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世界大異変 現実を直視し、どう行動するか|ジム・ロジャーズ|世界的投資家による最新予測

世界的投資家ジム・ロジャーズにロングインタビュー。アフターコロナの世界経済はどのように推移するか?株式市場の動向は?円安、インフレ、自己資産の防衛策など未来を予測!

巨大バブルの代償は若者たちが背負うことになる

コロナ危機が始まった2020年5月に刊行した前著で、株価急落の後、世界的な金融緩和でラリー(再上昇相場)が始まると予想し見事に的中しました。ただ、それがコロナ危機後の今日までこれほど続くと思いましたか。

ジム・ロジャーズ 最初に、コロナ危機後という表現は誤りだ。なぜならコロナ禍はまだ継続しており、シンガポールなどはようやく国を開き、外国人を受け入れ始めたところだ。中国はまだ国を閉じているが、中国が再びオープンとなれば状況は大きく変わるだろう。中国は多くの人口を擁し、マーケット規模も大きい。

アジアでは日本なども部分的な開放にとどまっている。しかし、徐々に外国人を受け入れ始めているので、現在はまだコロナ危機の最中ではあるが、もう間もなく「アフターコロナ(コロナ後)」と言えるようになるだろう。私の予想では、ラリーはもうしばらく続くと思う。

しかし、2年前には、コロナがこれほど長引くとは思っていなかった。よもやマクドナルドなど多くの飲食店や娯楽施設が閉まるとは思ってもいなかった。過去にマクドナルドがこれだけ長期間にわたって休業したことはなかったのではないか。

私はコロナに対する世界の対応は間違っていたと思うが、答えはまだ定かではない。ただ国民は今もなおウイルスと闘い、それに伴うロックダウンのひどい代償を払っている。

世界の中央銀行は信じられない額の紙幣を発行し、大量の株や債券の買い入れのために巨額の資金を使っている。コロナ以降の経済回復は早かったが、これだけの巨額の資金を使えるのなら、誰もが楽しい時間を過ごせただろう。もし私に1兆ドルくれるなら、人生最大の楽しい時間が過ごせるに違いない。

しかし、これは若い人たちにとっては、悲劇的とも言える悪い事態だ。私のような高齢者はこの代償を払う必要はない。なぜなら次の暴落が来たときには、おそらくもうこの世にいないか、残りの人生の時間はきわめて短いからだ。

お金を印刷し続ければ続けるほど、次のクラッシュがよりひどいものになる。そして、数多くの国家が痛手を負うことになるが、その中で一番ダメージを被るのは日本になる。なぜなら日本の出生率は低く、外国人を受け入れておらず、日銀は今もなお大規模な緩和を続けているからだ。

円が20年来の安値をつけていることがこの事実を裏付けている。物価を考慮した実質的な円の価値では、50年来の安値水準らしい。50年前と言えば、高度成長期の頃だ。円の価値は、その頃の水準にまで落ち込んでいるのだ。

これはさらに悪化するだろう。過去の歴史はくり返しこのことを証明している。巨額のお金を刷れば、それだけ通貨の価値は下落する。そして、円安のデメリットは、若い人に対してより重いものになる。

過度な円安はデメリットの方が多い。輸出が伸びるというが儲かるのは一部の企業で、国内ではネガティブな要素の方が多い。ここにきて輸入品目が軒並み値上げされるダブルパンチで国内ではさまざまな商品が値上げされている。僕の例で言うとApple製品の値上げが価格的にも元が高いので痛手だったりする。電気代など生活に密着したサービスの値上げも痛いのだが、そこはなかなか削ることができないので耐えるしかない。

大暴落に備えて個人ができる資産防衛術

バブル崩壊が近づいているとのことですが、株に投資している人にアドバイスはありますか。

ジム・ロジャーズ 今がバブル崩壊の前夜だとすると、すぐに手を打たなければ手遅れになる。急ぎ行動を起こすべきだ。大きな危機が目前に迫ってきているとき、失敗した場合に備えた「プランB」を持っていなければならない。

相場が悪化した場合にどうすべきか。プランBでは資産を分散すること、住んでいる国以外に口座を持つことが不可欠となる。

もちろん海外に口座を持つことの最大の意義は、自国株が急落したときの「保険」になることだ。しかし、それだけではなく、他国で魅力的な投資機会が見つかるかもしれない。保険は本来、あまりお世話になりたくないものだが、あって良かったと思うものが他国の銀行口座だ。

プランBには流動資産も必要だろう。もし明日、大恐慌が来て、すべてがレバレッジや流動性のない資産だったら、全資産を失う可能性がある。しかし、流動資産があれば大恐慌を生き残り、「危機」の文字通り、危険の後の機会を手に入れる原資にもなる。

大恐慌のような未曾有の危機に見舞われた際には、第一に、海外に一部資産を置いておくこと、第二に、流動資産を常に持っておくこと、そして、第三に、他人の推奨銘柄をむやみに買わないことが重要になる。さらには、もう一つ、プランBの一環として、子供に他国の言語を習わせることも、次の人生の選択を広げてくれることになるだろう。

──長い期間での対応が必要になるということですね。

ちょっと前の書籍なので実際の今の相場を見てみると暴落後の持ち直しフェーズに入っている感じに見える。ウォーレン・バフェットが株を買い増しているといった情報も後押ししてか、徐々にロシアのウクライナ侵攻前の水準に戻りつつあり、少し楽観する人も出始めている。

未来予測はなかなか難しいが、一つのケースとして今後を占う意味で読んでみると面白い。最悪の事態から楽観論までさまざまなプランを用意しておくといざと言うときに慌てずに済む。

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