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世間とズレちゃうのはしょうがない|養老 孟司 , 伊集院 光|世間との折り合いのつけ方を探る

世の中からはみ出ないように生きる伊集院光とはみ出しまくっている養老孟司が世間との折り合いの付け方について話し探っていきます。

ゲーマーの味方をしてくれましたね

伊集院:僕が最初に先生に興味を持ったのは、僕が司会をやった、とあるテレビゲームのイベントなんです。先生はその選考委員長をなさっていたんですよね。

養老:日本ゲーム大賞。あれ、創設されたときから十年選考委員長をやらされた。

伊集院:「ゲームは勉強にもならないんだ、脳にも悪いんだ」と、まだ世間の向かい風がすごいときですよ。しかも養老先生の世代は「ゲームけしからん!」の方がほとんどでしょう。ところが、先生が理路整然と「ゲーム中毒と言うけれども、楽しいことは多かれ少なかれ中毒になるものですよ」と話された。

そして「二宮金次郎は勉強中毒で、当時は役にも立たない勉強を夢中でやっているどうしようもない変わり者だと言われていた。そういうものですよ」と。自分より年上でこういう人がいるんだと驚いたし、ゲーム愛好者としては、すごく味方をしてもらった感じもしました。だから、おそらく世間の価値観とはちょっと違うところにいらっしゃる方なんだろうなとは思っていたんです。 ※二宮金次郎……江戸時代後期の農政家。荒廃した 下野 国 の桜町の再建や、 飢饉 に苦しむ小田原の救済に尽力。無類の勉強好きで、十代のときに夜の勉強で使う燈油がもったいないと祖父に言われ、自分でアブラナを育てて菜種油を取った。

養老:まぁ僕は半分死んでるようなもんですからね。僕が東京農大に行ってフラフラ歩いていたら、学生が寄ってきて「養老さんじゃないですか」と言うんですよ。「そうだよ」と言ったら、「生きてたんですね。死んだと思ってました」って(笑)。「もう歴史上の人物ですよ」ってフォローしてたけどね。

最近でこそeスポーツとしてゲームの世界大会が開かれるようになりゲームもメジャーなものになりつつあるが、僕がゲーセンの店長をやっていた時はまだ賞金とかもなくて大会で優勝しても大したものはもらえなかった。せいぜいゲームのポスターなど非売品がもらえる程度。しかし、そうした大会で賞金が出るようになってからは一気に規模が拡大、世間の目も少し変わってきました。稼げるならやる意味あるよねと。何事にも熱中できるのは良い傾向。ニッチな趣味でも突き詰めればお金になる時代が今なのだと思います。

AIに仕事を取られるとよく言いますが

伊集院:新しい技術が登場するたびに、世の中がざわざわと騒ぎ出しますよね。世間では「AIに仕事を取られる」という不安が広がっています。そうなると相当困るぞ、と。

養老:AIに仕事を取られるというその根本は、世の中の情報化ですよね。みなさん、「これからAIに仕事を取られる」と思っているけど、そうじゃないんだよ。もう取られているんです。それに気づいていないだけなんです。  二十五年ぐらい前に聞いた、かみさんの病院に対する文句が「お医者さんが私の顔を見てくれない」。それはそうですよ、カルテだけを見てるんだから。情報だけを扱っている人間が医者になったということです。

伊集院:なるほど。

養老:「待ち時間が長い」とか「説明が難しい」とか、うるさく言う患者の話し相手なんて、する必要ない。カルテだけ見てれば、すっきり簡単じゃないですか。そういう世界になっていたんです。

伊集院:患者の病状を受け取って、対処法を伝えるシンプルな作業しか請け負いたくないということですね。

養老:五、六年前に、かみさんと行きつけの銀行に行ったときのことなんだけど、ある手続きをするときに銀行の人から「先生、本人確認の書類をお持ちですか?」と言われたんです。普通は運転免許証でしょうね。でも僕は運転免許を持ってないんだよ。  そしたら向こうは「健康保険証でもいいんですけど」と言うんです。健康保険証なんて持ってこないよ。病院じゃないんだから。そうしたら向こうがなんて言ったか。「困りましたねぇ。分かっているんですけどねぇ」って(笑)。  そこで「あれっ?」と思ったんです。「本人確認の書類を持ってこい」と言われたけど、「そうすると、おれは誰だろう?〝本人〟ってなんだろう?」と思ったわけ。

伊集院:本当だ!(笑)

養老:それがしばらく疑問で、それから数年経ってだよ。会社で働いている知人が「近ごろの若者はね」と言いだした。「同じ部屋で働いているのに、メールで報告してきやがった」と怒っているわけ。「あいつらは職場の仲間同士で、仕事の話をメールでやりとりしているらしい」と。  その瞬間に「なるほど」と気がついたんですよ。要するに、彼らは「本人が嫌」なんだよね。課長が同じ部屋で働いているんだけど、課長の顔を見に行くと、二日酔いで機嫌が悪いとか、上司に何か言われたらしいとか、余計な情報が入ってくるでしょ。メールだと、そういうめんどくさいものが全部落ちるんですよ。そのとき「会社員も医者や銀行員と同じだ」と思った。

つまり「われわれ人間は何か」というと、もはやノイズなんですよ。不潔で猥雑で意味不明だから、そういう存在はないほうがいい。だから最近は結婚もしないのかもしれませんね。なにしろ現物はノイズの塊なんだから。

だから国も「マイナンバー、番号一つでいい」と言っています。あなた本人はいらない。その裏を取るものもいらない。公に「いらない」と言っているわけじゃないけど、本人を番号一つにするということは、そういうことでしょ。番号にできるんだよ。そのほうが断然効率がいいということでしょ。

伊集院:情報部分以外は、関わりたくないということですね。

養老:そう。だから同じ会社に勤めて同じ部屋にいても、「メール以外はいらない」というわけですよ。電話も使わない。電話だと「今日は機嫌が悪い」と分かるからね。

本人と関わるのが煩わしいのはわかる気がする。世間話とか無駄なことが僕も嫌い。できれば用事が済んだらさっさと一人の世界に戻りたいタイプ。SNSなどでもDMで絡まれるのが嫌いなので予防線を張っています。

世間とずれちゃうのはしょうがないという前提を基に世の中のさまざまな問題を深掘りします。人間関係の問題は人類の永遠の課題。そこを二人の識者が鋭く突きます。

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