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センスは知識からはじまる|水野学|センスは生まれついたものではなく、あらゆる分野の知識を蓄積することで向上する

センスは生まれつきのものではなく、あらゆる分野の知識を有することで向上するものであるという。人々の嗜好が多様化する時代、スキルよりもセンスを磨くことで成功するノウハウを紹介。

ひらめきを待たずに知識を蓄える

「他とは全然違うもの」  実はここに、大きな落とし穴があることに、みなさんは気づけるでしょうか?

プロローグでも触れましたが、企画を考えるとき、特に学生は「誰も見たことのない企画にしたい」と言います。そうやってひらめきを待つのです。

しかし僕は、手始めに、「誰でも見たことのあるもの」という知識を蓄えることが大切だと思っています。

世の中に、「誰も見たことのない、あっと驚く企画」というのは実はゴロゴロころがっています。しかし、「あっと驚く企画」には二種類あります。

世の中で一番少ないのは、「誰も見たことのない、あっと驚く ヒット 企画」。僕のイメージとしては二%程度だと思います。

次に少ないのが、「あまり驚かない、売れない企画」というものでイメージとしては一五%くらいあります。

次は「あまり驚かないけれど、売れる企画」。これは意外に多くて、イメージとしては二〇%。

そして一番多いのは、「あっと驚く 売れない 企画」。イメージとしては残る六三%、半分以上を占めています。

つまり、「誰も見たことがないような、あっと驚く企画をつくりたい」と思っている人は、たった二%の「あっと驚くヒット企画」にばかり目がいき、全体の六三%を占める「あっと驚く売れない企画」には目をつぶっているのです。

まずは「あっと驚く売れない企画」の多さに、目を向けましょう。「あっと驚く売れない企画」は、コアなターゲットに向けたもの以外、社会に求められないことがほとんどです。そうして現実の厳しさを知ったところで、「あまり驚かないけれど売れる企画」に注目するといいでしょう。

たとえばiPhoneは、かつてなかった商品とされますが、固定電話、携帯電話という流れに沿ったものです。AKB 48 はおニャン子クラブ、モーニング娘。の流れを汲むものでしょう。インターネットにしても、飛脚、郵便、電報、テレックス、ファクスという通信手段の流れのなかにあります。

つまり、過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠だということです。

成功の土台となる知識を蓄えることから始める。過去の成功例から学び今に活かすことはヒットの鉄則。スマホは固定電話、PHS、ガラケーの流れを汲むものだし、坂道グループもおニャン子クラブ、モー娘。の流れを汲むもの。そうした過去の成功事例を知識として蓄えることもヒットの鉄則。

センスアップはスキルアップにつながる

現代社会において、センスとはマナーです。 「美術大学などで特別な訓練を受けたわけでもないのに、〝センスがいい〟と呼ばれる人」とは、知識が豊富な人であり、知識が豊富な人とは仕事ができる人です。知識が豊富な人であれば、上司やクライアントとの会話の際に相手の専門性を感じ取ったり、自分の普通に照らし合わせたり、「チューニング」がうまくできることは多々あります。チューニングがうまくいけば、理解の度合いは深まるでしょう。

知識とは不思議なもので、集めれば集めるほど、いい情報が速く集まってくるようになります。知らないことがあるとき、上司なり同僚なり部下なりの知識を吸収しようとする人は、「知ろうという姿勢」が習慣としてあるので、ますます知識が増えていきます。逆に、知らないことがあるときそのままにする人は、どこまでいってもそのままです。

さらに、相手の知識を得ようとするとき、人はおのずと聞き役に回ることになりますが、これにもはかり知れないメリットがあります。「聞く」というコミュニケーションが上手になるためです。 「コミュニケーション」というと、いかに伝えるか、いかに自己表現するかに意識を向ける人が多いようですが、その真髄は、「話すこと」だけではありません。コミュニケーションにおいて話すことと同様に、もしくはそれ以上に大切なことは、「聞くこと」です。

相手の専門性に合わせて自分をチューニングし、話を深く聞き取りましょう。 このような専門性はすべて、キャリアアップにつながっていく要素でもあります。

僕に言わせれば、センスがいい人がスキルアップしていかないほうがむしろ不自然です。センスがいい人は、ビジネスパーソンとしても自然に成長していくと思っています。

何度となく書いていますが、非常に重要であり、また、根深く誤解されていることなので何度でも繰り返しましょう。

センスとは、研鑽によって身につくものです。

グッドデザインカンパニーのプロデューサーであり、僕の妻でもある由紀子は、「センスがないのは生まれつきだから仕方がない」という思い込みに囚われていた一人です。かつて彼女はテレビ局でディレクターをしていましたが、「新番組にはどのロゴがいい?」「番組のセット、どの案がいい?」と聞かれるたびに、「センスがないからわからない」と言って、そうしたことに長けた先輩にお任せしていたそうです。

センスがいい人というのはその方面において知識も豊富。蓄えた知識をうまく利用、咀嚼して新たなものを生み出す能力に長けた人だと思います。まずは土台となる知識がないと何も始まりません。センスは研鑽によって身につくものと理解する。センスアップはスキルアップに直結する最重要課題。

センスは知識から始まる。まずは知識をインプットして咀嚼。成功の鍵を握るものの多くは過去に前例があったりするもの。今の時代にあった形にアップデートしセンスアップへ。

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