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「クチコミ」を再考する
負のクチコミマーケティング
オーガニックに順調に拡がっていくものが「正のクチコミマーケティング」だとすると、一方、途中でクチコミが止まる可能性があるのが「負のクチコミマーケティング」である。そして、それは主にインセンティブをつけたものに多い。
実際に過去にあったケースだが、ある飲料メーカーが行ったクチコミマーケティング施策で「このキャンペーンの存在をメールなどを通じて友達に教えれば教えるほど、あなたの当選確率が上がります」というものがあった。最近ではFacebook上のソーシャルアプリ、ソーシャルゲームで、「友達にこのゲームを教えればゲーム内ポイントが貯まります」といったものがあるが、これも同様である。
これらの施策は、情報を伝える当事者にとってメリットが大きいだけで、その情報を伝えられる友人側にはなんのメリットもない。メリットのない情報を一方的に送りつけさせているということは、言い換えれば、ユーザー自身に「友人を売る」ことを推奨していることになる。
ここに違和感を持つユーザーによって、結局は情報が「パス」されなくなってしまい、クチコミそのものが止まってしまう可能性が高い。これが「負のクチコミマーケティング」である。
クーポンやポイントで人を釣って他の人に知らせてもらおうというものは、私個人としては「ユーザーをバカにしている」企画だと思っている。それよりも、こちらの企てに参加してくれた人々が「オーガニック」に広めてくれるようなシカケとシクミをとことん考えること、それが正しいクチコミマーケティングではないだろうか。
僕のやっているスマホゲームでもFacebookで「いいね!」したり、友達を勧誘したらゲーム内で使えるアイテムがゲットできたりするキャンペーンを年中やっている。でもこれは純粋なクチコミではなくゲームの人気とは無関係。最近のスマホゲームなどオンラインゲームは課金ありきみたいなところがあるので、純粋に面白いスタンドアローンゲームが懐かしい。
「コンテクスト」を生み出す
「コンテクスト」とはいったい何なのか?
もともと私が「コンテクスト」という言葉に触れたのは大学や大学院の頃だったが、再び頭の中をよぎるようになったのは、博報堂に在籍していた頃、携帯電話などが普及した時代のライフスタイルを考察していたときだった。
その後、Googleでの経験などをもとに、「コンテクスト」というコンセプトがマーケティングやビジネス開発の視点でますます重要になっているのではないかと考えるようになってきた。
この章では、「コンテクスト」というキーワードをめぐる私自身の考えの流れ・背景と具体的手法をも紹介したい。その前に「コンテクスト」とは何か?を考えてみておこう。
本書をここまで読みすすめた人、いや、そもそも本書を手にとった人と、著者である私は、マーケティングや広告という関心事において「コンテクストを共有」しており、だからこそ、本書の中味を解釈・理解してもらえるのだと思う。「コンテクスト」とはcon-textと書き、接頭辞であるcon-は「ともに」だとか「一緒に」だとかを意味するtogetherを表すといわれている。つまり、「共有できるテキスト」といった感じか。 con-textは日本語で「文脈」「脈絡」「状況」「背景」「前後関係」というふうに訳される(が、本書の中ではあえて用語として「コンテクスト」で統一している)。
Wikipediaによれば、「コンテクスト」とは メッセージ(例えば1つの文)の意味、メッセージとメッセージの関係、言語が発せられた場所や時代の社会環境、言語伝達に関連するあらゆる知覚を意味し、コミュニケーションの場で使用される言葉や表現を定義付ける背景や状況そのものを指す と定義されている。また、ここに掲載されている「例」が非常にわかりやすいのでそちらも一緒にあげておこう。
「ママ」という誰もが知っていて、口にすることがある言葉がある。しかしこの言葉でさえも、コンテクストの違いによって、その意味するところは変わってくる。例えば、兄弟であるふたりが「ママ」という言葉を口にすれば、それは彼らの母親のことを指すが、もしこれが夜の世界にその筋のお店で客とホステスが話をしている中に出てきたとすると、それは店の女主人のことを指す。つまり、「ママ」という言葉は相対的なもので複数の定義を持つが、その定義が共有されるふたり以上の間であれば共通の意味・解釈を行うことができる。こうしたコミュニケーションを可能にさせるための背景や状況、またその人々の関係性、共通の知識・体験、ロジックなど、共有された情報のことを「コンテクスト」という。
アメリカのエドワード・T・ホールという文化人類学者は、『文化を超えて』という著書の中で、コンテクストのリッチさによって「高コンテクスト文化(ハイコンテクスト文化)」と「低コンテクスト文化(ローコンテクスト文化)」という2つの文化分類があると唱えた。前者はコンテクストの共有性が高い文化のことを指し、後者はその逆である。
日本は一般的に「高コンテクスト文化」であって、言葉数が少ない代わりに、相手との関係や仕草・話し方、性別や場所、時間、会話の前後関係などの「非言語的要素」もコミュニケーションの際に重要な役割となるとされている。
例えば「あ・うんの呼吸」や「ツーといえばカー」といった言葉が表すように、「みなまでいわなくても」伝わるだろうとされる「言外」までもが重視される文化であって、コンテクスト依存性が高い。
一方で、欧米のような言語・文化圏では、明示的に誰もが理解できるような明確なメッセージでないと伝わらないという、コンテクストへの依存度が低い「低コンテクスト文化」だということだ。
阿吽の呼吸とか言わなくても汲み取れとかいうのは僕は苦手。日本で暮らしているとこうした面倒な風習があり僕の頭を混乱させる。言わなきゃわからないし、伝わらない低コンテクスト人間だということがこれを読んではっきりした。
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