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『プレ・シンギュラリティ』齊藤 元章

現実がSFを超える日は近い。「現生人類」から「新生人類」へ―われわれは、壮大な新世界の扉を開く―2015年世界スパコンランキング「Green500」で世界1~3位を独占、その後は史上初の三連覇を達成。2015年日本イノベーター大賞受賞、気鋭の研究開発者が描き出す「鮮烈な未来」。

急速に近づく「プレ・シンギュラリティ」

現在、情報通信革命の恩恵に浴しているのは、世界でもインターネットに接続している35億人(2016年時点)であり、残る38億人もの人々はインターネットに接続できていないことから、情報通信革命にはまったく参画できていない。しかしながら、携帯電話網の途上国における急速な普及と、安価で多機能、高性能な携帯電話端末の提供により、インターネット接続人口は今後も急速に増えつづけていくことが確実である。情報通信革命は、残る38億人の最後の1人がインターネット接続を行う日まで、勢いを増しつつ進行していくと理解すべきである。

今の世の中ネットが使える人とそうでない人の間にとてつもない情報格差は生じている。若者はこぞってスマホを買いその波に取り残されないよう必死だ。通信事業各社もサービスを充実させることによって、他社へのユーザーの流出を防ごうと躍起になっているのだが、大手三社はもっと通信料を下げるべきという声も聞かれるようになった。スマホに使われているチップは、一昔前の最先端のものより圧倒的に優秀な処理速度を誇っていて、スマホにそこまでハイスペックは必要なのかという疑問まで噴出している。我々の直近40年の間に起こった社会の変化は、人類25万年の歴史の中でも、特筆すべき変化だったと言えよう。

まずがエネルギーがフリーになる

我々は、火山や落雷でしか目にしなかった火を手に入れて、やがて日常的に利用するようになったのと同じく、あの太陽の 営みを、とうとうこの手にして利用するようになるのである。それが人類自身の進化と、社会生活の変革と、知的文化創造活動を一気に前進させ得ることは、まさに火を見るより明らかであろう。その記念すべき瞬間が、すぐ目の前に迫っているのである。しかし、その実現は座していて容易に得られるものでも、すでに約束されて確実となっている段階でもなく、克服しなくてはならない問題は、今日の時点では依然として山積している。それらの、確実で1日も早い実現のためにも、エクサスケール・コンピューティングの活用が不可欠である。ITERの本島修前機構長に直接、お話をお伺いする機会をちょうだいした際にも、元機構長は、トカマク型実験炉の全体を詳細にスーパーコンピュータ内に再現して、そのトカマク炉内のプラズマの挙動と、発生する膨大な中性子、大量の発熱、それによる発電のすべてを完全にシミュレートすることによって、実験炉成功の確率を大きくあげて、500メガワット級の発電実現の時期を前倒しにできる可能性を示唆しておられた。

地球上のエネルギーを管理できるようになり、そこから受ける恩恵でまずはエネルギーがフリーになる。そうなってくると、電気を気にせず無尽蔵に使うことができるため、生産の現場のコストが下がり、我々の元に届く様々な商品の価格は下がっていくだろう。夢のような話が現実味を帯びてきた。

生活のために働く必要がない世界

太陽光に頼らずに、LEDや蛍光灯などによる人工光のみを使用するので、水耕の養液や温度、湿度、二酸化炭素濃度などを含めて生育環境を完全にコントロールすることができる。その結果としては、

・生育期間を大幅に短縮して、多期栽培が行える(レタスでは最短で 20 日で収穫)。

・短い生育期間ながらも、収量を極大化することができる。

・植物にとっての様々な外的ストレスのすべてが取り除かれるため、味も見た目も良くなる。

・収穫後の日もちが露地野菜の数倍にもおよび、味と食感と鮮度と見た目が長く保たれる。

・品質が安定し、大きさや形、色、収量のバラツキをほとんどなくせる。

・養液と光源の性質の制御により、特定の栄養素を増強した機能性野菜を栽培できる。

・低カリウム野菜などの、特定の成分を減じた機能性野菜を栽培することができる。

といった数多くのメリットを 享受 することが可能となるのだ。一方、デメリットとしては、非常に大きな光量を得ることができる太陽光に頼らず、発光効率の悪い人工光に頼るので、光源に要する莫大な電気代と、大きな熱源となる光源の冷却のためにも、多大な電力消費を要することが挙げられる。また、現在は人工光の絶対量が十分でないために、栽培できるのは葉菜類が中心であり、栽培できない種類の植物も多い。さらに、施設園芸であるために、当然、初期設備投資が必要であり、半導体製造工場のレベルまでは求められないものの、一定レベルのクリーンルームの設置と運営が必要となることから、そのコストも発生する。

全ての野菜やなんかが工場で生産されるようになるのはもはや時間の問題。導入、捕手にはコストがかかるが、それでも天候に左右されず安定供給できるというのにはメリットがある。

人工知能とスパコンによって、社会的特異点が迫り来る今。知っておきたい未来予想図がここに。もはやSFの世界をも凌駕するほどの変化の潮流にのまれていく時代なのだ。『エクサスケールの衝撃』の抜粋版だが、上手いこと600ページにわたる大作をコンパクトにまとめてあり、手に取りやすいサイズになっています。

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