仕事とは問題解決の連続によって成り立っている。無益な目先の問題ばかりに気を取られていると同じことの繰り返しになりかねない。日々のオペレーションから経営まで、あらゆる場面で使えるビジネスの必須スキルとは?
問題解決というのは意外と身近
企業の現場でよく耳にするのは、こんな声である。「問題解決なんて、そんな壮大な話は自分には求められていませんから」 「私は上から指示されたことをひとまずやる立場なので」「問題解決をするのは、企画部の仕事ではないでしょうか」 「毎日忙しくて、問題解決なんか腰を据えてやっている場合じゃないですよ」 あなたも、似たような考えを持ったことがあるかもしれない。果たして、本当にそうなのだろうか。たしかに問題解決というと、経営コンサルタントや弁護士など特定業種の人や、企業のトップ、企画部門など特定の立場の人を思い浮かべることが多いだろう。しかし、問題解決はそれらの人だけができればよいというわけではない。先ほどのストーリーでも、戸崎がマルチメディア事業部の売上低迷という問題に直面しているように、企業内にはさまざまな問題があるはずだ。よく考えてみると、あなたも日頃いろいろな問題に直面している。たとえば、「営業成績が上がらない」「部下が言うことを聞いてくれない」「残業時間が長い」といった業務上の問題はもちろん、もっと身近な例でも「貯金が増えない」「友人とうまくやっていけない」など枚挙にいとまがない。多くの人は、日々、山積する問題解決の連続のなかで悪戦苦闘している。 それにもかかわらず、「問題解決」を的確におこなうためには手順が存在するという事実はあまり知られていない。実際、私たちが研修のなかで受講者に対し「これまで問題解決の能力を鍛えるために、本を読んだり研修を受けたりしたことがありますか」と問うと、ほとんどの人が「ない」と答える。つまり、確固たる方法を知らないまま、問題に適当に対処している人がいかに多いことか。勘と経験で、あるいは他人のアドバイスを鵜呑みにして、問題に対処している。実際、ビジネスの現場では、「やり方がよくわからなかったので」「経験がないから対処できない」「昔からそうやっている」「この問題が起こるのは仕方ないと思う」などの言い訳をしている人をよく目にする。問題解決の手順を知らないと、適当に対処してしまったり、無駄に多くの時間を費やしたり、考えることが難しくてあきらめてしまったりと、よい結果にはならない。そうこうしているうちに、いつしか問題が大きくなり、手に負えなくなってしまう。そうなれば、もうお手上げだ。 問題解決の手順とは、あなたが直面するあらゆる問題の解決策を考え、実行するための手順である。問題に直面するすべての人、すなわち誰にとっても役立つものであり、これを身につけることでビジネスはもちろん、日常生活の問題についても解決策を導くことができるのだ。
僕たちは日々、大なり小なり問題解決の連続の上で人生を送っている。仕事はもちろん家庭内でも日々様々な問題が生じていて、知らず知らずのうちにそれらの問題に直面して処理している。ちょっと意識を変えるだけでこのような問題に取り組む姿勢は劇的に変化する。問題解決の方法論を知っていればよりスムーズな解決が期待できる。
原因追及を始める前に
ここで、コンサルティングファームでよく使う「コインの裏返し」という言葉を紹介しておこう。コインの裏返しとは、あたかもコインを裏返すように「表面的に見えている問題を、そのまま裏返して対策にすること」を指す。カフェチェーンの売上が下がっている例でいえば、「朝のフード類の売上が下がっている」問題が特定されると、「では、朝のフード類の売上を伸ばすためには」と考えはじめたり、「 30 代の男性客が取り込めていない」問題が特定されると、「では、 30 代の男性客を取り込むために」と考えはじめたりすることだ。なぜ、この考え方がいけないのだろうか。 「朝のフード類の売上を伸ばすためには」と考えたら、原因がよくつかめていないので「朝食メニューを充実させる」「値引きをする」「キャンペーン広告を打つ」「営業時間を1時間早める」など、さまざまな対策を思い浮かべてしまう。もちろん、まったく何も絞り込まずに、いきなり「売上を伸ばすには」と考えるよりは まし だが、性急な対策を求めるとトライ&エラーの繰り返しとなり、効率がよくない。問題を特定したら、そのまま裏返して対策を考えるのではなく、真の原因を掘り下げ、「なぜなぜ分析」をおこなう必要がある。まずは、「コインの裏返しをしない」と肝に銘じておこう。
カフェで朝の売り上げが芳しくないとき、フードの売り上げが下がっているだとか男性客が取り込めていないとか様々な要因が考えられる。手当たり次第トライアンドエラーで解決策を試すよりピンポイントで解決策を講じる方が効率が良い。
問題解決の作法を知ることで劇的に改善が見込まれます。これはサービス業に限らずあらゆる業種で実践できる考え方なので、頭の片隅にでも置いておいて必要な時に引っ張り出していこう。
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