日本にはまだあまり知られていないけれど日本が誇るべきすごい食材がたくさんあります。最新技術を用いた養殖、伝統的な発酵食品、町おこしの貴重な伝統食材、新しく生産されるようになった食材……、その食材がどうして生まれたのか、どのように食べられてきているのかを消費者の目線から生産者や開発者にじっくり話を聞きました。この本を読めば、一度は食べてみたくなる食材が満載です。
とちおとめを超える新しいイチゴ(栃木県)
「イチゴを育成するためには、甘み、酸味、大きさ、固さ、色、耐病性など、多くのファクターがあります。たとえば甘くて大きなイチゴを作りたいときには、甘いイチゴと大きなイチゴを交配させますが、どの親をかけ合わせるかは、育種家の才能と先見の明です。しかし思惑通りにはならないことがほとんどです。交配させたイチゴから種をとり、発芽させて、1年間で一万種以上のイチゴの苗を育てます。それを6人の研究員がテイスティングを行って、300種残します。2年目からは、ランナー(親株から出てくるツル)で生長した苗を育てて、50種に絞ります。ここまでは、研究員の感性で選抜します。3年目からは、糖度や収量などのデータをとり、4年後には2〜3種に絞ります。そういう地道な作業の積み重ねなんです」
品種改良はこのような地道な努力に支えられ行われると知ると、新しいブランドイチゴの値段が高いのも頷ける。研究員が心血を注いだ新品種は『栃木i27号』。①とちおとめよりも大きく②味はとちおとめ並み③輸送性に優れていて少し硬めで傷みにくい④耐病性があるなどといったところが目指したところだそうだ。進化を続けるイチゴの新品種。こうしている間にも次の新品種を開発しようと研究が続いている。
全身トロのスマ(愛媛県)
「孵化したばかりのスマは、シオミズツボワムシ(動物プランクトン)で餌付きます。その後、マダイやイサキの孵化したばかりの卵黄がついているような小魚を食べさせると、栄養価が高いので大きく成長します。それからイカナゴ幼魚のミンチ、切り身の順で魚を食べる学習をさせてから、陸上水槽から湾内の養殖生け簀に移します」それからは、マダイやブリで経験豊富な養殖業者の腕の見せ所である。ただし、過去には湾内に置いた大学の生け簀でスマの半数以上が死んでしまう事態が起きた。その原因は寒さだった。
水温が13℃になるとスマが死に始めるのだそう。そこで水温13℃でも死ななかったスマを育種にし、今よりも寒さに強いスマを開発するなんて可能性もある。こうして育ったスマのうち、「体重2.5kg以上で脂肪含有率が平均25%以上のもの」を愛媛県は『伊予の媛貴海』のブランドで出荷。脂肪分25%というのは クロマグロの中とろ以上で、味はカツオよりマグロに近い。残念ながら一般には販売されておらず、東京や大阪、松山、ここの地元の料理店や、不定期で百貨店で販売しているので、食べてみたい方は漁協のホームページにある料理店で食べてみては?
謎の高級魚ノドグロの人口繁殖に成功(新潟県・富山県)
「ノドグロとかあったら食べたい」プロテニスプレイヤーの錦織圭選手が、こう話してから、ノドグロブームに火がついた。2014年9月、全米オープンで準優勝後に帰国したときのことだ。その前からノドグロの高騰は続いていたが、なぜ高いのか。それは、「ノドグロの稚魚を、2017年2月、富山県農林水産総合技術センター水産研究所が、本格的に放流を始めた」というニュースと関係がありそうだ。ノドグロを「放流」する必要があるのは、資源が少ないか、あるいは減少しているからだろう。
ノドグロについて調べてみると、2013年ノドグロの人口繁殖・稚魚育成に、新潟市水族館マリンピア日本海が世界で初めて成功したというニュースが。どう水族館で展示されているノドグロの数は国内最大級の700個体以上だ。いつの間にか個体数が減少して値が上がり17〜18cm大の塩焼きでさえ800円近くもして、20cm以上ともなると鮮魚店では数千円の値がつく高級魚に。庶民の味だったノドグロが今後、値下がりするかはわからないが、人気が出たのでこのまま高級魚路線を維持すれば関係者はうれしい悲鳴を上げることだろう。
抗菌・抗酸化・誤嚥防止にショウガ(高知県)
夏場のエアコンで悪化した冷え性が、癒える間も無く、冬には寒気が襲ってくる。最近では、女性ばかりか男性にも冷え性が急増しているという。かくいう私もクーラー病だ。冷え性対策としては、香辛料のショウガが有効だと、女性に人気になっている。さらにショウガには、抗菌作用や免疫力アップ、抗酸化作用などの健康効果があると巷間言われている。
ショウガに含まれるジンゲロールは、抗酸化作用によって老化を防ぐ機能性物質としても注目されている。高知県最大のショウガの産地四万十町では色が白く、風味がよく、繊維が柔らかいものが採れる。道の駅ではショウガを利用した加工食品なども多く取り扱っているので訪れた際はお土産に買っていくと良いだろう。
21の日本のすごい食材が紹介されている書籍。ただ紹介するだけではなく、生産者の苦労もわかる構成になっていて、消費する側としては高いお金を払いたくないものだが、それも仕方のないことだと理解できるよう解説されています。
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