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退職代行「辞める」を許さない職場の真実|小澤 亜季子

死ぬくらいなら逃げていい。辞めていい。
人手不足、過酷なノルマ、長時間労働、低賃金。疲弊する職場環境ではハラスメントも多発。辞めたくても辞められない退職志願者が増加している。「退職代行」の事例を紹介しながら企業と労働者の関係性について弁護士の視点から展開する一冊。

辞めないことより、生き続けることが大事

プライドや世間的な評価、上司や同僚への恩義・後ろめたさと、自分の命・健康を天秤にかけたら、どちらが大切かなど火を見るより明らかです。「たかが仕事」のために、命や健康を失ってはいけません。逃げて、元気に生き続けていれば、あなたに合った他の仕事も見つかるでしょう。すてきな家族に恵まれたり、打ち込める趣味も見つかるかもしれない。辞めないことより、生き続けることが大事なのです。退職代行サービスは、賛否両論のあるサービスです。

パワハラ上司や社長のいるブラックな会社からはなんとしてでも抜け出したいものだ。自分の身を削ってまでしがみつく理由はない。退職代行に依頼していますぐ自由になるべきだ。

「過労死ライン」をこえる長時間労働

かいつまんでご説明すると、脳や心臓の病気(例えば、くも膜下出血や心筋梗塞等)になった/亡くなった(=発症)際、発症前1か月間に約100時間を超えて、又は発症前2~6か月の間に月平均 80 時間を超えて時間外労働をしている場合、仕事が特に過重であったために脳・心臓疾患が発症したとして、労災の対象になるという目安です。月80時間ということは、月に20日出勤する(休日出勤はなし)ものと仮定すれば、1日4時間以上の残業をしていることになります。それくらい軽く超えているよという方もいるかもしれません。ちなみに、ある調査によると、月の残業時間の平均は 47 時間、1日当たりの残業時間1~2時間の人が、全体の 41.2%を占めるようです。自分の残業時間と比べて、どうですか?  長時間労働が続いている場合、そもそも上司と退職の話をする時間が取りにくい。転職先を決めてから、退職の申出をしようと考えてみたところで、転職活動をする時間が取れない。睡眠不足で冷静な判断ができなかったり、精神的に追い詰められた状況であることも多いものです。そうした場合には、自分では退職の交渉ができない、誰かに頼みたいと思うのも無理はありません。

自分の労働が過労死ラインギリギリかどうかを知ることも大切。仕事が忙しくて休む暇もないと感じたら、是非この過労死ラインかどうかを判断基準にしてほしい。疲労がたまり過労死してしまう前にそれを改善するよう上司と調整すること、それが叶わないのであれば、他の仕事を探すことをお勧めします。転職にはデメリットも多いのですが、死と引き換えと思えばそれはベストな選択となります。

命や健康を守れるのは自分だけ

今の会社で働き続けるのがとても苦しく、しかし自分で辞めることができない。とはいえ、「退職代行サービスは甘えだ」という世論におびえて相談できない。そうした方に一番言いたいのは、仕事の代わりはいくらでもいるが、命や健康を守れるのは自分だけだということです。退職代行サービスを始めてからわかったことですが、依頼者の方が、適応障害など精神疾患にり患している率がとても高いのです。おそらく、職場で辛い状況に置かれているにもかかわらず、それを我慢して働き続けているうちに、メンタルがパンクしてしまったのではないかと思います。そういう精神状態では、もはや一人で退職届を出して退職の話し合いをするのはもちろんのこと、それ以降の仕事の引継ぎや、様々な事務手続きをするのは無理だと考えて、私のところに相談に来られるのです。精神的な病気は、人によって治り方が違いますが、スムーズに治るならば転職やその後の人生プランも考えやすい。しかし長引いてしまうことも珍しくなく、そうなると未来のことが考えづらくなってしまいます。また、メンタル不全に陥ると、正常な判断が難しくなる。ですから、仕事のせいで心身に変調を来たす前に、次のステップを踏むための準備を早めに始めてほしいのです。

僕の場合、統合失調症を発症してしまったため、親がこの退職代行のような役割を果たして人事とやりとりした。案外スムーズに退職できたので、自分一人で無理せず人に頼るのもありだということを知っていてほしい。

会社の個別対応の必要性

サイボウズ社の離職率は、青野さんが社長に就任された 10 年前は 28%だったということですが、今は4%まで改善しているとおっしゃっていて、何がその原因なのかが気になりました。青野さんによると、若い世代のニーズが多様化してきていると言うのです。そこで青野さんは、社員一人一人と話をする機会をもうけ、どんな要求があるのかを聞きとったらしいのです。その中には、働く時間や働く場所を柔軟に選ばせてほしいといったニーズがあったようなのですが、それをデータベース化して、それぞれに対応をするようにしたというのです。コストはかかるが、従業員の皆さんのモチベーションが上がり、同時に定着率も上がったとおっしゃっていました。 「経営的に見るとリターンの大きい投資だ」というのが、とても印象的でした。

働きかたを社員個人個人でデザインし直すようなことはそこかしこで起こりつつある。そうした取り組みを積極的に行っている会社を選ぶことは大事だろう。

辞めるのを許さないブラックな会社と対峙する退職代行。そんな職業があることを知って、もし自分が過労で倒れそうと感じたら、こうしたサービスを利用してみることをお勧めする。面倒な手続きもすっとばせますよ。

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