僕は人の目を見て話さない。瞳の多くに映る相手の本性が怖い。目を見て話さなくたっていい、コミュニケーションは先攻だけじゃないなど、コミュ障の希望となる書籍。
会話がうまい人は「脱線」する
『めざましテレビ』で、福山雅治さんにインタビューしていたときのことです。 「加藤さん、今の話聞いてました?」急に福山さんに指摘されて、とても恥ずかしい思いをしました。このとき私は「このあとはこれを聞いて最後はこう 締めよう」という段取りを頭の中でしてしまっていて、目の前の福山さんのお話から注意が 逸れてしまっていたのです。顔は相手に向けていても心ここにあらず、といった具合でインタビュアーとして問題があったと反省しました。テレビでのインタビューは時間が厳密に決まっている上に、常に自分が画面に映る可能性があるので、どうしても最初に想定した流れを守ってきれいにやろうという意識になってしまうのです。私のケースと同じように、普段のコミュニケーションで、 「想定通りの流れで進めたい」「言おうと思っていたことをすべて言いたい」という思いが強くなってしまう人も多いのではないでしょうか。ただ、その意識に 縛られすぎることは、魅力的なコミュニケーションから遠ざかることになってしまう場合があります。阿川佐和子さんがビートたけしさんにインタビューをなさったときのことです。当時のたけしさんはバイク事故から復帰された直後でした。たけしさんが盛んにおしぼりを使うのを見て、阿川さんが何気なく「おしぼりはいつもお持ちなのですか?」と聞いたところ、実はまだ顔にしびれが残っていて、おしぼりでぬぐわないと涙が出続けてしまう、というお話をしてくれたそうです。元々聞こうと思っていたことに固執せず、目の前の気になったことや自分のアンテナに引っ掛かったことを大事にしたことで、普通は聞けないたけしさんのエピソードを引き出すことができたのです。
話を脱線させて会話の角度を変えることで、話の流れからは聞き出せなかった内容のエピソードを引き出すのが会話のうまい人。この人ともっと喋りたいとコミュ障の僕が思う人というのは大抵このような能力に長けた人。こちらの話を絞り出すまでの間さえも笑顔で許してくれる。早く喋れよというオーラをガンガン出してくる人は苦手。
タモリさんがスタッフに慕われる理由
『笑っていいとも!』の番組中に『曜日対抗!いいとも選手権』というコーナーがあったのですが、いいとも選手権はスタッフが誰でもネタ出しできる空気があったそうです。当時、若手のADさんが企画を出すと、どんなにうまくいかなそうなネタでもタモリさんは、 「お前がやりたいと言うならいいよ」とOKを出してくれたそうです。そうすると、企画を提案した人は、 「タモさんに恥をかかせてはいけない」「タモさんのために頑張ろう!」とモチベーションが上がります。もちろん、タモリさんはどんなネタが上がってきても必ず場の雰囲気を面白くし、番組を成立させてしまうわけですが、信じて任せてくれたことにADさんはとても感謝して、次の企画につなげていったそうです。こうしたタモリさんの 懐 の深さが優秀なスタッフを育て、『笑っていいとも!』は 32 年に及ぶ長寿番組になったのだと聞きました。出演者として参加していた私から見ても、タモリさんは現場で細かい指摘をするようなことはせず、スタッフの方々が自分の力を出し切れる場を作ることを大事にされているように感じました。こうしたタモリさんの姿勢は、後輩や部下への接し方として本当に素敵だと思います。
部下を思って大切にする上司のようなものでしょうか。こういう上司の元では部下も成長しやすいのでしょうね。
愛されるSNSの使い方
フジテレビ時代の後輩に手伝ってもらってインスタグラムを始めました。ちょうど、世間でSNS疲れが話題になっていたころに始めたので、今のところ疲れ知らずなのですが(笑)、自撮りをしたら顔が半分隠れてしまっていたり、番組の宣伝でピザを撮ったらへにゃっと折れ曲がってしまっていたり、なかなか理想通りにはいかないものです。思えば、昔からメールやSNSなど直接相手の顔が見えないコミュニケーションが苦手だった気がします。ただ、これも良い機会だと、直接顔の見えないコミュニケーションについても考えるようになりました。どうすればSNS上で魅力的なコミュニケーションができるだろうと考えたとき、思い浮かんだのが元TBSアナウンサーの枡田絵理奈ちゃんです。彼女とはアナウンサー試験のころから知り合いで、エントリーシートを見せ合ったり、試験の情報交換をしたりとお互い助け合った経験もあります。
僕はLINEが鬱陶しいのでやっていない化石みたいなおじさんなのですが、こうしたSNSは話し言葉でやりとりし、会話に臨場感を持たせる。絵文字やスタンプで感情を表現できるところが良いところのようです。Instagramはやっているので、たまにコメントが来ていて返したりするのですが、なるべく相手のトーンに合わせて絵文字を使ったり、「?」「!」だけにしたりと使い分けてみると良いのではないでしょうか。
失敗したエピソードを笑って話せるそんな素敵な人間になりたい。会話はとぎれてもいいと考え、その上で愛されるヒントが詰まった書籍。アナウンサーの仕事の舞台裏なども語られていてテレビの仕事につきたいと思う学生なんかにも読んでほしい書籍となっております。
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