宇宙を構成する物質や成り立ちを研究する物理学者がなぜ万物の創造主としての神を信じるのか?非科学的な逆をいく神の存在を考える異色の一冊。しかしこの一冊は科学の根源を考える問いを投げかける書籍でもある。
聖典
キリスト教やユダヤ教、イスラム教には、聖書あるいは聖典というものがあり、神とは何かが文字で記されています。信者たちは幼いころからそれを読み、そらんじて、家族で教会や聖堂に通っては神の存在を確認しています。そうした営みが2000年以上も続いているのです。
多くの日本人にとって、不思議なことでしょう。宇宙のはじまりにはビッグバンがあり、人類は原始的な生物から進化したことは、学校でも教えられています。なのに、なぜ彼らは、そのような神の存在を本気で信じることができるのだろう、と。
しかも、さらに不可解なことには、宇宙や物質のはじまりを研究している物理学者や、生命のはじまりを研究している生命科学者、つまり「神の仕業」とされてきたことを「科学」で説明しようとしている人たちでさえ、多くが神を信じているのです。これはもう、矛盾でしかない、と思われるのではないでしょうか。
宇宙の起源などがわかって来た現在でもいまだに創造主たる神を信じる人がいる不思議。わからないことを神の仕業とするのはなんとなく理解できるが、それが解明された後も神を信じ続ける謎。キリスト教、ユダヤ教やイスラム教には聖書や聖典があり神について記されている。
天動説とビッグバン
ここまでみてきたコペルニクス以来の宇宙論の発展は、いうなれば神の絶対性を次々に制限していった歴史とみなすことができます。平たくいえば、この宇宙から神にしかできない仕事をどんどんなくしていった歴史です。その結果、かろうじて残ったのは、「創世記」に記されているように、天地創造において「最初の光」を与える仕事でした。
アインシュタインの一般相対性理論の解から導かれたルメートルの膨張宇宙論と、その帰結であるビッグバン理論は、時間を逆回しにすれば宇宙には「はじまり」があることを予言するものでもありました。そのため、第5章で述べたように、ルメートル自身は不本意ではありましたが、カトリック教会はビッグバン理論を「神の存在証明」として歓迎する意を示しました。それは、 14 世紀初めに教会が科学によって権威を強化するために、アリストテレスの天動説を教義として採用したことを思い出させるものでした。
そして、 20 世紀にめざましい進歩をとげた宇宙観測は、ついにビッグバン理論の〝証拠〟を見つけ出します。1964年にアメリカのアーノ・ペンジアス(1933~)とロバート・ウィルソン(1936~)が発見した、宇宙背景放射です。それは一言でいうなら「ビッグバンの名残」です。宇宙の最初期の、超高密度で超高温度の状態だったときの電波が、その後の膨張によって引き伸ばされたとみられる波が宇宙のあらゆる方向から観測できたのです。1978年に発見者の二人にノーベル物理学賞が授与されたことで、ビッグバン理論は仮説以上のものと認められることになりました。こうして、アインシュタインがこだわった定常宇宙論はついに終息したのです。しかしそれは皮肉にも、アインシュタインの一般相対性理論の正しさを示すものでもありました。
宇宙背景放射の発見はまた、これまでの歴史とは逆に、科学の新発見が神の存在を支持する方向に働いたという意味ももっていました。しかし、ガリレオやニュートンの時代ならいざ知らず、現代物理学において宇宙創成を神に頼ってよしとする者はいません。科学者の多くは、「宇宙にはじまりがある」などとは考えたくありませんでした。宇宙にはじまりはないとする理論がいくつか提案されましたが、いずれも観測結果から否定されました。
宇宙のはじまりを議論するための、新たなアイデアが求められていました。
宇宙の始まりを議論するのに必要な理論が出揃い神の存在理由がままならなくなりそうなもんだが、それが起こらないのは面白い。時代と共に明らかになってきた宇宙の起源。今では宇宙にはじまりがないと考えるのは逆に異端。観測結果によるそれらの否定が神をも否定することに。
神による創造を科学で否定するはずの科学者がいまだに神を信仰する不思議について取り上げた異色の書籍。人間の限界を超えていくにはやはり神の存在は便利な言い訳なのだろうと思ってしまうのは僕だけではないはず。
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