「奴隷解放を唱えたリンカーンは共和党だった」「そのリンカーンに対抗して、奴隷制の維持を主張して合衆国を離脱したのは南部の民主党だった」「二度の世界大戦の参戦に踏み切ったのは民主党で、どちらの時も共和党は反戦だった」「朝鮮戦争とベトナム戦争についても、介入を決定したのは民主党政権で、停戦の判断をしたのは共和党政権だった」このように奴隷や戦争についても二つの政党の対立軸はそう単純ではないことがわかる。そして現在、トランプ候補、クリントン候補の戦いはどうなっていくか? 2008年に日経プレミアシリーズの1冊として刊行された同名書を全面改訂し再刊したもの。
ヒラリーの誤算
共和党の予備選挙と比較すると、民主党の二〇一六年は「無風」だと思われていた。ヒラリー・クリントンはオバマの政策を基本的に継承し、今度こそ「史上初の女性大統領」を実現する、少なくともそのために民主党の予備選では、王者の戦いを見せるだろうと思われていたのである。
ところが、選挙戦を通じてサンダース陣営から出てきた「ヒラリーは富裕層の代表」という批判により若年層を中心に「反ヒラリー」の風が吹く。それでも結局、民主党ではヒラリーが勝利し代表となったわけだが、〝富裕層の代表〟と言うのは今後の選挙戦でも突かれる傷跡だろう。
禁酒法時代とは何であったのか?
「建国以来南部や西部で醸造されていたウィスキーを中心とした、アルコール度数の高い酒が普及しており、泥酔者による暴力事件が社会不安を形成していた」「酒場が同時に売春の拠点となり、風紀が乱れることへの批判が強くあった」「酒が介在したDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害が社会問題になっていた」
そんな中第一次世界大戦が勃発し、小麦やコーンを酒とせず、戦場での糧食として送るべきという感情が広がって「禁酒」が一気に全国的な機運として広がった。
共和党、懐疑心と独立心の突然変異
「話せば分かる」という楽観性、つまり「信ずること」が民主党のDNAであるならば、共和党のDNAはその正反対である。彼らの核にある思想は懐疑」だ。共和党内部の言い方として、共和党は保守の党だという自己規定があり、その保守主義とは何かというと、それは三つの要素からできているという説明がよく行われる。
- 「フィスカル・コンサーバティズム」(財政面の保守主義=小さな政府論)
- 「ソーシャル・コンサーバティズム」(社会価値観における保守主義=中絶・同性婚・銃規制への反対)
- 「ミリタリー・コンサーバティズム」(軍事面での保守主義=イラク戦争の肯定と派兵継続、一国主義)
二〇一六年の選挙では、ドナルド・トランプというこの「三つを否定」している候補が党を乗っ取っている形になっているが、それ以前でもこの三つを兼ね備えた「真正保守」の政治家が不在だという悩みはよく聞かれた。例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権は、社会的価値や軍事の面では「真正」だが、減税と軍拡を同時に進め財政赤字を拡大させたという点で失格。ジョン・マケインは財政や軍事では合格だが、社会価値観がリベラルに過ぎるという評価がそれだ。
保守派の方がたくさん寄付している
保守とリベラルどちらが多く寄付しているかというデータでは、保守派平均で1年間で1,600ドル(約165,000円)に対し、リベラルは1,227ドル(約126,000円)となっている。ボランティアなど時間を使って社会に奉仕する時間も保守派の方が多い。これを受け、リベラルというのは利己的な人々であり、善人ぶってリベラル思想を伝道しているだけだと唱える人もいる。リベラルという言葉の響きには社会的な平等や公正を求める人々というイメージがあり、それに乗っかろうという人々が多いのも事実。
アメリカの奨学金制度
アメリカでは多くの学校が私立で、一部の研究基金などを除くと連邦政府からは補助金はゼロ。その結果として卒業生には多額の寄付が要請される。学費も年間3万ドル(約310,000円)から5万ドル(約5150,000円)と非常に高額だ。こうやってみていくと、富裕層による富裕層だけのための学校というイメージに見えるが、「メリット奨学金」といって、成績や課外活動でほぼ満点を取るなど優秀な生徒で、内申も優秀、しかも高校在学中に大学のサイエンス合宿に参加しすでに自分の研究テーマを持っているなど条件が揃えば奨学金が用意される。それに加え家庭の経済状況などを連邦政府が詳細に調査し、支払い能力を超える分は渡しきり、もしくは、低金利ローンで借りることができる奨学金がある。
後半では「生命倫理」「同性愛者の結婚」「銃規制」などアメリカがかかる様々な問題における両党のスタンスを紹介。大統領選で沸くアメリカの二大政党の背景や考え方の違いがわかる書籍となっております。
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