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誰も戦争を教えられない|古市 憲寿|「戦争」と「記憶」の関係を徹底的に歩いて考える!

世界に点在する戦争博物館を巡り、若き社会学者が「戦争」と「記憶」の両側面から足を使って徹底的に考える。

誰も戦争を教えてくれなかった

多くのアメリカ人にとって、第二次世界大戦は「よい戦争」として記憶されている。本土に被害はなかったし、戦時経済で多くのアメリカ人の生活レベルは上がった。多数の犠牲者を出したベトナム戦争と違い、国民を一つにした古き良き時代として懐古されるのだ。

しかし、このアリゾナ・メモリアルのことを調べていくと、それほど簡単な話でもないことがわかった。真珠湾はアメリカにとって非常に重要な意味を持つ場所でありながら、ここに国立のメモリアルが建設されたのは戦後 20 年近くが経ってからのことだった。

記念館は1958年より事業計画がスタートし、1962年の戦没者追悼記念日に開館した。それまで日本軍に沈められた戦艦は、海底に放置されていたのだ。資料館の展示方針をめぐっては、日米和解のメッセージを盛り込むかどうかで議論にもなったという。

結局、日本に対する敵対的なメッセージもないが、友好的でもない、真珠湾攻撃での犠牲に焦点を合わせた博物館が完成した。

パールハーバーをどう扱うか。それはハワイの人々にとって懸念材料であり続けた。ハワイの最大産業は観光業だが、真珠湾記念日を日本バッシングという形で 煽ると、日本からの観光客がハワイを敬遠してしまうのではないかというのだ。一方で真珠湾攻撃から 50 周年にあたる1991年には、日米貿易摩擦が問題になっており、日本バッシングに際して「パールハーバー」という言葉が繰り返し用いられた。

僕が訪れた博物館は、すぐれて政治的な駆け引きの結果として存在した場所だったのだ。

戦争博物館というと広島のものしか見に行った経験がないが日本のそれとは海外では違った展示がなされている事実が興味深かった。気軽に訪れられるエンタメ性を持たせた戦争博物館、やはり国民性か。

アウシュビッツの青空の下で

記念碑のすぐ近くには「テロのトポグラフィー」と呼ばれる博物館がある。かつてゲシュタポと親衛隊(SS) 本部があった場所で、冷戦期はベルリンの壁が仕切る東西ドイツの境界線でもあった。

もともとはドイツ歴史博物館と同じ年、1987年に小さな展示場としてスタートし、2010年には念願だった記念館もオープンした。現在は、ベルリンの壁跡に沿うように設置された屋外展示場と、2階建ての記念館によって構成されていて、ナチス時代のベルリンの様子や、ゲシュタポやSSの行ったことが展示されている。

パネルによる文字と写真の説明が中心で、犠牲者の遺品などの歴史的資料はほとんど展示されていない、まるで教育センターのような施設だ。実際、僕たちが来館した時も、引率者付きで地元の子どもたちが、歴史学習の最中だった。

入場料は無料で、特に屋外展示場は誰でも気軽に立ち寄ることができるため、平日の夕方なのに大勢の人が訪れていた。戦争の歴史を語る施設は、ベルリンの街中に、当たり前に溶け込んでいるのである。

テロのトポグラフィーから歩いて 10 分のところには、ベルリン・ユダヤ博物館がある。かつてベルリン博物館として使われていた建物を引き継いだ施設だ。分館として新しい建物を作るという決定がされ、1992年から工事が始まり、約 10 年をかけ博物館は完成した。

ホロコーストの生存者を両親に持つダニエル・リベスキンド(+1) による斬新なデザインの建物は、完成当時から多くの注目を集めた。ユダヤ人犠牲者の追悼施設、高さ 24 mのホロコーストタワーなど、予算と空間を 潤沢 に使った展示空間が印象的だ。

展示内容はホロコーストに限らず、ユダヤ人の歴史や文化が古代から説明されている。アウシュビッツや歴史博物館と違い、直接的な写真や展示物はほとんどなくて、博物館全体が一つのアート作品のようだった。博物館全体を通じて、とにかくオシャレでスタイリッシュであることが優先されているような気さえした。

博物館全体をアート作品にという発想は日本にはない発想だ。訪れた人に悲惨な光景ばかりアピールする手法よりも来館者は稼げてより戦争が身近に感じられることだろう。

世界の戦争博物館の紹介によっていかに日本が戦争を捉えてきたのかが浮き彫りとなる内容だった。悲惨な戦争は今も各地で紛争という形で残っている。兵器の開発や軍備にかかるお金を経済活動に回すことができればどれだけ豊かになるだろうかといつも思うのだが理想論すぎて笑われるだろうか。

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