常時戦闘体制下にあるプロは、危険をうまく回避し無傷で得を取る。暴対法や暴排条例で、何かあったらすぐ引っ張られる。安全運転しているつもりでも事故に巻き込まれることもある。後ろから来る車や横からでてくる車、横丁からガキが飛び出してきたらどうするかそんなことを日々考えながら毎日を送るヤクザたちの実態。サバイバル競争が激しい現代において《危機センサー》を常に働かせる彼らの処世術をまとめた書籍。
「どう見せるか」「どう見られるか」
これまでの「まんまヤクザ」はド派手なダブルのスーツに夜でもサングラス、というスタイルで車はベンツだったが最近では違う。ダーク系のシングルスーツに衣替えし、見た目はビジネスマン、車はレクサスやアルファード、エルグランドといった国産車にシフトしている。高級時計の代表格といえばパテックフィリップだが見た目が地味で、ヘタを打てば、量販店の時計と間違えられる。その点、金無垢のロレックスは存在感がありダイヤなどあしらっていれば、一般市民を含め誰が見てもヤバイ人だとわかる。ナメられれば危機に陥るリスクが増すためこうした処世術で相手の値踏みを切り抜ける。
「命懸け」のニュアンス戦略
ヤクザだと紹介されれば相手は一目置くだろうし、会話にも気を使うだろう。「ヤクザ全員=ヤバイ」という思い込みが一般人にはあるという。この思い込みが希薄だと、彼らはシノギにならない。ヤクザだから怒らしたら何するかわからないという刷り込みを与えるため、ほんの一部の者がドンパチやったりするのだ。
「こらッ!ゼニ返さんかい!」
「もう少し待ってください」
「じゃかんし!東京湾へ沈めるど!」
「警察で話をしましょう」
こういった具合に平然と対処されると、ヤクザ側もこれ以上攻め手がなくなる。頭にきて一発お見舞いすれば、傷害罪だし、東京湾に沈めれば、自分の人生も終わる。カタギに貸す程度のお金の回収で人生を棒に振ることはまずない。ヤクザとしては返済しないと何されるかわからないという恐怖心をうまく利用しているだけなのだ。
人間関係におけるリスクヘッジ
ヤクザもビジネスマンも、一定の地にある人は紳士的で、その魅力が周囲を惹きつける。これは人格が素晴らしいといったことではなく、紳士的であることが敵を作らない対人関係におけるリスクヘッジになることを知っているからだ。「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」とはよくいったものだ。
「自慢」は〝厄ネタ〟の呼び水となる
「忙しいかい?」と問われたら、「暇だよ。なんかいい話ねぇのかい」と問い返し、厄ネタをブロックする。もしも、忙しさをアピールして自慢でもしようものなら、「そういうことだったら、俺の知り合いに」と強引に一枚噛んできたりする。ボーナスの増額を自慢すれば、「お金貸してくれないか」などという厄ネタを招くこととなるし、人脈を自慢すれば、「リストラで俺もヤバくてさ。どっか会社紹介してくれないか?」などと面倒なことを頼まれる羽目に。
「降りかかる火の粉」は払うのではなく避けよ
コンビニの前にタチの悪そうな輩がたむろしていたら、それを避け違うコンビニに行く。よって口論になり喧嘩が勃発しそうになったらさっさと切り上げてその場をたりさる。身に危険を感じた時の勇気ある処し方がこれである。
「戦わずして難を避けるのが上の上、戦って難を逃れるのが中の中、戦って負けるのが下の下」
電車に乗る時は、まずホームで周囲を見渡し、タチの悪そうな酔っ払いはいないか、声高に騒いでいる若者はいないか確認し、そういった輩からは距離を置き、違う車両に乗るといった危機管理は大切だ。こういった危機管理術を続けていたら神経衰弱しそうだが、密林に暮らす小動物はそうはならない。要は慣れなのだ。〜かもしれないという最悪の時の選択肢を持っておくことが大事。「この人痴漢です!」と冤罪になりそうになったら、駅員に連れられていく前に素早くその場を立ち去るか、すぐに弁護士に連絡し対応を任せる。決して、駅員室について行ってはいけないというのが最近の常識だ。
ヤクザ式「危機管理術」案外一般の人より神経を尖らせ、無用なことで警察のお世話にならないよう様々な処世術を使っているのだなと思うなかなか興味深い書籍だった。
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