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リテラシーとしての抽象化+弁証法+レトリック+唯物論

マルクス学の的場昭弘教授、最初で最後のビジネス書!グローバルに思考し、実践するとはこういうことである!2018年に生誕200年を迎える巨人カール・マルクスの知的創造に学ぶ 最強の思考法。ベストセラー『超訳「資本論」』やマルクスの翻訳で高名な日本を代表するマルクス学者・的場昭弘教授が、自身の知的生産術を初めて明かす最初で最後の自己啓発書。

三つのミドラーシュ的読解術

神学とはいわゆる解釈学です。解釈学とは、ユダヤ教のミドラーシュを前提にしています。マルクスの学問の方法は、ある意味、ミドラーシュそのものであるともいえます。ミドラーシュという解釈学によって聖書を読むと、どうなるか?ミドラーシュには大きく三つの読み方があります。これを知っておくと便利でしょう。第1番目の読み方は、内容をずらしながら、現代に合うようにやや牽強付会に読む方法です。ただ、この読み方は歴史的には初期の方法です。第2の読み方は、預言者的に読み込むという方法です。この本を読むと、未来にはこんな世界がやってくるというふうに読む。未来はこうなるだろうという形で読んでいくやり方です。第3番目の読み方はわかりにくいのですが、ある意味では一番優れている読み方といえます。それはメタファー(隠喩)として読むやり方です。まず書いてある文章をそのまま言葉通りに受け取らないという方法です。表面的な文章の意味内容と、本来の文意は違うと考えるのです。隠された意味を解読することで、解釈はいろいろと変わってくるという読み方です。

僕は機械的に棒読みするタイプなので、この三つのタイプのどれにも当たらない。小説など文学作品ならこの3つの読み方のいずれかを使うのだろうが、本を読むのは作業と割り切っているのでストレートに字面を追って読んでいきます。読む側の立場や思考を超えた読み方は、本来できないということだ。

読書は客観的な知識を学ぶ行為ではない

読書は所詮そうしたものであるということになれば、その読み方のどれがいいかという議論こそ、まさにミドラーシュの議論の核心です。読書とは、自分の考えを超えた何か客観的な事象に迫るということではなく、自分の思考を使って、書物を自分なりに理解するということです。実は、それ以外に方法はないということです。読書とはそうしたものだと一度学んでしまうと、本を読むことはそれほど難しくなくなります。つまり、自分の知識を増やすために自分を押し殺して、筆者の意図をできるだけ理解するという、厳しい義務を半分捨てることができるからです。これは書かれている内容以前の根本的な部分を理解することに通じます。

読書にはいろいろな形があっていいと思います。僕の場合、知識を得ようとするとき、そこに書いてあることを情報として頭の中に流し込む、そしてようのない情報は勝手に忘れていくというのを繰り返していく作業だと認識しています。もちろんその過程で、記憶に定着することができなかった重要な情報もあると思いますが、それも、手放してしまいます。本当に自分にとって必要なものであれば、また出会う機会があると感じています。例えば、あるテーマについて書かれた本の内容を忘れてしまったとしても、興味があればまた同様のテーマの本を手にして、似たような情報をインプットする機会はいくらでもあるということです。

みんなプラトニック・ラヴと闘っている

「プラトニック・ラヴ」という言葉があります。みなさんは、プラトンに関心はなくても、この言葉だけは好きでしょう。ある学生に「君たちプラトニック・ラヴは知っているか?」と聞いてみたら、「何ですかそれは?」と返してきました。「純愛」はわかりますよ。君、恋人はいるだろう?「いますよ」。じゃあ恋人の誕生日にルイ・ヴィトンのバッグをあげる。そうすると彼女はこう言う。「私はこんなバッグより本当の愛が欲しい」。みなさんが、奥さんや旦那さんといつもやっていることですよ。こうやって素敵なプレゼントをくれるのはありがたい。でも、本当の愛が欲しい。ほら、やっぱりプラトン先生を愛しているじゃないですか。本当の愛が欲しいのです。本当の愛を見せてくれ。ベンツを買ってあげたら本当の愛か?家を買ったら本当の愛か?そんなものじゃないのです。「心」です。毎日、私たちはプラトニック・ラヴと闘っているわけです。

僕たちは皆、無意識にこの精神界のことをよく知っている。世の中には物質的世界の汚らわしさを超える美しい愛と知性の世界があることを。この精神世界を突き詰めていけば、人間の本来あるべき姿がわかると考えたプラトン。そこからプラトニック・ラヴは生まれたのだ。

マルクス生誕200年を迎えその軌跡とともに知の作法を紹介する書籍。小難しい表現の箇所があるものの、日本に当てはめて解説したりとわかりやすくするための配慮が随所に見えて好感が持てた。リテラシーとしての抽象化+弁証法+レトリック+唯物論。このキーワードに興味を持ったなら読んでみるのもいいだろう。

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