絶望感を深め一家心中を決意。こんなシナリオがあなたにも待っているかも。

公助の働きが弱い日本社会

海外との違いについて一例をあげよう。生活を維持する上で、公助の働きが弱いのが日本の特徴なのに対し、ヨーロッパ各国では、すでに住宅や教育、介護、医療、保育、通信など、生きていくうえで欠かせないインフラについては、ほとんどが無償、あるいは低負担で利用できる。

よく、イタリア人やフランス人が長いバカンスを楽しむのに対し、夏休みも取らず働く日本人を引き合いに出し「日本人は真面目な国民である」と揶揄される。これは国民性の問題でもなんでもなく、夏休みも取れないほど働かなくては生活を維持できないという、社会保障の脆弱性の問題だ。毎月収入の20〜30%も家賃や住宅ローンに持って行かれ、少なくない大学生が卒業とともに300万円〜400万円の借金(貸与型奨学金)を背負わされる。

現金収入がなければ暮らしていけない賃金や労働依存の構造は、生活からゆとりを奪っていく。住宅や教育、介護、医療など生活に必要不可欠なサービスの商品化が進めば、サービスを受けるため借金をしなければならず、ローンの返済のために働き続けなくてはならないストレスの強い社会へと追い込まれていくだろう。「一億総活躍社会」というと聞こえはいいが、その達成のためには「生涯現役」の実現、推進、強化が必須である。要するにこれからは、高齢者が死ぬまで働き続けなければ社会を維持できない時代に入るということだ。

日本では高齢者も働きすぎ

欧米諸国と比較してみよう。OECDの「高齢者の就業率の国際比較」によれば、平成25年時点で高齢者の就業率は、フランスで2.2%、ドイツで5.4%、イギリスで9.5%、アメリカで17.7%となっている。対して日本は、20.1%で、フランスの9倍以上だ。ここから日本人の高齢者がいかに「働きすぎ」かがわかるだろう。

アメリカが17.7%という割合を見ると、これからは日本を先駆けとして先進国では高齢の労働力も取り込んで行かなければならないケースも増えていくのかもしれない。

ではどうすれば、そのような社会構造を是正できるか?僕はかねてから言っているように強い累進課税で再分配の機能を高めるのが良いと思う。税を重くすると経済成長が鈍化するという意見もあるが、そういった統計データはない。金持ちの有権者が税金を安くとどめたいというだけのこと。まだ正式に採用している国はないがベーシックインカムなんかも検討する余地があると思う。老後に不安を抱える人は多い。僕もその一人だがどんなリスクが降りかかってくるか、その時どのような行動をとればいいのか考えさせられる書籍だった。

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