ＡＩ時代対応大人の知的習慣｜齋藤孝｜51Blog｜「複合力」こそが究極の効率化である

ＡＩ時代対応大人の知的習慣｜齋藤孝｜「複合力」こそが究極の効率化である

2023年7月21日

人生100年時代、無駄にしていい時間なんてない！【読書】【説明】【雑談】【勉強】【創作】etc…一度に一つずつのことしかやらないのでは勿体無い。複合的な習慣を身につけ新時代を乗り切る万能人を作り出す驚きのインプット＆アウトプット術24選！

読書で頭がよくなる理由

ここで、ちょっと本題とはずれますが、読書の意義について述べたいと思います。

本離れ、読書離れが言われて久しい昨今ですが、大学生で一日の読書時間が「０」という人の割合が 48％というデータが出ました（全国大学生活共同組合連合会調べ、２０１９年）。大学生の約半数が、一日に一分たりとも本を読まないのです。私からしたら、それで大学生と言えるのですか？　と聞きたいくらいです。

これは、一日の中でほとんど大脳の前頭前野を鍛えていないということになります。ＡＩが進化し続けている中で、自分の脳を鍛えないでいていいのだろうかと心配になります。「読書は脳をどのように変えるのか？」という副題のついた、『プルーストとイカ』（インターシフト）という本があります。この本の中に、次のような記述があります。

流暢に読解する読み手の脳は今まさに、進化した文字を読む脳の最も重要な才能を手に入れようとしている。時間である。解読プロセスをほぼ自動化させてしまった若い流暢な脳は、隠喩、推論、類推、情動というバックグラウンドを経験から得た知識と統合させて、そのたびに時間を一ミリ秒ずつ縮めることを学ぶ。

読書をしていると、脳は、読む時間を短くして速く理解しようとする。脳の中ではそういう試みをするそうなのです。

そう考えると、読書をし続けることで、頭のいい状態が維持されるということになります。その頭の良さが基盤となって、自分の目の前の状況に対して前向きな取り組み方ができるようになる。

つまり、読書し続けている人の脳は、十分にウォーミングアップができている状態、いつでも試合に出ろと言われたらすぐに出られる状態にあるのです。

読書し続けていない人は、体が固まっていて、試合に出た途端に肉離れを起こすような状態です。

僕も例の漏れず学生時代は読書量ゼロの人間でした。社会人になって必要に駆られ本を読むようになってからは読書習慣がつきましたが、それまでは本に対するアレルギーが。読書の魅力は人の経験を追体験できること。それに気づき本を読むことが楽しくなりました。それ以来1日1冊ペースで本を読むように。何がどう転ぶかわかりませんね（笑）

「知的な人生」は自分で手に入れる

人間の大脳には前頭前野という部位があります。ここは、人間を人間たらしめる中枢であると言われています。動物にも記憶力や瞬間的な判断力はありますが、人間の前頭前野はかなり高度な働きをします。

「複合力」を活かすと、この前頭前野がしっかり働き、知的な脳が維持できます。

そして、知的な脳を使い続けていると、世の中で理解できるものがこんなに広がるんだという実感が持てます。つまり、知的であることによって人生の退屈さ、無味乾燥な人生から離れ、豊かさを享受できるようになるのです。

若いときは仕事が忙しくて、とにかく仕事をこなすことが第一。仕事をしているだけでゆうに一日は終わりますし、時間の使い方としてはそれで十分かもしれません。　ですが、人生も後半戦に入ってくると、仕事量が減ってくることがあります。そんなときにこそ、文化に触れる時間を増やしてほしいのです。

生活でも単純作業でも、あるいは仕事でも、その中に一つ文化的なものが加わることによって、人生が知的で豊かなものになっていきます。

憲法 25 条には、「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」があると規定されています。この「文化的」は、国に保障してもらうよりも、自らすすんで保障した方がいいのではないかという気がします。　というのも、文化というのは自分でいくらでも取り込むことができるのです。

与えられるのを待つのではなく、自ら取り込みに行く。ですので、それをしていないというのは。文化的な生活を放棄していることになってしまう。

知的で文化的な生活の何がいいかと言うと、人生全体が虚しくならないんですね。

退屈しない、常に知的で文化的であると、満ち足りた気持ちで生活することができます。もっと長くこういう生活を送りたい、もっと時間があってほしいと思うものです。

これは決して焦っているとか欲望にからめとられているということではありません。満ち足りた今がもっと続けばいいということです。

複合力のもたらす知的生活、文化的な生活を送るための土台を作れば満ち足りた生活ができるように。人生全体を虚しいものにしないためにもこのような知的で文化的な生活は役立ちます。

知的習慣をあらためて見直すことでより良い生活を実現します。複合的な習慣は生活を豊かにします。

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