世界は不安定だという前提で日本のこれからを考える。世界の中で日本がどうすべきかという問いに答えるためには世界がどうなるかを正確に予想する必要がある。現状を正確に認識するために。
中国を読む
中華人民共和国という国が、中国共産党の一党独裁体制下の人権抑圧体制になっていることは周知の通りです。これまでにも、チベットやウイグルでの人権侵害は全世界的に問題になってきたわけですが、残念ながら、日本では世論の関心があまり高くはありませんでした。
もちろん、その背景には日本の大手メディアが日中記者協定の〝制約〟(=中国に不利なことを報道すると取材に支障が出る)のため、中国側に配慮して中国のタブーには触れてこなかったということが大きな要因としてあります。しかし、やはり多くの日本人にとってチベットやウイグルは、どこか〝遠い国〟というイメージがあって、関心を持ちづらかったことも事実です。
とはいえ、こうした状況も2019年6月以降、香港でいわゆる「逃亡犯条例」問題がクローズアップされたこと、特に日本でも人気のある 周 庭 のような若い女性の民主活動家が弾圧されている実態を多くの日本人が知ったことで、ちょっと事情が変わってきたように思えます。香港問題を入り口にして、中国共産党によるチベットやウイグルの人権侵害への関心も徐々に高まってきたというわけです。
さて、近年なにかとニュースで取り上げられることの多い香港ですが、日々のニュースを追っているだけでは、何となく大変なことが起きていることはわかっても、どういう経緯でその問題が起こっているのかがいまひとつわかりづらいだろうと思います。
特にアメリカと中国との関係で見た場合、日本では、トランプ政権の登場以降、いきなり米中が香港をめぐって激しいバトルを繰り広げるようになったというイメージで捉えている人も多いようですが、実はその〝火種〟はずっと前からありました。にもかかわらず、一般的な報道では、現在香港で起きているさまざまな出来事につながる歴史的な経緯の説明がすっぽり抜けてしまっているのです。
香港の問題や台湾との関係性など国際的に問題を抱えがちな中国。歴史的経緯はどうあれ国際的に協調できないのは問題だと思うが実際はどうなのだろうか?
ロシア・トルコを読む
近年のトルコは、地中海南岸のリビアからナゴルノ・カラバフのあるコーカサスにいたるまで、非常に広大なベルト地帯の紛争に介入してきました。
これこそまさに、エルドアン政権の掲げる新オスマン主義の実践といってよいでしょう。
ただし、このベルト地帯の紛争には、政治イデオロギーの問題だけでなく、石油・天然ガスの多くを輸入に頼らざるをえない〝トルコのエネルギー事情〟も密接に絡んでいます。突飛なたとえかもしれませんが、いわゆる大東亜戦争で、我が国は「アジアの解放」を大義名分として掲げる一方、戦争の最大の目的は、蘭印(オランダ領東インド。現インドネシア)の石油資源をはじめ、東南アジア諸国の資源を獲得することにあったことを思い起こすとイメージがわきやすいかもしれません。
この観点から重要なのが、まずはベルト地帯の西端に位置する産油国、リビアです。
現在のリビア国家の領域は、1911年にイタリアが占領するまでオスマン帝国の直轄統治下に置かれていました。
その後、第二次世界大戦を経て、1949年には、内陸部を拠点に独立運動を展開していたイスラム神秘主義のサヌーシー教団のイドリース1世が、リビア東部のキレナイカの独立を宣言。このキレナイカと、隣接するイタリアの植民地だったトリポリタニア(西北沿岸部)とフェザーン(西南内陸部)が連合し、1951年、リビア連合王国として独立します。
1969年には「カダフィ大佐」ことムアンマル・カダフィが革命を起こして王制が廃止し、独裁政権を構築しました。
しかし、2011年、いわゆる「アラブの春」(2010年のチュニジアでの革命をきっかけにアラブ世界に広がった、反独裁政権の民主化運動)の余波がリビアにも波及して、リビアは内戦に突入し、カダフィ政権は崩壊します。
カダフィ政権崩壊後、いったんは首都トリポリで国民評議会による新政権が成立したものの、2012年3月6日、リビア東部の有力部族や民兵組織の指導者らがベンガジで会議を行い、〝キレナイカ暫定評議会〟の樹立を宣言。トリポリを拠点とする国民評議会とは別に、旧キレナイカ地域での自治を行うことを決定します。
資源大国の憂鬱ともいうべきこれらの問題。こうした背景から紛争に至らなければいいのだが世の中そう甘くない。独裁も成功している例があるだけに一概にダメとは言えないがそれでもやはり民主主義がスタンダードかと。
不安定な世界情勢の中、国際ニュースの正しい読み方を学ぶことは様々な意味で勉強になる。社会人の常識的なこれらの問題をどう受け止めるか。人との会話の中で国際政治の話はなんとなく避けられているだけに自身で勉強しないと知識が身に付かない。そんなあなたをサポートしてくれる書籍。
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