「日本の財政は、世界一健全」だ。この主張には多くの人が違和感を持つだろう。それは、「日本の財政は破たん寸前の最悪の状態で、世界でも類をみないほど、莫大な借金を抱えている」という政府のキャンペーンを多くの人が信じ込んでいるからだ。なぜ日本の財政は世界一健全なのか。なぜ多くの国民は、日本の財政が世界最悪と信じ込まされてきたのか、そのカラクリを本書では、詳しくみていく。
「日本が財政破錠状態」のウソ
財務省が公開している「国の財務書類」(図表1)によれば、莫大な借金を抱える一方で、日本政府は約680兆円もの資産を抱えているのだ。そのため負債の額から資産額を差し引いた、純債務は492兆円に過ぎない。この財政実態は、国民の多くが持っているイメージとはずいぶん異なるだろう。何しろ、GDPの2倍あると言われている借金が、実質的にはGDPと同じ程度しか存在しないからだ。また、2016年3月に財務省が発表した「連結財務書類」(図表2)を見ると事態はさらに改善する。連結というのは、日本政府(一般会計+特別会計)に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人などを含めた、より広い意味の財務諸表を作成したものだ。
図表1、2について興味のある方は本を買うかネットで調べるなどして見てほしい。この連結財務書類の貸借対照表によると少なくとも、日本の借金が毎年増え続けているという認識は事実と異なり2013〜2014年度にかけては1年で12兆円も減少しているのがわかる。
平成21年度末時点では、1,019兆円の負債に対し、647兆円の資産が存在しそれを売り払えばより良好な財政状態になるのではという指摘に対し、国は「これらの資産の大半は性質上、直ちに売却して赤字国債・建設国債の返済に充てられるものではなく、政府が保有する資産を売却すれば借金の返済は容易であるというのは誤り」としている。
道路も堤防も売れる
イタリア政府は、高速道路を保有するアウトストラーデ社を1999年に民営化した上で、株式を売却してしまったのだ。そうすれば、高速道路のためにイタリア政府が抱えていた債務は、消滅する。それで国民が困ったかと言えば、そんなこともない。なぜならアウトストラーデ社は、高速道路の利用料金収入で経営をして、それまでと同じ高速道路のサービスを提供し続けているからだ。
日本の高速道路もすでに株式会社化されているが、その全ての株式は、日本政府が保有している。これをイタリアのように売却してしまえば道路において政府の借金は、減らすことができる。とは言っても一般国道などは売れないだろうという人に対しこう指摘する。一般国道の所有権を証券化し、それを小口化して売りに出せば良いという。証券所有者には国から道路の使用料が毎月支払われるようにする。超低金利の時代だからこそ、証券の販売価格の0.1%くらいの使用量を毎年国が支払えば証券の買い手はいくらでもいるだろうという提案。
富裕層はほとんど消費税を負担していない!
富裕層はほとんどの場合、自分自身の会社を持っているか、会社の役員をしている。彼らの生活は、ほぼ全て会社の経費でまかなわれる。豪邸は会社の社宅という形式をとっていることが多く、事実上のお手伝いさん、あるいは執事である秘書は、会社と契約した派遣会社から派遣された労働者であることも多い。黒塗りの社用車ならぬ私用車は、もちろん会社の経費だ。銀座のクラブで飲むときも会社の経費だし、ワーキングランチで食べる弁当やケータリングで届けられる食事も会社の経費だ。ゴルフに行くのも、パーティーに行くもの、何から何まですべて会社の経費なのだ。
都心部の超一流ホテルに居を構え、富裕層専用の部屋に滞在。掃除や洗濯や食事ありとあらゆるホテルのサービスが提供され生活にも困らない。もちろん高額な宿泊費が請求されるが、払うのは会社だ。そうすると、仕入税額控除の仕組みによって、彼らが一時的に支払った消費税は全額、会社が納める消費税から控除されてしまうのだ。税の基本原則が応能負担だということを考えると消費税では真逆のことが起こっている現実がある。社会保障の財源として消費税を上げるというのは最悪の選択であり、格差をより広げるものでしかないことがわかる。
法人税率を元に戻す
現在30%の法人税の実効税率を50%まで戻してやれば、税収は12兆4860億円の増収となる。これだけで、消費税を5%弱引き下げることが可能だ。つまり、法人税率を元に戻すだけで、現行8%の消費税率を3%に戻すことができるのだ。それでなんら不都合は生じないだろう。法人税はあくまで企業の利益にかかるのだ。利益の中から半分税に持って行かれたからといって、企業が経営に行き詰まることはない。
少なくとも30年前までは法人税が50%でも問題なく回っていたのだからこの提案には賛成。そしてタックスヘイブンで取りこぼした税金を取り戻す新たな法整備を整え、逃げ得は許さない姿勢を明確にするのもいいだろう。
このほかにも格差の要因となっている分離課税(総合課税される所得税とは別枠で、一律15%の所得税が課せられる。その他、地方税が5%課せられるので合計20%)を総合課税課することや1億以上の所得がある人には累進課税が逆に働いていていかに不公平な税制かが語られている。さらには公務員の年収を民間全体並みに引き下げることなどを提言。消費税の逆進性が騒がれる中、知っておきたい税の仕組み。
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