知力をつくる技術｜船川淳志｜51Blog｜多異変の時代を生き抜くために必要な「ほんものの知力」

知力をつくる技術｜船川淳志｜多異変の時代を生き抜くために必要な「ほんものの知力」

2022年3月21日

今求められているのは本物の知力。それはどのようなものか解説するとともにそれを鍛える方法を提示。総合力が備わればこの「多異変な時代」に立ち向かえ、判断を誤らず自己実現が可能に。

想像力を磨く

自分の住んでいる市や区、あるいは県の人口と対比しながら考える人もいます。そうすると数十万人は超えるだろうと推論しやすくなります。

その先の考えるプロセスでは、シリアの人口はどのくらいいるのだろうか？

そもそも難民の定義とは？

などの知識が必要になってくるかもしれません。knowingだけでは付加価値にはなりませんけれども、いろいろな知識を持っていることは、知力を発揮するために重要なことです。

ただここで私が言いたいのは、物事に対する関心と想像力がなければ「ほんものの知力」は磨かれない、ということです。

もし、皆さんが２０１５年の夏話題になった、トルコの海岸に打ち上げられた悲惨な幼児の画像が右脳に焼き付いていたとしたら、おそらく難民の数字は記憶に残っていることでしょう。そうでなくとも、大変な事態であることは認識されているはずです。

確かに我々は自分のことを中心に考え、特に余裕がないと他人の出来事に関心を持つことができなくなることがあります。しかし、ローマ時代の詩人、プビリウス・テレンティウスのよく知られたことば、「私は人間である。ゆえに、人間に関わることならば何でも自分と無縁のこととは思わない」が示す通り、ほんの少しの想像力があれば、他人の出来事として無関心ではいられないはずです。

ちなみに、国連難民高等弁務官の発表によると、シリアの難民は今、１０００万人にのぼるそうです。私が企業研修の中で「考えるお題」として出し始めた４年前は２００万人台であったと記憶しています。

難民の数を推測するのに必要な情報をかき集め頭の中でそれを根拠にあたりをつける。そんな作業が脳内で行われます。正しい思考からは正しい答えが導き出される。考えるお題として有効なこの難民の数問題はコーチングとかでも使えそう。部下に思考力を備えさせるために、脳のトレーニングに最適です。

日本語から外国語へ変換

ここでちょっとややこしい課題があります。語源や語幹の意味を考える時に、カタカナのままではなく、もとのことばをチェックすることです。例えば、「ニュートリノ」ということばに初めて接した時に、「ニュー」＝新しい、だから「新トリノ」と誤解してしまうことがあるのです。「ニュー」はnewではなくneu です。「中性子は英語neutronだから、中性微子と訳されるニュートリノはneutrinoなんだ！」とつながると理解が早くなるのです。

日本語は大和言葉、漢語、外来語の三つが混在し、外来語は増える一方です。それをカタカナとして取り入れ、日本語として使用できるようにしたのは先人の知恵でもあるのですが、内容を考えずに使ってしまうことが多いのです。英語だけではなく、「アカペラ」「デファクト」などラテン語のことばも入っています。また、カタカナ同士の造語も増え、「パワハラ」「セクハラ」から「マタハラ」あるいは「オワハラ」まで普及しています。知らずに使っていると、もとの意味を知って驚くこともあります。

例えば、「プルサーマル」は和製英語ですが、これは二つのことばを合成しています。プルトニウム＋サーマル（熱の利用）、つまり使用済みの核燃料を再利用する原子力発電のことです。「プルサーマル」ということばに置き換えられると、「プルトニウム」といういかにもやっかいなものが見事に隠されてしまう、と考えるのは私だけでしょうか。

アルファベットの略語もまた、我々の生活に入り込んでいます。不動産の物件には建物の構造の箇所に、ＲＣ構造と書かれています。バスタブの表記を見るとＦＲＰ製というのもあります。このＲは同じであることに気づくと理解が進みます。ＲＣ構造＝鉄筋コンクリート、ＦＲＰ=強化プラスティックという訳で見ているとわかりませんが、Reinforced Concrete、Fiber Reinforced Plasticsと英語で見れば、「どちらにも強化するという意味のreinforceが入っている」と腑に落ちるわけです。

このカタカナに変換して意味を誤認してしまう現象は日常でも良く起こる。和製英語がカタカナ語となって流布しているケースは意外と多い。これが誤解のもとだったりするので必ず英語へ変換してから意味を調べる癖を習慣をつけよう。

知力をつけるための様々な障害を取り除き壁を上り切るためのメソッドがここに。ちょっとした日々の習慣があなたの脳をフル回転させます。地力の向上、あなたも試してみては？

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