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ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか|ピアーズ・スティール|ありとあらゆる先延ばし研究をメタ分析

DNA解析、脳科学、進化生物学から心理学まで、ありとあらゆる先延ばし研究をメタ分析。先延ばしを科学で解析し克服法を「13の行動プラン」で教えてくれる書籍。

誘惑の強さと近さ

私が『コンカークラブ』の奴隷と化した要因の一つは、私の先延ばし研究の最初の、そして最大の発見によって説明がつく。その発見とは、「誘惑が近くにあると、先延ばしが非常に助長されやすい」というものである。オンラインゲームは、インターネットに接続しているコンピュータがあればどこでもプレーできるので、誘惑を遠ざけておくことが非常に難しい。誘惑の近さのほかに、先延ばしを助長する第二の要素は、誘惑の強さだ。誘惑が強力なほど、私たちは本来おこなうべき課題をないがしろにする。その点で『コンカークラブ』がやっかいなのは、プレーヤーへのご褒美が不規則なタイミングで与えられることだ。

心理学者のB・F・スキナーとC・B・フェスターの一九五七年の古典的な著作『強化スケジュール』以来、行動を後押し(強化)する刺激が不規則なタイミングで与えられると──行動心理学の分野では「変動スケジュール」と呼ばれる──中毒性がきわめて強いことがわかっている。スキナーの研究によれば、鳩に始まり霊長類にいたるまで、動物はことごとく、ご褒美が不規則なタイミングで与えられて、しかもご褒美が与えられた瞬間にその恩恵を味わえる場合、そのご褒美を得るための行動にものめり込む。 「変動スケジュール」の威力は、ギャンブルの世界ではっきり見て取れる。たとえばカジノのスロットマシンは、プレーヤーを中毒状態にさせるべく、このメカニズムを意識的に織り込んでいる。スロットマシンで「当たり」が出るタイミングは不規則だし、「当たり」が出れば即座にコインを手にできる。おじいちゃんやおばあちゃんがスロットマシンにのめり込んで、かわいい孫に残せたはずの財産をなくす姿を見れば、モチベーションの心理学の説得力が理解できるだろう。

ギャンブルではないのだが、僕がはまってしまったのは配信アプリ。投げ銭を投げるとライバーさんに喜ばれる。普段人に喜ばれる体験が乏しい僕にとってはそれが自己肯定感につながりついつい課金してしまう。ギャンブルと同じだなと。当選金の代わりに課金に対する賞賛がある感じ。

未来を犠牲にしないために

九〇〇〇年前、「先延ばし」などという現象は存在しなかった。当時の人類は、働きたいという意欲がわいたときに働き、眠くなったときに眠るという具合に、欲求を感じたときにその欲求どおりに行動していた。それはおおむね、人間が生き延びるために適した行動パターンでもあった。この時代には、人間の衝動性が日々の生活のニーズとぴったり一致していたのである。

私たちの脳は、そういう時代に合わせて設計されている。九〇〇〇年後、昔と変わらない人間の習性のせいで、私たちは日々の生活に不都合な悪癖に悩まされるようになった。減量に始まり、早起きやエクササイズにいたるまで、私たちはやる気のわかない不愉快な課題をどっさり抱えている。生活のほぼすべての側面に、欲求と課題の間の救いようのない齟齬が影を落としている。私たちは現在を重んじすぎ、未来を犠牲にしがちだ。脂肪分や糖分たっぷりの食べ物やテレビなど、目先の快楽をむさぼり、ダイエットやエクササイズを先延ばしにする。怒りに突き動かされて行動し、反省と和解を後回しにする。目先の衝動に負けて奔放なセックスに走り、パートナーとの関係を壊したり、性と生殖の健康をそこなったりする。

ここにあげた行動パターン──すべてに共通するのは、未来のご褒美より現在のご褒美を過剰に重んじることだ──は、太古の時代には人類が生き延びるうえで役に立つ性質だったが、今日の社会では、そうとは言えなくなってしまった。

しかし、手の打ちようがないわけではない。本書で強調しているように、非合理な先延ばしを避けることは不可能でない。自分の脳内のメカニズムを理解すれば、その道が開ける。神のごとく完璧な性質の持ち主になろうとするのではなく、自分が欠陥をもつ人間なのだと認めて、それを前提とした対抗策を取り入れればいい。そうすることによってはじめて、私たちは先延ばしを乗り越えられる。

先延ばしの克服に乗り出すために、誰かの許可を得る必要はない。招待状も必要ない。理想の人生を送り、理想の自分になるために、なにをする必要があるかは、あなた自身がよくわかっているはずだ。答えはすべて、あなたの手のなかにある。さあ、始めよう。

先延ばしを克服するために動き始めた時点であなたは一歩前に出ている。それだけでも十分だと思える自分を形成すると少しは気分が楽に。先延ばしをしても生きていけるということは今すぐやらなければならないことではなかったのかもと逆説的に考えるのもアリかと。

先延ばしの科学を掘り下げていく書籍。なんとなく後ろめたさを感じる先延ばしをもっと身近なものにするための心得と思って読んでみて。

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