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科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点|佐倉統|科学の意味を問い直す「新しい科学論」

科学の意味を問い直す新しい科学論。科学は専門家だけのものではない。科学技術との付き合い方を科学を毛嫌いする反知性主義も、過度に信奉する権威的専門家主義者にも提示。

STAP細胞事件

二〇一四年一月二九日、日本の理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(当時。現在は生命機能科学研究センター)は刺激 惹起 性多能性獲得細胞、いわゆるSTAP細胞を発見したという研究成果を記者会見で発表し、一躍、世の注目を集めた。この時点では誰ひとり、これがのちに日本中を巻き込む大スキャンダルになるとは、まったく思っていなかった。

研究の中心人物は、当時理研の研究員だった小保方晴子。若き「リケジョ(理系女子)」が成し遂げた快挙に、彼女がふだんは割烹着で実験をしているという、噓か真か若干怪しげなエピソードも添えられて、記者会見は華やかな雰囲気に包まれていた。

すでに分化した動物の細胞を、弱酸性の溶液にひたすなどの刺激を与えることで未分化の状態に戻すことができるというこの発見は、事実だとすれば再生医療や発生生物学に革命的な進展をもたらすものだった。しかし、記者会見と歩調を合わせて『ネイチャー』に掲載された論文に対し、直後から疑念の声が高まった。

実験結果が再現できない。実験手続きの細部を著者らに確認してもあいまいなままだ。日を追って疑惑は強まり、調査委員会や自己点検検証委員会なども立ち上げられた。さまざまな調査や検証実験が進められたが、結局、論文の中心となった実験結果は 捏造 であり、STAP細胞の存在は確認されないという結論に至った。

一連のごたごたの途中で、論文の共著者のひとりであった、日本の再生生命医科学のエース笹井芳樹が自殺し、研究の中心だった理研の発生・再生科学総合研究センターは解体・改組されるなど、この事件が学界に与えた損失と衝撃は計り知れないものがある。学術全体が、社会からの信頼を失った影響も大きい。

STAP細胞事件に見る研究者の闇。日々研究に明け暮れている研究者が追い込まれる実情を踏まえ理化学研究所の体制そのものにも疑問符がついた事件でもあった。

日本に科学が根づかない理由

一方で、日本が近代化を進めるうえで、科学的合理主義が社会の基盤として必要だと福沢諭吉が喝破したように、もともとの日本社会の駆動原理というか運用規範は、科学的合理主義とは異なるものである(西洋史研究者の阿部謹也は、それを「世間」というキーワードで考察している。これについては後述する)。福沢は、だからこそ、西洋近代科学の思考様式を日本の社会に移植する必要性を認識していた。

程度の差はあれ、日本社会の基層が、どこか科学的合理主義とは異なっているという傾向は、二一世紀の今でもおそらく残っている。だから、科学館や自然誌博物館は、文化的活動を展開する場というよりも、「お勉強」の場として認知され、周囲からもそのように期待されがちだ。子供たちや社会一般の人たちに知識を教え、伝える、まさに「啓蒙活動の場」である。

そのような組織も必要ではあるが、多くの科学コミュニケーターや学芸員たちは、たんに知識を切り売りするだけではなくて、来館者自身が科学技術に関連するさまざまな事柄を自らの問題として受け止め、自分で考えてもらうきっかけづくりの場に科学館をしたいと思っている。そのためにはどうすればいいのだろうというのが、科学コミュニケーション周辺では必ず出てくる話題である。

そして、そうやって悩んでいるのが「コミュニケーター」という、日本語としてはあまりこなれていない肩書き、職種の人たちであることが、この問題の根深さを象徴している。科学も、それを社会に伝える活動も、日本社会から内発的に出てきたものではなく、そこに内在していたものとの接続を明確には意識せずに、輸入されたものなのである。

科学がいまいち日本で根付かないのはなぜか?科学に関する書籍を読むとロマンがあり面白いのにいまいち敬遠して触れてこない日本人。科学を科学者や研究者だけのものにしておくには勿体無い。我々の生活の中にこそ科学を!

科学との付き合い方を教えてくれる良書。毛嫌いしていた人もこれを読めば科学に対するスタンスが変わること請け合い。

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