借りてきて組み合わせる、既存のものを一つにまとめて新しいものを生み出す手法はスマホなどにもみられるアナロジー思考によるもの。アナロジー(類推、類比)とは、このときの「借りる力」である。
「数」と「言葉」は最も身近な抽象化の例
抽象化思考が人間にとって基本的なもので、人類の歴史上の知的発展にどれだけ役に立っているかを端的に示すのが「数」と「言葉」である。数字は抽象化という概念なくして語れないもので、例えば「3」という数字で人間(3人)、犬(3匹)、椅子(3脚) といった物理的存在の数を「同じ」と解釈して、例えば「3+3=6」という数式による表現で、ありとあらゆるものの「3つ」と「3つ」を足し合わせると「6つ」になるという事象を表現できる。逆に数字なくしてこれらをどのように表現すべきかと考えてみれば、数字という抽象化概念がわれわれにとっていかに重要なものかが理解できるだろう。
もう1つの代表例が「言葉」である。例えば言葉の代表としての「名詞」は固有名詞と一般名詞とに分けられるが、特に一般名詞というのが抽象化の代表例である。
一般名詞とは、共通の性質を持つ複数の対象物を「同じグループ」であるとみなしてそれらに同じ言葉を紐付けたものである。これによってある目的を達成するために必要な性質を持つ対象をひと括りにすることができる。例えばなにげなく使っている「男性はこちら、女性はあちらにお集まり下さい」という言葉も「男性」「女性」という一般名詞が存在しなければ「○○さん、××さん、 △ △ さん、□□さん、……(以下人数分繰り返す必要あり)」と一人ひとりの固有名詞を使って表現する必要がある。この例1つとっても言葉による一般化・抽象化がどれだけわれわれの活動に不可欠なものであるかは理解してもらえるだろう。
「言葉」という抽象化の武器を持つことによって人類は飛躍的な知的発展を遂げてきたことは明らかである。抽象化思考は実は誰にとっても身近であり、誰もが使いこなしていることが理解できるだろう。ただし、どこまで抽象化して考えられるかで応用の範囲が人によって10倍も100倍も異なっている。これがアナロジー思考力に直接的に影響してくるのである。
言語の面白さはこういったところにある。普段何気なく使っている言葉にもこうした抽象化の例がいくつもみられる。言葉としての便利さを感じる大事な要素。固有名詞にはないグループ化ができ言葉を便利に使うための必須のツールとなっているのが面白い。
アイデアマンの発想力を2つの因数に分解する
発想が豊富であったり、斬新なアイデアを次から次へと生み出してきたりする人がいるが、こうした人たちにはどういう能力が要求されるのだろうか。ここでも「それは天から降ってきた」といわれてしまえばそれまでである。つまり「アート」だといわれればそれ以上の突っ込みようがないが、それでもそうした人たちにはある共通性があるように見える。それは 図表6-1 に示す「公式」に集約されるだろう。ここでは、ここまで「借りる力」と表現してきたものをさらに中立的に「つなげる力」と表現している。
ここでは新しい発想力が豊かな「アイデアマン」の能力を「単なる雑学博士」との対比で因数分解して定義している。本図に示す通り、新しいアイデアを生み出すためには2つの要素が必要である。つまり1つ目は多様な知識と経験を重ねることであり、もう1つが本書のテーマであるアナロジーの力である。
まず1つ目の多様な経験・知識について解説しておこう。アナロジーが「借りる力」である以上は、いくら元の知識や経験をレバレッジして何倍にも膨らませるものであったとしても、もともとの知識や経験の絶対値が低ければ話にならない。したがって、こちらの経験・知識も豊富である必要がある。
ただし、ここで注意すべきことは必要なのは知識や経験の「多様性」である。上記の説明から、この場合は同じ経験でも「○○の道一筋何十年」という類の経験よりは、なるべく「種類の違う」経験が重要である。1つの業界よりは複数の業界、それもなるべく「距離の遠い」業界での経験、国内だけよりはなるべく複数の国や地域での経験、あるいは年代や性別の異なる人との会話など、とにかくいろいろな軸での多様性が役に立つ。
一般化していえば、第1項は(多様な)「知識力」、第2項は「抽象化思考力」となり、これら2つの知力の相乗効果によってアイデアが生まれるということになるだろう。
身近なアイデアの結晶といった意味ではスマホが挙げられるだろう。端末にアプリを入れることでさまざまな機能を負わせることができる画期的なもの。これもアナロジー「借りる力」で何倍にも機能を拡充した良い例だろう。ウォークマンの聞くだけ、TVの見るだけといった個別の用途から脱却した多様性が役に立つのだ。
戦略思考、仮説思考、フレームワーク思考、ラテラルシンキングなど全ての思考が「類推」から始まると題し、その構造と関係性を見抜くアナロジー思考について語った書籍。
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